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VR戦国時代  作者: NHRM
19/27

ロマン砲って大事だと思う

汽笛を鳴らしながら汽車が大地を駆けていく。

その日、三河の国にいた者達は平伏してやってきた黒い何かを拝んだのだった。


「ええい、何事か!馬だ、馬を出せ!」

「殿、とにかく大変でございます!急ぎましょう」


急ぎ、家臣の小栗吉忠を連れて外に出た家康が見たのは巨大な壁のごとく連なった黒い存在であった。

周囲には畑仕事をやめて平伏する民の姿があり、その正体不明な物に意識が一瞬だけ飛ぶ。

そんな黒い存在の端、少し離れた場所にいる人物達を見つけた家康は事情を聞くために動き出した。




後ろから迫り来る汽車よりも速く線路を作っていくという仕事を終え、荷馬車で休憩していると僕達の前に変な人達が現れた。

よく見ると高そうな服を着ているので役人なのかもしれない。


「私は徳川三河守である。その方らに伺うが、これは何か?」

「あぁ、役人の方ですか?僕達は織田家の方から来た……なんて言えば良いんですかね?」

「うむ、我輩小牧山城に居を構える、織田家の家来、小牧山弁慶と申す者なり」

「えっ、僕達って小牧山っていう名字なんですか?初耳なんですけど」


弁慶が小声で言うには箔付けで考えろと殿に言われたらしい。

弁慶が挨拶すると、ヒソヒソしてから一人前に出て名乗りを上げた。


「身共は徳川家が家来にて、奉公衆を仰せつかっている小栗吉忠と申す者でござる。見た所、南蛮の者故か、分からぬようだが、此方のお方こそ三河の国を治める徳川三河守でござる」

「あれ、三河守?あぁ、通称って奴ですね。なるほど、徳川さんですね。助けに来たぜ」

「うむ、助けに来たぜ」


僕と弁慶がやって来た理由を言うと、なんだか変な顔をされる。

可笑しいな、凄く分かりやすいと思うんだけどな。

もしかして、結構無礼だったりする。


「良くは分からぬが、援軍と言うことか。しかし、見た所軍勢は見当たらぬが……」

「あぁ、みんな汽車に乗っているんです。責任者の木下藤吉郎が引き継ぎますのでお話なら其方で、僕達は南蛮出身だから無礼を働いて不快な思いをさせるかもしれませんからね」

