虫を捕まえよう
おじちゃんに買ってもらった虫網と虫かご。
翌日、ぼくはおじちゃんにお礼を言うと、それらを持って虫を捕まえに外に出かけた。
「ワンッ!」
「うわっ」
玄関から出て庭の方に周ると、首輪をつけてつながれた茶色いワンコがいた。
「君、おじちゃん家の子?」
「ワンっ」
「へえー」
ワンコは人懐こく、しっぽを振って舌をはあはあさせていた。
ぼくがワンコにかまってやってると、
「その子はバターっていう名前なのよ」
それを見つけたおばちゃんが縁側からサンダルを履いて近づいてきて、そう教えてくれた。
「なんでバター?」
「なんでだろうねぇ。おじいちゃんが捨て犬だったこの子を連れてきて、そう名付けたのさ」
「そうなんだ。」
「でもなんでバターなんだろうねぇ。そう思ったら、なんだかおばちゃんも気になってきちゃったよ」
「帰ってきたら聞いてみるよ」
「聞いたら、おばちゃんにも教えてね」
「うん。わかったよ」
ぼくは大きくうなずくと、自分は虫を捕まえに外に出たことを思い出して、駆け出そうとして。
「あ、そうだ。ぼくくん、お願いがあるんだけど、今週だけ、この子のお散歩係を頼めないかな? もちろんタダとは言わないわ。1回10円。どう、やってくれる?」
「え、やるやる!」
「ありがとう! じゃあお願いね!」
ぼくはバターの散歩係に任命された。
「あ、クロアゲハ」
ぼくはふと目の前にひらひら飛んできた珍しい黒いアゲハチョウめがけてパッと虫網を振り下ろすと、それは簡単に捕まった。
「やった」
クロアゲハをゲットした。
「ぼくくん、チョウチョの羽には粉がついてて、あんまり触りすぎると飛べなくなっちゃうから、ほどほどにね」
「……」
……いっぱい触っちゃった。