上洛して発明した
1568年 殿が上洛、という京都行きを決定した。
武田と岐甲同盟というのを結んで、一気に京都まで攻めるらしい。
色々な推測はあるけれど、たぶん俺は攻めないから東北とか平定しろよその間にちょっくら京都で挨拶してくる。朝廷に挨拶してる間に東北を平定して後で俺も挨拶しに行くわ。みたいなやり取りがあったんだと思う、じゃないと同盟なんてすぐ破棄するはずだからね。
「所がどっこい、この時代約束って大事なのだ」
「えぇ、そうなんですか?」
「まぁ、私なら解釈で誤魔化してやるけどな。例えばアイツを倒すまでは協力するって言って、倒したことで弱ってる同盟者に、倒したから約束は果たしたって言って斬りかかるね」
ナチュラルにゲスな発言ですけど、これも戦国の習いって奴です。便利な言葉だなぁ。
今川領を抑えた武田さんは北条潰すと今や怒り心頭、ちなみに徳川は雑魚だからほっとくみたいな感じらしい。
一応同盟者の殿の友達だし、配慮してやるよって感じらしい。
上から目線だけど、武田さんは強いってことで有名らしいから仕方ないね。
噂が大好きというか噂ぐらいしか娯楽がないので尾張の忍者達から情報が入ってくる。
簡単に情報が手に入ってきて、これで大丈夫なのかと思ったけどこの時代の人に情報の大事さなんて分かるわけがなかった。
でもって手に入った情報だが、朝倉さんという所にいた明智君とやらはいつも上司に、京都には時間があったら行くわと言われていたらしい。
そこで明智君は、コイツ行くって言ってるだけでその気はないな。
俺、コイツより朝廷に媚びうるわ、絶対京都に行くんだ。
そういう感じで、例の三好ぶっ殺してくれと頼んだ足利さんと一緒に殿の元に来たらしい。
ついでに会社やめたんで雇って下さい、有職故事で使える部下ですと自己アピールの末に仕官である。
因みに、殿は35で明智君は41というまさかの6歳差、6歳も下の人に働かせて下さいと一念発起の転職、明智君頑張れ。
そんな訳で京都に行くのだけど、せっかくだから南蛮の知識で使えることもあるかもしれないと僕達が呼ばれる事となった。
いや、政治とか分からないんですけど殿は何を期待してるんですかね?仏パワーですか、そうですか。
「面を上げよ」
「ははー」
僕達は殿に呼ばれて対面していた。
周囲には数人が控えており、セキュリティは万全であった。
最初に口を開いたのは殿だった。
「時に、亜利栖達とこのような場を設けるのは随分と久しいなぁ」
「お館様、そんなこと言ってちょいちょい会ってますよね?」
「ちょいちょい?貴様ぁ、良く分からんがお館様に向かって無礼ぞ!」
良く分からない髭が喚くが、良いと殿が片手を挙げて黙らせる。
あんまり、こういう畏まった場にはいつも呼ばれないし敬語とか昔の言葉過ぎて分からないんだけどな。
「申し訳ございませんでした。今回の件は持ち帰ってから検討させて頂きます」
「まぁ、それはどうでもいい。実は、貴様らの意見も聞こうと思ってな。南蛮にも王族ぐらいいるだろう。南蛮では天下を取るといった場合、どういう物だったか聞きたくてな」
「天下取りでございますか」
天下取り、つまりは世界征服。
僕達の時代は電子戦が主で株の取り合いくらいで殺し合いなんてしてなかったんだけどな。
経済で戦争してましたって言っても分からないし、上手く説明できないけどな。
「と言うわけで慈円、何かありますか?」
「難しいな。だって、日の本と南蛮だと状況が違うからなぁ。遊牧民とか民族大移動とかそういうのがあるわけでもないし、宗教も仏教とか基督教くらいしかないからなぁ」
「うむ。だが、王族と言えば朝廷がおるではないか。あの国人衆というシステムから考えるに権威が重んじられる文化であろう。さすれば、朝廷の力を復活させることこそが最良なのではないか」
