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VR戦国時代  作者: NHRM
20/27

アレが殿の妹とか嘘やろ……

砲撃という、時代をある意味で先取った一撃に部隊は瓦解して早くも撤退戦となった。

撤退戦というのは追い立てる方が圧倒的に有利で、つまりは勝ち目が相手になくなったことを意味する。

ゲームと違って戦力差は当てにはならず、士気が意外と重要だったりする。

あれだけ優勢だった軍勢が、数の優位を死への恐怖で失っていることがその証明だろう。


「フハハハハ、無様なり!」

「べ、弁慶だぁぁぁ!」


全身から雷を発した弁慶が凄い早さで走り抜ける。

それこそ、時速百キロとか車の速度みたいだ。

しかも、その雷は地面を跳ね回って周囲の人間を巻き込んでいる。

見た目だけのエフェクトの筈なのに周囲に影響があるんですけど。


ぶつかる度に人が吹っ飛び、不格好な姿になる人が続出する。

それは糸の切れたマリオネットみたいな、崩れ落ちた人形のようなバラバラな感じだ。

ほどよくローストされてるのも凄惨さに磨きを掛けている。


「むぅぅ、悔しいが奴こそ戦国無双という奴よ」

「あぁ、知ってる知ってるゲームですよね?」

「戦国で一番という意味なんだが……」


アレ、と猿の言葉に首を傾げる。

まぁ、これが俗に言うジェネレーションギャップって奴なのでしょう。

とにかく、一人だけ突出して殲滅なんかしている弁慶のおかげで僕達はやることがなかった。

もう、アイツ一人で良いんじゃねって奴である。


「ば、馬鹿な……こんな、呆気なく」

「殿、気をしっかり!」

「あぁ、感謝して下さい。お金とか現物支給とかあれば嬉しいです」


せっかくなので経費を要求してみたが払いたくないのか、ぐぬぬと悔しそうな顔をされた。

その後、何故か絶望したような顔でしょんぼりしている徳川の三河守さん。

なんだお前、情緒不安定かよ。それでも日本統一したのかよ。


「おっ、亜利栖殿それは一体」

「何ですか、ああ双眼鏡ですけど」

「何だ、また南蛮の道具か」


僕が双眼鏡で弁慶を見ていると、猿は双眼鏡に興味を示していた。

まぁ最近、猿の反応が何だかテンプレと化してるけどね。

レンズの向こうでは逃げ惑う無抵抗な兵士達の姿と山とか丘とかから叫びながら弁慶に加勢する軍勢が見えた。

味方だろうか、分からないなぁ。


「ちょっと、アレ見てよ」

「おぉ、見ても良いのか!ほぉ、ほほぉ~」

「遊んでないで、弁慶に加勢してる軍勢って何?」

「おぉ!アレは遠江国人衆のようでござるなぁ!」


国人衆っと悩むとドヤ顔で猿が説明してくれた。

要は、大名とは違った権力を持った組織で地域の代表みたいな存在らしい。

なんで大名と国人衆が別れて同じ場所を支配してるのか意味が分からない。


「つまりYAKUZAって奴か。元締めの親分は誰なんだろ」

「何言ってるか分からんが一番偉いのは朝廷じゃぞ?」

「朝廷すげー、腐っても朝廷すげー」


もう没落して京都で貧乏生活しているって聞いてたけど、地方じゃ権力者を顎で使えるのか。

それにしてもあの位置取り、間違いなく敵の軍勢より後ろだったんですが実は裏切り行為だったりするんだろうか。


「うん?あれ、なんか弁慶も攻撃してるんですけど」

「えぇ!?まさか、何で、反撃しとらんじゃろうなぁ!」

「普通に反撃されて頭パーンしてますよ」

「のぉぉぉぉぉぉ!」


最近、オランダ人とか南蛮の人と関わっているからか、猿のリアクション芸に幅が出ていた。

具体的には、今の内容を聞いて頭を抱えながら欧米風の反応をしていたのだ。

HAHAHA!って笑いたくなるね。


「何だと!国衆方を攻撃しておるのか!?」

「三河守殿、これは何かの間違いで……」

「仕方ないです。正当防衛です、先にやったあっちが悪いのです」


自業自得だと話したなら、徳川さんが怒り狂って猿に詰め寄る。

