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メイプルクリスマス

作者: 桜華咲良

「早く春にならないかなぁ」

 大寒波が押し寄せ例年よりも寒い冬に、少し嫌気が差していた。

「なんで?」

 素っ気無い態度で隣にいた先輩はそう返してくる。

「こう、毎日寒いと春が待ち遠しくなっちゃいまして。」

 僕は寒いのが苦手だ。暖かい店内はまだいいが、ここに来るまでが兎に角つらい。

「春…なぁ。あの朗らかさは確かに待ち遠しいが、その前にクリスマスというビックイベントが数日後に待ち構えていることを忘れていないか?」

 先輩は、ただでさえ寒いのが苦手な僕をもっと寒くさせるような事を思い出させる。

「やめてくださいよ。折角逃避出来かけていたのに嫌なことを思い出させないで下さい。」

「どうせ俺もお前も、寂しい侘しいクリスマスはここでいつものようにバイトしてるんだろうよ。 」

 つらい。

「嫌なこと想像させないでください!」

 ハハハと先輩は笑う。この人は何時も余裕だ。

「そういやお前。この前のあの子とどうなったんだよ。」

 うっ。1番思い出したくないことをこの人は平然と突っ込んでくる。

「あぁ…あの子ですか?」

「そうそうあの可愛らしいあの子とは。」

 ニヤニヤしている先輩は生き生きとしていた。

「告白はしたんですけど……」

「したのか!」

「…………返事がまだで………。」

 はぁーとため息を付きそうな、目を僕に向けてくる。呆れてる?

「まって下さいとか言われたの?」

「いえ。」

 先輩は軽いトーンで聞いてきた。そして僕が答えると、軽い蔑みを含んだ表情になる。

「お前…まさかメールで告白した?」

「はい…なんでわかったんですか?」

「あぁお前の雰囲気で大体わかる」

 呆れた表情に変わる。

「会う勇気がなかったんです」

 やっぱり会わないとダメだったのかな。

 先輩は誰がどうみても残念な人をみる目で僕を差してくる。

「やっぱり…何か不味かったですか…」

「うん、不味いことしかないな。」

「やっぱりですか………」

 僕は肩を落とす。ああ、やっぱりもう無理なのかな。

「いつ告白したんだよ。」

 先輩は容赦なく訊いてくる。

「え…と…20日です。」

「二日前か。」

「………もう可能性ないですよねぇ………」

 2日、この2日間はとても長く感じた。口に出すと、意外なほど時間が経っていない事に気がつく。もっと長く感じたのに。

「……いやまだわからんぞ」

 少し目線を下げ腕を組み考えてから先輩はそう呟いた。

「本当ですか!?」

「もしかすれば今の今までずーっと悩んでいるかもしれん。もしかすれば言いたいけど切り出すきっかけが無くて手をこまねいているのかもしれん。」

 その言葉を頷きながら噛み締める。

「なんか元気出てきました。」

 少し、希望が湧いてきた。今なら、さっきまでの暗い感情を払拭出来るかもしれない。

「まっ、今現在彼女のいない非リアの想像だがな」

 この先輩が素直に人を持ち上げる人では無かったということすっかりと忘れていた。

「………元気なくなりました………」

 また気分はドン底に。

「まぁあれだ、女心は男には理解出来んのだよ。いまも昔も」

 余りに元気を無くした僕を流石に哀れんでくれたのか、先輩はかなり話をずらしてくれた。

「いろんな人が言いますよねそれ。」

 先輩の言っている事はとても良く聞く言葉だ。

「いろんな人が経験してるからだろう

よ。」

「何人ぐらい居るんでしょうね」

 口に出してから、返答の難しいことを言ってしまったと気付く。

「星の数ほどいるんじゃないかな」

 先輩がぶっきらぼうに答える。100点満点の答えだ。

「あ、なんかそれ格好いい」

 何故か、声のトーンが上がった。気分も少し良くなった気がする。

「そうか?」

 先輩は笑いかけてくれた。

「僕も言ってみたいですよそんな台詞」

 少しだけ立ち直る事ができた。言葉数も気持ち、増えた気がする。気を紛らわしてくれた。

「あの台詞は確実にリア充のみにしか言えない言葉だからな」

「何でですか?」

「…俺ら非リアにはあんな歯痒い台詞身が悶えるくらいに言いにくいんだよ。どうせときめいてくれる人なんて隣に居ないんだから……………」

 立ち直った僕の代わりに、今度は先輩がドン底に落ちそうになっていた。

「も…悶えてますね先輩……」

 頭を抱えて顔を赤くしていた。自業自得といえばそれまでなのだが。先輩が立ち直らせるにはどうすべきか考えていると、

「あ、もうこんな時間だ。お前、上がる時間だぞ。」

 たまたま時計が目に入ったのだろう。急激に立ち直った。変わり身の早さも、この人らしい。

「え?あ、本当だ。では先輩お先に失礼しますね」

 先輩ほど早く切り替わる事が出来なかったので一瞬驚いた。さて、帰り支度をせねば。

「おう、気を付けて帰れよ。」

 裏へと向かう僕に向かって先輩は手を軽く振っていた。




 支度を終え、帰路につく。町は聖夜に向けて準備が整っていた。カラフルな光があちらこちらで輝いて、今にも雪が降りそうな上空5000mの大寒波を待ち構えていた。

「息が白くなるんだもんなぁ。」

 本当にやめてほしい。この時期にこの強さの寒波が来たら、ホワイトクリスマスになってしまう。バイトに行くのが大変になるだけだ。手袋をした手をコートのポケットに突っ込んで、マフラーで顔の半分を隠しながら、とても充実した街を行く。

「ん?」

今どこか、振動したような気がする。3回ぐらい。発信源はスマホしかない。

「メールだ。誰からだろう……」

 寒い中、手袋を外すのには抵抗がある。画面を付けて誰かだけ確認して、急ぎではなさそうなら帰ってからでいいか、スパムかもしれないし。うん、そうしよう。

 そう思って画面を付けた僕は、次の瞬間何の躊躇も無く手袋を外していた。









プルルルル プルルルル ガチャ


「あ、もしもし。先輩ですか。オーナー居ますか?…………居ませんか……え?いやあの…休みを取りたくて…………ハイ………24日です…………りっ理由ですか!?…………実はついさっき僕に春がやって来たんです............ありがとうございます......失礼します。」


 ホワイトクリスマスにならないかな。

先に書いてあるように、もともと脚本として用意したものです。そのため随分と変だったりおかしなところがあるかと思います。その辺はどうかご容赦ください。

更に付け加えますと、元の脚本が勢いで1時間程で書いてしまったものですので、なんのメッセージ性もありません。

どうかご勘弁を

 

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