弁慶の言葉に思わず、うんうんと頷く。
僕達の時代でも天皇ってまだありましたからね、朝廷って天皇のことだし大事だと思います。
難しいのだけど、国人衆という朝廷の部下みたいな人達は色々なところにいる。
実質支配している事もあって、場所によっては違ったりする。
俺に従え、というのがウチのスタンス。みんなで話し合おうというのが武田のスタンス。
ようは独裁か連合政権かみたいな違いだが、ここに守護とか官位とか絡んでくると面倒である。
武家の子供はこういうの勉強するらしいんだけど、正直面倒なので僕はしていない。
「まぁ、でも、殿の元には足利さんという将軍家の人がいるんですよね。でも、その人の家って没落してるんですよね」
「結構、酷いことを言うな。まぁ、そうであるが」
「じゃあ、京都に行ったら貧乏な朝廷に献金とかしまくって、でもってリコールしましょう」
「り、りこーる?つまり、何だ?」
「殿が征夷大将軍って奴になれば良いんです。そしたら、日本で2番目に偉いってことですから、みんな逆らえませんよ。だって、みんな朝廷の部下で、土地を任されてるんですよね?じゃあ殿に逆らったら朝廷に逆らうって事だから、暫定支配の正当性とかなくなりそうですよね?」
良く分からないけれど、国人衆っていうのが権威を大事にするシステムなら、それを利用すれば簡単に天下を取れると思われる。
みんなが反対しても社長が任命したら、文句も言えない。でもって副社長になったら他の社員にある程度命令できる。
これが朝廷と征夷大将軍の関係だ。
今の将軍家の人は、まぁ没落寸前で殿が後ろ盾になっても力がないから何も出来ない。
だったら、まぁ反感はありそうだけど殿が征夷大将軍になった方が早いと思う。
「無茶を言う。確かに朝廷の権威を回復できれば、征夷大将軍になれれば上手く行くやも知れぬが夢物語よ」
「そうですかね、でもやるだけやってみるってどうですかね。一応、表向きは足利さんを将軍に据えて裏では新しく任命して貰うように働くとか」
「うむ、一考の余地はあるやもしれぬが、しかし……」
弁慶の案から考えてみたのだが、ダメだったろうか。
でも、未来の知識があれば朝廷に気に入られるのも楽勝だと思う。
僕の案が採用されて、畿内を支配していた三好三人衆とか呼ばれる人達をを四国とやらまで追い詰めた。
結果、畿内という場所を支配下にすることが出来たのだった。それとオマケで松永久秀って人が部下になった。
実は三人衆ではなく四人目が松永さんで、後で実は四天王だったのだ仲間の敵、的な感じで裏切る気がする。
まぁ、ただの陶器オタクなので器を送ると喜んでくれるチョロい人である。
上洛して、朝廷に献金すると同時に拠点を移すことになった。
殿が言うには都は日の本の中心、当然最先端の技術が集まっているべきだとのことだった。
「ててーん、出来ました」
「凄い、これぞ三大発明」
でもって京は好きにしても構わんとの事だったので、京都で建物を壊したり研究などをする日々を送っていた。
一応、観光地として昔の建物も残してるけど、お寺や神社以外はレンガとかで建物を作った。
景観を損ねるけど、この時代って火事が起きると大惨事だから仕方ない。
でもって研究の末、渋滞の元になるであろう羅針盤、黒色火薬、活版印刷機などが出来上がった。
「情報を制する者が勝利するのですよ」
「みんな手書きだもんなぁ、これで大量印刷してプロパガンダでもするのか」
「嘘で失脚もする時代だ。うむ、有効な策であろうな」
蒸気機関は既にあるので工場を作り服の大量生産、海外展開で外貨を稼ぐ。
日本だけだと周りが敵になったときに商売が出来なくなって物資が足りなくなりますもんね。
「時代的に産業革命って二百年くらい先なはずなんだけどな」
「まぁ、出来るから良いじゃないですか」
「もっと武器とか作ればいいのにな」