「殊勝な心掛けだが、少し遅かったな。いや、このような者すら懐に入れる織田殿が変わっているのか。何にせよ援軍有り難く」


あぁ、やっぱりなんか不味かったかぁ……と後のことは猿に丸投げする。

邂逅一番に五体投地からの謝罪に入っていたので、なんかやらかしたらしい。

僕、初めてスライディング土下座って奴を見ましたよ。

なんか土下座すら超越して五体投地でしたけどね。


「やっぱり自己紹介ってややこしいですね」

「まぁ、アカウント名と本名が違うみたいなものだろう」

「なるほどなぁ……」


まぁ、話は纏まったみたいなので僕達も準備に入る。

一応、戦場となる場所というのは大体予想できるらしく、そこまで線路を作りに行くって訳だ。

もう、既に出兵は確認済みなのだがどのくらい進んでるのか衛星がないから検討もつかないよ。


「普通は籠城戦を選ぶのだ」

「ほぉ、それは何でですか」

「それはだな、引き籠もってると三倍強いからだ。剣道三倍段みたいな物だ」

「良く分からないけど引き籠もると三倍の兵力差と戦えるってことですね」

「ただな、聞けば三河兵は勇猛らしく野戦になるのではと皆が言っておった。そのための機動砲ではあるがな」


兵力差があるのに野戦を選ぶという予想は、やはりというか的中することになる。

敵は恐らくだが興津清見寺とかいう、場所に陣を作っているらしい。

そこで両軍揃ってからヨーイドンで合戦が行われるそうだ。

なんだそれ、戦争ってそんなんじゃないだろ。


「作法とか意味が分からない。奇襲とかどうするんですかね」

「まぁ、時代であるからな。いきなり惑星破壊とかしないんじゃないか」

「何言ってるんですか。そもそも、レーザー兵器がないですよ。まぁ、僕達の時代は争う理由が技術の発展でないですけどね」


今回の場合は、食糧問題とかになるのだろうか。

それとも、プライドとかそういう価値の無さそうな物が原因か。

人間関係の縺れって線もあるな、今川って人はまったく何がしたいのやらって奴である。

そんなに僕達のせいで悪口を言われたのが気にくわないのだろうか。


「まぁ良いです、陣地が分かっているなら迎え撃つ準備が出来ます。では弁慶、線路を作りましょう」

「合点である」


そして、合戦が行われそうな場所まで線路を作って帰ってきた僕らは斥候みたいに陣地の様子を語った。

その後、徳川さんが集めた兵達を汽車に乗せていざ出陣である。

三河兵という人達は勇猛ってだけあって足を震わせていても騒いだりしなかった。

そんな彼らを尾張の兵は笑っていたけど、最初に乗った時は泣き叫んでいたから調子がいいなと思うこの頃だ。

もう慣れてくれば、後は景色を楽しむ余裕すらあるはずだが口を真一文字に結んで緊張した面持ちの三河兵達。

景色を楽しむのは尾張兵だけである。

何というか、戦に対する意気込み的な所が全然違っていた。

だから、弱小って言われるんだよ。


目的地に着き、僕達も陣形を整える。

パパッと撃って帰ろうと思ったのだが、そうは上手くいかない。

なんと徳川さんが、お前達援軍なんだから前に出んなよって感じのことを言ったらしいのだ。

猿が一生懸命説明したんだけど、僕達はあくまで援軍だからサポートに徹して下さいとのこと。

いや、馬鹿なの?火縄銃がたくさんあっても弾薬がとか言ってるけど、そもそも火縄銃じゃないし弾薬だって沢山あるんだけど。

秘密兵器だって、この汽車には積んであるのに味方が乱戦していたら撃てないんだけどな。


「まったく、困った物であるな」

「勝ちたいのか目立ちたいのか、そもそも勝ち目が少ないくらいの大軍なのに突撃とか意味が分からない。本当に天下統一したんですかね、誰かから貰ったとかだったのかなぁ……」

「まぁ、猿に内緒で撃てばいいだろう」


作戦について猿が色々言ってたが無視することにした。

別に無視しても、僕達に悪い影響とか無いと思うからだ。

結局助ければいいだけなので、方法は関係ないと思う。


「いよいよでござる。頼むから余計なことをしないで欲しいのじゃ」

「分かってる分かってる」

「えぇ~本当にござるかぁ?おみゃ、何か企んでないだぎゃ?三河守殿の面子もありますから、頼みますぞ。いや、マジで頼みますぞ!」


猿の執拗な頼み事を聞き流しながら開戦の合図を聞く。

太鼓とか法螺貝が響いて、うおぉぉぉと先頭の三河兵が走り出すのだ。

因みに僕達は後方で待機、普通は投石とか火縄銃を先にやる物なのにね。


「ちょっとさ、猿、これ引っ張ってよ」

「戦の最中に何を、まぁ引っ張るだけですぞ」


先頭車両の所で猿が紐を引っ張ると、思い切り汽笛が戦場に響く。

その音に皆が驚いて止まった直後、音を合図に僕達の部下である尾張忍軍が指示通り動く。


「うわ、びっくりしたのじゃ。いきなり、何させ……」


猿の視線の向こうには、横に壁がスライドする車両が見える。

倉庫が開かれるように、壁が左右に捌けると現れたのは幾つも横に連なった大砲であった。

うん、実は後部車両に大量の大砲をくっつけて持ってきていたんだ。


「なんか、ヤバい!絶対ヤバい、何してんのぉぉぉ!」

「僕は何もしてないよ、僕はね」

「ちょ、まさかさっきのは合図!?」


察しが良いところで、戦場に爆音が響く。

一斉に、大砲が発射されたのだ。

そして、反動によって横転する車両。

すまない、ロマンを追求した結果、欠点兵器になってしまったのだ。


「ぬぉぉぉぉ、何してんだぁぁぁ!ワシのせい、これワシのせいかぁぁぁ!?」

「合図出したのは猿だし、僕は悪くない!」

「嵌めやがったなぁぁぁ!なんで、あれほど余計なことをするなって言ったのに!」


嘆く猿を無視して、弁慶と兵士達が武器を片手に突撃である。

大砲の弾はブレブレで四方八方にめり込んでるが、いくつか集団の中に当たったらしく混乱していた。

そこにみんな突っ込む物だから、相手はビビって逃げていた。

よし、潰走って奴だね。これは勝ち確定ですわ。


「まぁ、結果的に良かったじゃないか」

「どうやって帰るのじゃぁぁぁ!」

「みんなで押すんだよ。よーし、戻すよー」


弁慶達が突っ込んでる間、僕達は一生懸命、倒れた戦車を押し戻すのだった。



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