表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/36

第六章 ヴォラク 5

5 新国家と人類の未来


「現在新帝国において、二大銀河の防衛は各星域軍が分担せるも、小銀河群と銀河間空間につきてはバールゼブルのアバドンが探査・警戒を行い、長距離作戦をアスタロトとゴモリーの機動艦隊が担当せり。連合軍の最高指揮権はサタンに帰属せるも、将来予定される国政の民主化に伴い、各星域軍の指揮権もまた多種族からなる複合分離体へ移行すると共に、アモンを模範モデルとして各軍事種族の行政・産業・学術分野への職能の多面化が図られる予定なり」


「なお、戦後は銀河系においても〝未来あるもの〟、即ち発展途上種族への参政権付与が進展し、先般汝等地球人類に対しても、帝国議員選挙権及び複合分離体への参加資格が付与せられたり」


「この決定に際しては、汝等が地球に存在せし〝真正なる〟先帝分離体の帰還を支援したる功労、及び先般〝未来あるもの〟では最初の、部分的種族融合を達成したる実績が配慮せられたり」


「〝真正なる〟分離体とは、中枢種族が秘匿ひとくせし分離体のひとつにして、直接支配下で傀儡かいらい化されしものと異なり、本来の人格を保持する貴重なる存在なり。同分離体のサタンへの帰化的種族間融合は、〝先帝〟との縁が深き彼女の心を慰めると共に、帝位継承における公的な正統性の確保にも貢献せり」


「また従来、種族融合体と個体群種族の差異は絶対的とされ、一部の個体群による部分的な種族融合は、種族の分裂や階層秩序の破綻を招くものとして忌避きひせられたり。然し近年この方式が、参政権取得の要件たる〝責任ある種族的意思決定を可能とする支援技術〟として承認されしことは、大いなる意義を有せり」


「そもそも現在の帝国において、融合体による分離体・分離個体の派出と再融合や、他種族の分離体・個体との種族間融合は、既に日常的な活動なり。技術革新によりて生成可能となりし多種多様なる分離個体は、出張におもむく労働者の如く、他の星系を訪れては成果を持ち帰りて再融合し、時には転居や移住の如く他種族の融合体とも再融合せり。融合体の特殊性はかくの如く相対化せるが故に、この決定は至極しごく妥当というべきならん」


「さらに今回、人類においては予め全個体の人格・記憶を量子頭脳に複写・更新し、寿命の到来せるものから頭脳内人格を活性化するという、心理的負担及び社会的影響の少なき方式を採用せり。これにより人類は、現在の生活も先達の英知も失うことなき文明発展を享受きょうじゅしつつ、将来的には全人類を代表し得る、最も賢明で信頼性の高き助言者を獲得せり」


「融合化の記念式典に出席せるサタンの地球型分離個体は、耐寒能力が母星仕様なりしが故に、軽やかな衣装が降雪下で多少の違和感を与えたるが如し。然し彼女は多くの人類からみても非常に美しく、その高き異種族共感能力を示したり。彼女は人類の文明発展に対する努力と功績を賞賛すると共に、その新たなる〝神〟の誕生を祝福せり。人類側からは政府代表者と共に、未だ〝幼き〟融合体から生まれたる分離個体も参加し、その力強く愛らしき姿を初披露して、有史以前から困難なる〝大戦〟時代にも絶えることなく現在にまで至る、〝知恵の光をもたらす者(ルシファー)〟サタンの文明支援に対する感謝を表明せり。両種族代表は星間社会の輝かしき未来への貢献と協力を共に誓い、その模様は帝国全土に配信せられたり。故に、我もまたこの発表の場において、人類の先進種族加入に向けた第一歩を祝福すると共に、今後の発展に格別の期待を表明するものなり」


「最後に我は、大天使長サタナエルの復権及び偉大なる先帝との合一、新大天使長アスモデル及び大天使イシュタル、バエル、バールゼブル、アメンの叙任じょにんを含む、支配的伝承説話の補遺によりて、以上の如き新帝国政府の正統性を承認せる人類に対し、この場における政府の代表者として深甚しんじんなる謝意を表するものなり」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