パラドックス!?だったら、考えなければいいだろ!
村にやって来た織田信長は畑などを視察した。
その様子は、ゲームで市長職になった人がロールプレイでやっていた物と一緒だった。
つまりは、自分の担当区域はどんな産業があるのかなとかそういうのを調べていたんだと思う。
そして、色々見回ってから僕達の家で夕飯を食べる事となった。
いいのだろうか、偉い人って下々の人と同席しないはずなのにな。
「うむ、悪くない」
「面妖な味ですな」
今日の夕飯はシチューだった。
血液を材料に牛乳を生産し、バターを生産して、米を細かくした物でルーを作って後はごった煮である。
血液と牛乳は成分が近いので、生産できたのだ。
因みに原材料は猪とかだよ、人間ではない。
「それで、何か話があったのであろう」
食事中にも関わらず、佇まいを治して弁慶が話を切り出す。
それにより、信長さん達の目が細まり真剣な顔となった。
「察せられておったか。然様、此度は御主等に用件があってまいった」
「フン、お願いか?それとも命令か?」
ふてくされながら喧嘩腰に吐き捨てる慈円、お供の人が騒いで信長さんがキレて、弁慶が慈円を嗜める。
なんだか、この流れがパターン化してきたな。
「近々、南蛮の者と貿易を行なう。その際、その方らの力を借りたい」
「南蛮、火縄か?」
「然様、その方らが大陸から来たと聞く。そして、語学にも堪能である。故に、円滑に進めるべく力を貸して欲しい」
「フン、どうだかね。私はアンタが随分と短気で粗忽者だって風の噂で聞いてたぜ。ところが、こんな所で頼み事とは何か企んでるんじゃないのかい?」
慈円の言葉にいつものパターンが一度入り、再び話が再開される。
どうでもいいですけど、騒がないでくれませんか。外に村人が耳をすましているんですけど。
「此度の貿易、今後の進退に関わる重要なことである。ならば、その方らには協力的になって貰ったほうが都合がいい。それだけのことだ」
「アンタ、プライドはねぇのか?こっちで言うなら誇りはねぇのか?」
「フン、普通の大名はやらねぇ……だがな、我がこれからやることは天下取りよ!普通じゃ天下なんぞ夢幻、大うつけと言われるくらい我が道を、覇道を進む必要がある。ならば、頭一つ下げる事を躊躇する理由があるか!」
いきなり立ち上がって急に大きな声を出すから吃驚したが、しかしその言葉には納得だった。
何故なら、世界的発明などは過去に発表されていたり馬鹿にされている事が多いからだ。
この時代で言うならガリレオって人の天動説かな?未来で言うなら魂の存在証明理論とか、当時馬鹿にされていても未来で再評価って言われる人はたくさんいる。
そう言う人って普通じゃないことが多かったりする。
でも、天下を取るのって徳川さんなんだよね。たまたま、今川って格上に勝ったからって調子乗ってるよ。
一回勝っただけで、天下なんか取れないよ。内乱終結って大変なんだから。
「それは無理な話だ、アンタじゃ天下は取れない」
「たわけ!取ろうとせん奴に取れるもんも取れんわ!これは志の問題よ!」
「うむ、なるほどな」
未来を知っている慈円の言葉に信長さんが怒ったところで弁慶がパシンと手を叩いて注目を集めた。
そして、周りにいる者を見渡してから笑みを浮かべて口を開く。
「あい、分かった。我輩は協力しよう」
「おい、弁慶!」
「なぁ、慈円よ。いつ現れるか分からぬ者を探すことに意味があるか?この戦の時代で、このままの生活が力もなく過ごせると思うか?無理だ、我輩達とて国には勝てぬ」
「だけどよぉ……」
「それに、我輩は気に入ったのだ!自分から行動する、よいことだ。我輩も平和を手にする為に戦おうぞ!どうだ、この身に合わぬ大望!運命への反逆!楽しそうではないか!フハハハハ」
