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外道勇者  作者: ナハハ
1/2

 魔法使い、上京する。

 私は今、夢の一歩手前にいます。そう、あの勇者様の御一行に入れるかもしれないのです。昔からの夢でした、5年前に魔王が現れて世界はおかしくなってしまいました。今まで見た事ないような生物、『魔物』が世界を闊歩するようになり人を襲いました。でも人も負けてはいません。


『魔法』


 人々は魔法を駆使して魔物と戦いました。しかし、魔物たちも『魔法』を使い戦いは今も続いています。


 そして私、『マホ・ツカイエル』は現在開発された魔法の殆どを習得しました。何故なら最初に言いましたが勇者様の御一行に加わりたいからなのです。そう、栄光ある勇者様の御一行。そこに私は入りたいのです!ずっと夢でした。魔王を倒すため立ち上がった文字通り『勇敢なる者』勇者。私はその勇者様のお役立ちになりたくて必死に修業しました。 そして、今日この日。私はこの勇者様が滞在しているという『ウダエラ王国』の首都『イゾー』に来ているなのです!

 私は門番さんに門を開けてもらい、イゾーに入りました。そして第一に思ったこと、それは……


「人が多い……」


 私、実はあまり人とお話したことがなくて、こういう人が多い所は苦手なのです。で、でも諦めませんよ!ここまで来たんですからなのです!

 取り敢えず、勇者様に会いたいのですが……。お城に行けばいらっしゃるのでしょうか?悩んでも仕方ない、私は城へ向かうことにしました。しかし、そこで一つ問題が発生なのです。


「お城、どこあるんでしょう?」


わ、私としたことがお城の場所を調べ忘れちゃいました!この街はとても大きいのでお城を探すのも一苦労なのです。どうしたらよいでしょう……?

 しかし、神はそんな私を見捨てていませんでした。優しきお方が私の肩をポンポンと叩いてくれたなのです!きっと、困っていた私を見かねて声をかけてくれたのでしょう!なので、私も最高の笑顔で振り向きます。


「すみません、実は私迷ってまして……」

「お金寄越せやこら」


 師匠、都会って怖い。


「ふ、ふええええ?」

「いいから黙って金をよこせや。あん?このナイフが見えねえのか?」

「え、えええええ?」


 この街で最初に私に声をかけてくれた人は優しき住人ではなく、悪しきチンピラでした。オウ、何てことでしょう……。しかし、ナイフですか、なのです。ふむ、残念ながらその程度では私はビビりませんよ?何せこれからは勇者様御一行と旅をするなのです!しょうがないので私は簡易な電撃魔法で気絶させることにします。


「サンダー……」

「邪魔じゃボケェ!」

「ぐえ!?」


 ち、チンピラさん!?チンピラさんは突如後ろからやってきた男に殴られて伸びてしまいましたなのです!?し、しかも、この男。ツンツンの金髪、逆三角形の鋭い目。だらしなく着崩した服。こ、これはまさか!?チンピラさんの上位、不良さんなのですか!?こ、こうなれば最上級の電気魔法で……


「おい、大丈夫か?」

「は、はい?」

「いや、ここはイゾーの中じゃだいぶ治安が悪い方だかンな。お嬢ちゃんみたいな、ちっちゃい子が来たらダメだゼ?」

「ち、ちっちゃい?」


 どうやら、この不良さん私を助けてくれたらしいなのです。し、しかし……ちっちゃいとな!?


「て、訂正を願うなのです!私は20(ハタチ)です!お嬢ちゃんじゃありませんなのです!」

「は?いやいや、冗談きついゼ?」

「じょ、冗談なんかじゃないなのです!な、なんなら調べてみても構わないなのですよ!?」


 私は自慢の胸をボーン、と張ります。どうですか?私の可愛さに惚れちゃっても構わないなのですよ?


「自慢の胸?胸なんて、どこにあンだ?」

「カッチーン、もう怒りました!いいでしょう、では酒場で勝負です!」

「へぇ、もしかして結構いけるの?」

「無論なのです!私の飲みっぷりに驚いても知らないなのですよ!?」

「おう、じゃ行こうや」


 私はズンズンと指さされた酒場絵と向かいますなのです。頭はちっちゃい子扱いされたことで沸騰しそうでした。ですから、気づかなかったのです。不良さんがニヤリと笑っていたことに……。








「それでですねー、師匠ったら酷いんですよぉ~?」

「おうおう、そりゃ大変だ」

「ふふふ~、いい気分なのですぅ~」

「そっかー、そりゃよかったな」

「はぃ~」


 むふふ~、不良さん。話せば分かる奴なのですよ。私の師匠がどれほど酷い奴かちゃんと聞いてくれてるなのですぅ~。


「おっと、悪いな。ちょっくら、小便行ってくるわ」

「む~。れでぃの前れ、小便はいけまへんよぉ~」

「はいはい、すぐ戻るから……」

「は~い」


 おや、中々帰ってきませんね?もしや、小便というのは嘘で実は大きい方だったなのですか?私は言ってくれれば、気にしないのに。あれ?私はれでぃ~なのですから、気にしなくちゃいけない?あれ?れでぃ~は誰?私は……





