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VR戦国時代  作者: NHRM
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お前のような僧侶がいるか

俺達はお互いに情報交換して、出来る事を試すことにした。

というのも、昔のアニメが大好きな和尚が言うにはゲームの世界から異世界に瞬間移動するジャンルがあるらしいからだ。

そこで、俺達はゲームの方法が出来る状態で戦国時代みたいな異世界に移動したという仮説を立てた。


「見よ、やはり我輩は正しかった!」


黒い肌、鍛えられた身体は汗を滴らせ、筋肉は盛り上がり、全身から赤い炎が出てくる。

フン、と和尚が拳を繰り出せば雷が帯電し、蹴りだせば残像を残して足が幾重にも重なる。


「で、なんの意味があるんだこれ」

「見た目がカッコイイであろう!フハハハ」

「ゲームの仕様のまんまだな」


そういうジェーン・ドゥさんは包丁を片手に素早い動きで切り結ぶ。

ナイフ捌きの応用らしいが、地味である。

後は近接格闘が出来るらしいが、色々な武術に手を出している和尚には負けるらしい。

そして、いよいよ俺である。


「いきます」


俺は家の中にあった、鍋に水をいれて米もいれて最後に味噌を投入した物の前で手を翳した。

そして、生産と一言。

瞬間、豆腐の入った味噌汁が出来た。


「す、すげー……白米が豆腐になりやがった」

「白い食べ物と味噌と水を合成したら出来る気がしたのです」

「いや、おかしいだろ。不思議だ」


自分でも良く分からないが、作りたい物を思い浮かべると必要材料が浮かんでくる。

その他にも代用できる材料とか量とか、なんとなく分かる。

それが集まって出来そうなら、生産の一言で完成するのだ。


「それより食べましょう、和尚の料理は失敗してましたからね」

「料理なんてしたことないからな」

「いや、だからってあれは味噌を入れすぎだろ」


と、ぼやきながらも仲良く食べる。

ちゃんと全自動の味噌汁と同じ味である。

因みに、大豆に塩を掛けて生産をすると味噌と醤油が出来たので、冷奴を作って食べてみたのだった。


ご飯を食べた俺達、改め僕達は外の世界に行く事にした。

というのも、この木造建築の中にある物資にも限りがあるからである。

ジェーン・ドゥさんの案で徳川さんを見つけて若い内から徳川陣営に入り将来安泰ルートに乗る事にした。

しかし、計画は頓挫する。


「いいか、和尚ってのは坊さんでな。色々種類があるんだが、お前のように肌の黒い坊主はいない」

「そうか、まだ差別のある時代か」

「というか、この時代は同じ肌の人すら差別する。地球系人種じゃなくて、黄色人種とか平民とか職業差別もある時代だ」

「難儀な時代だ」


そうなのである。

女となった自分の見た目、金髪に白い肌のエルフは南蛮と呼ばれる姿らしい。

でもって、和尚は南蛮が奴隷にしている黒人なるもので、風当たりが厳しいんだって。

文化的に未成熟な悲しい時代の特徴である。

ジェーン・ドゥさんはまだ日本人に近いらしい。ただ、顔立ちがハッキリしているのでそう判断されるか怪しいとのこと。


「つうか、上半身裸で鎖を巻き付けてる僧侶がいて堪るか!破戒僧だわ」

「破壊王!?カッコいいな、それ!」

「破戒僧!破壊王じゃねぇ!」


そして、もう一つの問題だが名前である。

この時代の名前は長くて変更も多い時代で、苗字すら気軽に名乗れない時代らしい。

和尚は名前ではなく呼び名であって、名前とは認められないらしい。


「取り合えず、私は慈円とする。アリスは亜利栖でいいだろう。和尚はどうするか」

「カッコいい和尚はいないか?」

「和尚って、誰がいたかな?弁慶?」

「誰ですか、それ」

「立ったまま死んだ人だ」


立ったまま死ぬって、どういう状況でしょうか。

でも、なんだか気にいったみたいでよかったです。


と言うことで、慈円、弁慶、亜利栖と戦国時代風の名前でいざ行こうとしたら新たな問題が発生しました。

格好がおかしいとのこと。