弁慶の言葉に、僕と慈円はハッと気付く。
弁慶は言っているのだ、歴史を変えてしまおうと。
徳川さんが天下を取る歴史から、織田信長が天下を取る歴史にしようと言うのだ。
何故なら、僕達がいることで歴史は変わる可能性を発生させたからだ。
だから、このまま何もしなくても歴史は変わる。ならば、自分達で手繰り寄せようと、そう言う事だ。
「深い考えあってのことなのですね」
「うん、何の話だ?」
「またまた、惚けちゃって……えっ、マジ?」
「おい亜利栖、コイツは何も考えてないで喋ってるぞ」
は、恥ずかしい。
深い考えがあるんだねって態度をしただけに違っていたことが恥ずかしい。
そうだった、弁慶は脳筋だった。
「オーライ、私もやるよ。別に嫌いじゃないぜ、ただ腑抜けの下には付きたくなかっただけだ」
「うむ、そうか!ならば、話しは終わりだな!では、織田信長殿。我輩たちは貴殿に仕官しよう」
「あぁ、今日から貴様は我の家来だ弁慶。そこな女、貴様も次いでに雇ってやる。男に拘っているみたいだな、ならば男より力を示してみよ!我は寛大だ、公平に評価するぞ」
「ケッ、言われなくてもテメェが困るくらい実績を積んでやらぁ」
がっしりと弁慶と信長さんが手を握る。
その様子を壁に寄りかかりながら、鼻で笑う慈円。
ここに、二人の仕官が成立した。
「うむ、では我輩達三人をよろしく頼むぞ」
「えっ、三人?」
「なぬ、三人?」
僕と信長さんの口から疑問の声が上がる、だって二人じゃないのって思ったから。
そう思っていたら、弁慶の視線が僕に注がれて、釣られて皆の視線が集まった。
「僕?」
「応とも、我らが女神だからな!」
「いやいやいや、無理無理無理!戦場、危険、戦えないよ!」
「分かった、男に二言はない!」
「分かった!?分かったじゃないよ、何で!?わぁ、ごめんなさい不服じゃないです睨まないで!」
のんびり農民ライフを送るつもりだったのに、巻きこまれるような形で僕の仕官も決まってしまった。
でもって俸禄三十貫から始めるとか言われたけど、それって給料なの?多いの?と疑問が尽きないまま、あれよあれよという間に城の方へと連れてかれる事が決定した。
そして、村人達に今までありがとうと挨拶して城下町への引越しが決まり、慈円の拾った馬に乗って旅立つのだった。
ちなみに弁慶は私達の隣で走っていたよ。馬と同じ速度ですごく速かった。
城下町はなんだか寂れていた。どうやら、最近まで内乱があったらしい。
日本って国の違う領地同士での内乱ではなく、領地の中での内乱だ。
身内と争ったりお隣さんと争ったり、本当に戦争ばかりの時代である。
「我はな、美濃を取るつもりだ。その為には貴様らの力がいる。貸せ」
「この間戦ったのに、なんで、その信長様は戦うんですか?」
「無礼者!貴様、命がいらぬと思える!そこになおれ!」
ふと、疑問に思って口にしたらスゲー怒られる僕。
ビクッとして、自然と涙目になってしまう。
助けを求めて、後ろを振り向けば慈円は笑っているだけ、横を見れば弁慶も笑っている。
ダメだコイツら、使えない。僕がどうにかしなきゃ……
と思ったけど、信長さんがフォローしてくれた。
「止せ、南蛮の者だ。よいか、次からは上総介様と呼べ。名を呼ぶ事は無礼だ」
「ごめんなさい、僕、知らなくて……」
「餓鬼の間違いだ、目くじらなんぞ立てたら我の器が知れる!分かってんのか貴様、次やったら殺すぞ!」
「す、すみませぬ。しかし殿」
「口答えするったぁ、偉くなったもんよなぁ!おい!」
ただ、ちょっとフォローが可愛そうなくらいパワハラでした。
ごめん、僕のせいで本当にごめん。
因みにさっきの質問は美濃を取れば貿易で儲けられて資金源が出来るからなんだって、世の中金がないと何にも出来ないからね、納得。