あぁ、まぁ難しい話は猿がやって下さい。

部下の教育がなってないのに、逆ギレされても困りますよ。


程なくして弁慶は戻ってきた。

飽きるまで兵を追っ掛け回して、満足したのだろう。

最終的にはみんなで死体の詰め込みである、慣れない人は吐いてるけどウチではリサイクルは基本です。


防衛戦が終了したので領地に帰って数日後、何故か僕達は咎を攻められて罰金の処罰を受ける嵌めになった。

理由は、徳川の援軍に赴いたのに国人衆を攻撃したかららしく、中には腹を切れとか言う人もいたらしい。

そこを罰金で済ませようと信長さんが一声言ったそうだ。


「えぇ、死ねって言ってますよねぇ」

「腹を切るとか、この時代だと謝罪会見みたいな物だからな」

「本当ですか慈円、それってどんな謝罪会見ですか。視聴者もそこまでしなくてもとか思いますよ絶対」


調べてみたら、昔凄い功績を残したことで威張っている老人だった。

名前を柴田勝家と言って、鬼柴田と呼ばれるらしい。

鬼って自分で付けちゃう当たりが恥ずかしいね、周りが勝手に言ってるとしても誇るって所がアホだわ。


「スーパー亜利栖です、って僕が自慢するようなもんですよね」

「微笑ましいな」

「オッサンの微笑ましさとか誰得だよ……」


猿にどんな奴か聞いてみれば、融通の利かない頑固者で熱血な感じだった。

倍の戦力差も気合いでやろうとか、不利でもウチの軍は負けないとかそんな感じ。

それで負けたり劣勢になったりすると、周りが軟弱とか足を引っ張ったとか言うらしい。

でも個人としては腕っ節が強くて難儀してるとか。

アレだね、自分が優秀だから周りにも優秀さを求めて自爆するタイプだね。


「そういえば今川が滅亡したそうだぞ、お家断絶って言ってた」

「えっ、何があったし」

「うむ、我輩も聞いたがどうやら武田とやらが遠江から侵入して攻め落としたそうだ」


徳川の援軍という名目で予想通り武田は動いた。

そして、そのまま勢いで今川を支配したそうだ。

結果、家康さんは同盟を破棄してお隣の北条さんと組んだとか。

それでもって奪われた今川領を徳川と北条で挟み撃つ形にしているそうだ。

駿河という場所を武田に取られたのは結構ヤバい状態だそうだ。

こんな時に徳川さんが死なれると困るらしい、まったく悪運の強い奴め。

用がなくなったら殺すことにする。


「強いところに金が集まるってことだ、さらに強くなる」

「もう暗殺しましょうよ。総理大臣だって暗殺されてますよね、この国?」

「おいおい、暗殺なんてしたら世界大戦になった例もあるのだぞ。それを言ったら戦争だろ」

「左様か-」


暗殺で思い出したのか弁慶が聞いてきた噂を話してくれた。

ここだけの話、なんか暗殺され掛けた人が信長さんに俺のこと暗殺しようとした三好の奴らぶっ飛ばしてよとお願いに来たらしい。

普通に盗み聞き出来る弁慶の身体能力も凄いけど、他力本願なその人も凄い。

そこで任せろって言ってしまうんだから、ウチの殿ってば凄すぎ。


「じゃあ京都に行くんですか。いいですね、美術の教科書で見たことあります」

「良く、VRで再現されてたな」

「五重塔とかゲームで作りまくりましたよ、最終的にぶつかってドミノみたいになっちゃいましたけど」


本物を見れるって言うんだから、知らない時代に来るのも悪くないですね。

まぁ、貧乏らしいけど綺麗な場所なんだろうな。

噂は本当だったのか、殿は浅井とやらに御市様を送って同盟を組むことになったのだった。

間違いなく京に行く準備だろうね。


「おい、御市様初めて見たけど絶対血縁関係とか嘘だろ」

「なんっていうか、アイドルですよね。百年とか千年先でも通用するアイドル力って奴を感じました。思わず課金するレベルです」

「うむ、SSRくらいだろうな」


でもそんなことより、御市様が可愛かったのだった。






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