流石にそれは無理だろ
工場はあっても材料が足りない状態に至った。
最初はよかったのだが、生産速度が速すぎて物が足りない。
なので、海外から輸入することにした。
「こ、これは・・・・・・」
「植物性プラスチックです。軽くて丈夫、環境に優しいですよ」
いつの間にか木下が羽柴とやらに改名していた頃。
但馬へと毛利さんからのお願いで侵攻した猿のお陰で海が手に入った。
今までは太平洋側だったので国内しかできなかったが、日本海側によって朝鮮と貿易できることが出来るようになった。
朝鮮はすごくいい国、というのも百円ショップで買える程度の物を持って行けば賄賂をくれるからである。
まさか、紙コップやプラスチックスプーン、ペットボトルやビニール袋が馬鹿売れするとは思わなかった。
しかも物価は安いし、金持ちが多いので商売が実に楽である。
「純利益で数倍の量を仕入れ出来るんですけど」
「値上げしよう、倍プッシュだ。なお、賄賂の一部は抜き取られている模様」
「貧富の差が激しすぎて、ボロ儲けである」
お金があれば物が買える。
物さえあれば生産チートで加工し放題、そして人も雇える。
今は品種改良した植物のせいで食糧自給率が上がったからか、生活が苦しくないので兵士にはなりませんという人が増えている。
知らなかったけど、この時代の人達って食い扶持とかのために戦争していたらしい。
なので、現在の織田では軍人として最初から訓練した兵士しかいない。
徴兵制、それって野蛮な文化ですねって訳だ。
物があれば後は圧倒的な技術による蹂躙が待っている。
船であればガレー船、銃であれば手動のガトリングガン、大砲であれば青銅砲、もう怖い物などない。
基本的に日本統一とか天下布武は殿とか弁慶たちに任せて内政ばかりしている。
「正直な話、弁慶と慈円って使い物にならないですよね。個人の武勇で出来ることなんて少ないですもん」
「くっ、殺せ!」
「我輩達、微妙なチートであるよな。そう考えると・・・・・・」
とはいえ戦場に出れば化け物なので、常勝確定で臨時収入ボーナスが入ります。
まぁ、大義名分がないと戦争なんてそうそう起きないんですけどね。
「最近、ウチの奴らはビラ配りばっかだしな」
「文字が読める人達にプロパガンダするのは大事ですからね」
「忍者って、いや情報戦だしこれも正しい姿なのか、うごご」
最近、キャラ崩壊が激しい慈円。
彼女の部下達は絶賛、印刷物を運んでいます。
織田家すごいよ、織田家以外はこういう悪事を働いてるよ、そんなことを書き連ねた印刷物です。
噂になれば娯楽のない時代なのですぐには広まらない分だけ信じてくれます。
やってなくてもやってることにすれば、朝廷の敵認定出来るからです。
おっ、おまえ朝敵になるのか?まわりから攻められるぞ?いいのか、おん?
みたいなことが出来るって訳ですね。
力がない人がそれをやると大義名分になって、天皇の敵を理由に襲われるのですが今はむしろ掛かって来いよオラァな感じなのでオールオッケーです。
「まぁ、余所から織田家に仕官しに来るやつ最近多いし勢いはあるよな」
「京都周辺は食料とか足りないらしいですもんね。軍人になったらご飯食べられるし、そりゃ来ますよ」
「自分から喧嘩売っていくスタイルであるな。上洛しろという名の挑発とか」
上杉と武田さんはお互いに領地の取り合いで忙しいらしいし、毛利って所と尼子ってのも今は戦争中、三好って人達はこないだ戦って追いやられたので上洛する気力がない。
唯一、いけそうな朝倉さんは上洛するから織田どけろよって内容の手紙しか送ってこない。
上洛までの道すがら存在する敵を討伐しなければならないけど、部署が違うから関係ないですみたいなこちらの都合で呼び出しである。
朝廷は織田家の傀儡だとか批判する家もあるけど、何を今更感がハンパない。
上杉さんとか、こっそり側近だけで移動したことあるらしいけどそんなことを今の京都でするやつはいない。
だって、織田家に囲まれて暗殺されるからね。
「手紙が徐々に荒くなってるんだけど、そろそろキレるのでは?」
「上洛の催促でイライラしてるんじゃないですかね?」
「足利さんが色々な所に信長包囲網作ろうぜってラブコールしてるからイライラしてるんだと思うんですが」
「あー、そっちか」
浅井と朝倉さんがやりとりしている形跡があるので、だいぶ怪しいですけどね。
仮想敵国である朝倉さんと戦うことになったら裏切りそうです。
殿は、マブダチだからそんなことねーよ。つーか、妹とか嫁がせてるし裏切らねぇって。
みたいなことを言ってますけど、浅井家って六角とか裏切ってるらしいですので信用出来ないです。
「三好はもう終わりだし、降伏するように呼びかけまくりますかね」
「取りあえず、二日おきに降伏を勧めるってどうだろうか」
「死傷者が出ないといいですね」
殺されても言いように、坊主を装うのが良いんじゃないでしょうか。
そんな予想は外れでもなく、降伏勧告にキレて三好が蜂起。
同時に上洛コールにキレて朝倉も蜂起。
ちょうど、最近上洛に応じないからと戦争を考えていた殿が喜んで進軍すると事件が発生する。
やっぱり、浅井が裏切ったのである。
「足利さん何がしたいんだろう。征夷大将軍しか取り柄がないのに」
「まぁ、今回のことで処分だろうな。信長って裏切り者には厳しいらしいから、無理でも暗殺とか」
まぁ、幸か不幸か献金をしまくって朝廷に気に入られていることは周知の事実なので、国人衆が従わなかったり反抗したりで信長包囲網も一枚岩ではなかった。
むしろ、内側から手引きする形で織田家に協力的な奴が多くて進軍する前に内輪揉めしている奴らがいる始末だ。
信長包囲網に対して、殿は侵攻ではなく防衛戦を決定した。
というのも、武田を警戒する必要があるかららしい。
今は弱い奴らが徒党を組んでいる状態、ここに武田が来ると困る。
今は北条殺すマンだけど、一時休戦となって襲いかかって来られたら困る。
裏切られた時を考えたら本当に困る、そんな殿は考えた。
ちょっと、武田信玄ぶっ殺してみないかと。
「えっ、ぶっ飛んでるわ。確かに弁慶、化物だけどその発想は、どんだけ・・・・・・」
「大丈夫、たぶん生きて帰って来れるからって、どんだけ・・・・・・」
「我輩、一人で国落としとか、どんだけ・・・・・・」
でもこれも戦国の宿命、上からの命令は絶対、殿様の命令は絶対なのです。
斯くして、信長包囲網とかヤバいから援軍下さいとお願いするフリして武田信玄ぶっ殺す作戦が決まったのだった。
「これ、それやったら戦争やろ」
「でも、信玄いなければ余裕みたいなこと言ってたし」
「流石の殿も血迷ってる。絶対怒ってノリでやれって言ってる」
僕と慈円は頭を抱え、弁慶だけは笑い飛ばして何とかなるだろうと楽天的であった。