「はっ!」


 トン、と肩を叩かれ目が覚めました。どうやら私は眠ってしまったようなのです。起こしてくれた不良さんに感謝すべく振り返ります。


「あの、起こしてくれてありがとうござ――――――」

「もう、閉店だ。帰ってくれ」

「……」


 不良さんじゃありませんでした、いかついヒゲのおっさんでした。


「へ?」

「もう閉店なんだ、さっさと勘定済ませて帰ってくれ。俺は明日のために掃除しなきゃいけねえんだ」

「す、すみません……」


 どうやらここの店主さんらしいなのです。確かに窓を見てみればもう外はとっぷりと日が暮れて人気(ひとけ)はありませんでした。私は急いで席を立ちカウンターへ向かいました。レジでは可愛らしい少女が笑顔で待っていてくれてます。


「8000G(ゴールド)になります」

「はいなのです」


 私は懐から財布を、財布を…財布を……財、布を………


「ない!」

「お客様?どうかいたしましたか?」

「ちょ、ちょっと待ってくださいなのです!いま!いま財布を出しますから!!」


 服のポケット、カバンの中全部探しますが見つかりません。どういうことなのでしょう?


「ま、まさか……」

「お客様?」

「すみません!私と同じ席にいた……あの、目つきの悪い人を知りませんかなのです!?」

「へ?ゲドーさんですか?」

「知っているなのですか!?」


 思いつく限り彼しか私の財布を盗める人はいないのです。いや、確かにグースカ寝ていたので彼とは限らないなのですが……。


「嬢ちゃん、さてはアイツにやられたな?」

「お父さん?」

「へ?」


 後ろから声をかけられ振り返れば先ほどの厳ついおじ様。おじ様は私を見下ろしながら疲れたように笑いました。


「あいつはここらじゃ有名なチンピラよ。アイツがやる手法として、この街に新しくやってきた新入りをたぶらかしてここで酔わせ、金を盗む。その舞台になるコッチもたまったもんじゃない……」

「じゃ、じゃあ……!」

「ま、お前さんがあのアホと飲んでたんなら十中八九そうだろうさ」

「そんな……」

「どうする?こっちもタダで酒をやるつもりはねえ、嬢ちゃんからも酒の匂いがするし飲んだんだろ?タダ酒はごめんだが鬼じゃねえ、皿洗いくらいで勘弁してやるよ」

「ふみゅう……お願いしますなのです……」


 結局この日、私は皿洗いを終えたあとこの二人の家に泊まらせていただきましたなのです。





「ふみゅう、昨日は酷い目にあったなのです……」


 街は相変わらず大きくて城が何処にあるかわかりません。取り敢えず中央広場の噴水でおじ様の娘さん(ルイダちゃんと言うそうです)に作ってもらったおにぎりを頬張ります。


「ちょうどいい塩気なのです……」

「よ!」

「ふみゅう!?」


 急に声をかけられ、おにぎりが喉に……!


「んー!んー!げほげほ!」

「おーおー、驚いちゃって。つか、嬢ちゃん無事だったんだ?」

「貴方は!昨日の不良さん!」

「んじゃ、改めて……。よ!元気?」

「元気もなにも、ここで会ったが100年目!消し炭になれなのです!」

「おわっと!?」


 バチィッと、私の放った電撃が不良さんを襲いましたがよけられました。ッチ!


「いやいや、そんなに怒んないでよ」

「怒りますなのですよ!貴方のせいで私は昨日、散々な目にあったなのですよ!?」

「はは!まぁ、生きてんじゃん?生きてりゃいいことあるさ!」

「貴方は死ねなのです!」

「きゃー♪こわーい♪」


 もう一度電撃を放ちましたがまたも避けられてしまいました。くーそー!!


「で、何の用なのですか?もうお金はありませんよ」

「はは、そう怒んないでって言ってンじゃん。今日はちゃんと城に案内しようと思ってきたんだよ」

「……、信じられないなのです」

「まぁまぁ、昨日のことは水に流してさ。いいじゃん、楽しく行こうよ?どうせ頼る宛てなんてないんでしょ?」

「ふみゅ……」

「じゃ、そういうことで。俺は『ゲドワード・キシューダ・マシウチー』、ゲドーでいいよ。お前は?」

「私は『マホ・ツカイエル』です……」

「そっか、んじゃよろしく」

「……はい、なのです」


 しかし、この出会いが私の冒険譚の始まりとはこの時は思いもしませんでした……。





 場所は移り、魔界。空は熱い紫色の雲に覆われ、絶えず雷が雨のように降り注ぐ。そんな魔界の中心にその城は建っていた。『魔王城』、かの世界を襲った魔族の王『魔王』が住んでいる城である。


「……」

「魔王様、そろそろ『勇者』が動き出す頃かと……」

「……そうね」


 魔王と呼ばれ振り返ったのは、美しい赤い髪と赤い瞳、真紅のドレスに身を包んだ少女だった。


「戦争を始めましょう」


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