第六章 ヴォラク 1
(新領土副長官からの発表)
〝救命伯〟ヴォラクはアスモデウスによる声明の後、以下の内容を帝国全土に発表せり。彼女は童顔なるも良き体格に恵まれ、知的なる双眸の愛らしく輝ける少女の姿で登場せり。解説映像を交えつつ、彼女は力強く視聴者に語りかけ、時に身振り手振りや悪戯げなる笑顔も交えつつ、長き口上を全うせり。
1 不起訴決定
「〝大戦〟……旧称・第二次帝国内戦……中における戦争犯罪に係る軍事裁判に際し、種族融合体ゴモリー及び先住種族マルコシアスの不起訴が決定されし件につき、アンドロメダ銀河臨時政府の技術部門副長官たる我、種族融合体ヴォラクは、帝国の主要報道媒体を通じて、ここにその理由を発表するものなり」
「なお、この配信版においては、現在ではマルコシアスも種族融合化を達成せることから、同種族全体を指す代名詞を単数形で統一せり。また、自然・人文及び社会科学的な言語表現につき、太陽系第三惑星〝地球〟向けに配慮を行いたり」
「周知の如く旧帝国においては、皇帝の側近団たる枢密院を構成せる中枢種族が、先帝を傀儡と為して実権を掌握したる後、その腐敗から熾烈なる権力闘争を展開せり。彼女達は文明開発長官サタンによる内部告発を契機として悲惨なる〝大戦〟を惹起し、遂には銀河系の中心部を荒廃せしめたり。然し、サタンの新政権による社会秩序回復の動向を知るに及び、一部の中枢種族は相互に休戦協定を締結せり」
「彼女達はアンドロメダ銀河に逃亡し、その中核領域を征服したる後、同地を拠点として新帝国への反撃を企図せり。幸いにも、新帝国の急速なる復興と防衛体制の整備によりて、この〝銀河系襲撃〟は失敗に帰せり。これに加えて逃亡政権は、内政の破綻から科学長官ラジエル達による〝アンドロメダ蜂起〟を招来し、遂には新帝国遠征艦隊との〝アンドロメダ戦役〟に敗北して降伏せり」
「ゴモリーは中枢種族ラジエルの私兵軍司令官、マルコシアスはその友好種族なりき。彼女達は〝蜂起〟において勇戦し、〝戦役〟においても新帝国陣営に協力せり。然しそれ以前には旧帝国、あるいは逃亡政権の有力種族なりしが故に、当時の活動につきて戦争犯罪の責任を問うべしとの意見が、複数の種族から提出せられたり。我は臨時政府長官アスモデウスの指示により、慎重かつ徹底的なる調査を実施せり」
「その結果、既に滅亡せるラジエルは、事実上軍事種族で構成される中枢種族の中では稀なる技術種族であり、その先進技術への要求から半ば同行を強制されしものにして、ゴモリー及びマルコシアスもまた、そのもとで一般的な行政・産業活動に従事せるものに過ぎざりしことが判明せり。さらに、帝国中央政府及び各自治領からも同様の調査結果が提出され、検事団は両者の不起訴を決定せり。我はこれより、その詳細を述べん」