僕はエルフが元になっているのでシルクの服なんですがシルクは高級品らしい、弁慶さんは上が無いのがおかしい、慈円は軍服なのでおかしい。


「そんなこと言ったら、価値観や言葉遣いも違いますよ」

「そうだな、今さらだな」

「問題になってから考えればいいだろ」


取り合えず、それぞれ自分の設定を考えて外に出ることにした。

慈円の案で違和感を無くす為に、大陸から教えを広める為に旅立った弁慶と知り合った慈円と僕は三人で海を渡ってこの国に来たことにした。

インドって国は仏教の発祥の地で、中国ってのは隣なんだって。

今の時代だと天竺と明って呼び名らしい。


取り合えず当ても無く僕達は森を抜けていく。

シルクの神官服、上半身裸、軍服の三人組、なんだか変な組み合わせだね。

慈円が言うには、文明は川のあるところにあるそうだ。

凄い、言われて見れば確かにそんな気がする。

で、川はどこにあるのか分からないけどとにかく真っ直ぐ行けば大丈夫と弁慶が言うので真っ直ぐ行くことにした。

ただ、子供の体な為に足が遅いので弁慶の肩に乗せてもらっている。


しばらく進むと、慈円が声を上げた。

僕も釣られて声を上げる。村っぽい物が見えたからだ。

凄い、畑がある。プランターじゃない、本物だ。

そして、そこに人力で農作業する人達、こっちはゲームと一緒だね。


「おぉ、人がいたな。フハハハ」

「よし、サクッと徳川さんを紹介してもらおう」

「徳川さんってそんなにすぐに会えるんですか?」

「メールすれば、あっ、この時代にはメールないぞ」


なんだかグダグダではあるが、話が進まなくなるので村にいくことにした。

しかし、すぐさま問題が起きる。

僕達が近づいていると、何やら騒ぎが起こり始めて村人が家の中に引っ込んだのだ。

そして、男達が武器を持ち出して集まっていた。

慈円がいうには刀というソードの一種らしい。

あれ、敵対されてる?なんでだ?


「ねぇ、行くんですか?」

「まずは話をしてみよう。襲われたらその時考えよう」

「思ったんだが、弁慶って脳筋だよな」

「フハハハハ、よく言われるぞ!」


いや、褒められて無いんですけど。

とはいえ、始めて私達は人と会うことが出来た。

村へと近づいて行き、声が届く距離にまでなると止まれという静止の声が聞こえた。

身長は僕に近く、慈円がいうには昔の人は小さいらしい。

そんな凄く小さい人達が武器を構えて震えながら弁慶を警戒している。

良く考えれば弁慶は二メートルを越えている、怖いかもしれない。


「な、なんだ貴様ら!物の怪かぁ!」

「モノボケ?」

「この時代だと、神様とかお化けを信じているんだ」


なるほど、と慈円の解説に納得する。

昔の人は技術が未発達だからオカルトとか信じるよね、信仰値とかゲームでやったよ。


「宗教って奴だね」

「う~ん、まぁいいか」


何だかスルーされたが多分あっているのだろう。

問題は、目の前の村人達である。

ゲームと違って刺されたら死んでしまうことが気掛かりであった。

緊急停止とか重力制御とか原子バリアーもないわけで、普通に怪我する。

刺されたら痛いんだけどな、なんで弁慶は平然としているのだろうか。


「いやぁ、すまない。我輩達は天竺から来た南蛮の者だ。吃驚したであろうが物の怪の類ではない」

「天竺?なんだそれ?」

「おい、南蛮って」

「でも南蛮人はこんなに大きく無いぞ」


村人の言葉に思わず頷く、僕もそう思うからだ。

現代でも二メートル越えは少ないほうだと思うよ、っていうか二メートルの筋肉モリモリのマッチョマンがやってきたら僕も怖いと思う。


「これでも僧侶である、少し話しを聞きたいだけだ。武器を下ろしてくれんか」

「なんと、それは、なんというか」

「フハハハ、気にせん!我輩が悪かったのだ、許せ!フハハハ」


なんだか気まずそうな村人の前で弁慶の笑い声が木霊する。

そのせいか、自然と笑みが広がり受け入れてもらえたようであった。

取り合えず、一件落着である。

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