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Trick and Trick

以前「」文庫様のハロウィンイベントに参加した際のハロウィンネタ小説です。

 この時期になると、決まって台所からは甘い匂いが漂ってくる。せわしなく動き回る亜美(あみ)。俺が彼女と結婚したのは三年前になる。

 思えば付き合い始めてからずっと、彼女はこの習慣を続けてきた。毎年作られる和洋様々なお菓子。だがそれは全て俺以外のやつに渡される。多分今年も俺の分などないのだろう。

 だから決めたのだ。今年は彼女に仕掛けてやるのだ。とっておきの''Trick''(悪戯)を。


「トリックオアトリートーッ!」

 俺が玄関を開けてやると、案の定近所の子どもたちが黒いのや刺々した格好で群がっていた。中には肩が()き出しの子までいる。寒くないのか?

「おにーさんこんにちはー。トリックオアトリートーッ」

「あぁちょっと待ってくれ。亜美なら……」

「あら、今年はお菓子ないのよ。困ったなぁ」

 突如として俺の背中から姿を現した亜美。多分一番驚いているのはどの子どもたちよりも俺だろう。

「えー、イタズラしちゃうぞー」

「ごめんね……」

 目尻を落として残念がる亜美。だが後ろ手に隠してある包み紙が丸見えだ。

「あー、それお菓子ー?」

「わーいお菓子ー」

「亜美おねーちゃんありがとー!」

 勿論子どもたちにもすぐに嘘は見破られた。というかずっと甘い匂いが漂いっぱなしなので絶対バレるのだが。

「もう、気が早いんだから。はい、今年はクッキーを作ったのよ」

 亜美が手を開くと一段と強く甘い匂いが広がった。彼女に群がる子どもたちに、俺まで思わず顔がにやけてしまうような甘い笑みを浮かべながら一人ずつ包みを渡していく。

 最後の一人まで渡し終わったとき、やっぱり彼女の手の中には何も残っていなかった。

「みんな来年もまた来てね」

「うんっ」

「行く行くっ」

「お菓子ー」

 子どもたちは口々に言いたいことを言いながら、夜の町へと消えていった。

 そう。亜美は、毎年こうやってハロウィンになると近所の子どもたちのために手作りの御菓子を振る舞うのだ。他の家ではそこまではしない。というより御菓子をあげる家など近所では聞いたことがない。

 それは恐らく亜美が子ども好きなのが影響しているのだろうが、毎年よくやると思う。それと同時に、何で俺にはくれないのかといつも不満に思う。いい歳した大人がそんなことを求めること自体がおかしいのかもしれないが、ついでにくれたっていいではないか。


 子どもたちが帰ってからははいつも通り、一緒に夕食を食べ、一緒に風呂に入り、二人で和やかな時間を過ごしていた。

 夜も更け、二人で手を繋いで寝室へと入った。いつもならそれからまぁ……イチャイチャして寝るだけだ。だが俺は決めていた。''Trick ''を仕掛けるのはこの時だと。

「亜美、今日は何の日だ?」

「今日って……ハロウィン?」

 小首を傾げながら答える亜美。その可愛さに悶絶(もんぜつ)しそうになるがとりあえず抑える。

「そうだよな。でも亜美は子どもたちにはあげても俺にはくれないよな、お菓子」

「う、うん……」

「じゃあ悪戯しちゃっていいのかな?」

「え……えぇ!?」

 慌てる亜美の肩を強く握り、半開きになった彼女の口目掛けて顔を近づけてーー

「んっ」

 息もつかせぬほどの濃厚なキス……をするはずだったのだが、何故か俺の口の中には柔らかくて、それでいて凄く甘い物が入っていた。

「えへへー。そう言うと思って今年は作ったの」

 満面の笑みを浮かべ、それでも足りなくて飛び跳ねて喜びを身体中で表現する亜美。俺はと言えば予想外の展開に口が開けなかった。

 いや、口を開いたらクッキー落としちゃうんだけどね。あっ、凄く美味しい。

「ところであなた」

 はしゃぎまわっていた亜美が不意に真面目な顔になって、俺は思わずクッキーを飲み込んだ。

「トリックオアトリートーッ!」

「……え?」

「いやだから、お菓子くれないと悪戯しちゃうぞ」

 なんたる不覚。まさか亜美からお菓子を求められるとは。勿論何も用意していない。

「いやゴメン。俺何もないわ」

「ふーん。そっかそっか……」

 亜美は俺の腕を掴むと、一気にベッドへと押し倒した。

「ふふっ、悪戯決定」

「あっ、ちょっと亜美……うわあああ!」

 今夜は寝られないかもしれない。亜美から極上の''Trick''(甘い悪戯)を仕掛けられるからーー

感想、批評等下さると嬉しいです。

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