温室の老人
掲載日:2016/08/05
金魚、飛ぶように泳ぐ
老人は見詰める、見上げる
八階から、地上25Mから
熱帯夜だ、とぶ、とぶ
赤子の泣き声が響いて
茶色く淀んだ都市が静止する
飛ぶ、本がとぶ
立派な書庫ビルから
内臓の無くなった怪物は
崩れ、崩れ
蒸発し
インクは
かわき
声も枯れ
見詰める目だけ
まるで爬虫類の
響く、歌が響く
高速道路が目を覚ます
まるで塒を巻いた蛇
首を擡げ、擡げ
老人は見詰める、見開く
天から、高度400KMから
悪夢だ、とぶ、とぶ
金魚よ
我が子よ
離れ難き我土よ




