トイレの百合子さん
私が初めて百合に挑戦した作品です。ガールズラブ描写がありますので、苦手な方は御注意下さい。
これは私が高校に通っていた頃のお話。
当時私の学校では、七不思議やこっくりさんといったオカルトなことが流行っていた。そういうのは大体ガセと相場が決まっているので私は何一つ信じていなかった。それは今でも変わらない。
けれどもアレだけは決してガセなどではなく真実だ。何しろ自分自身で体験してしまったのだからーー
トイレの花子さんを聞いたことがあるだろうか? 学校の怪談としては、二宮金次郎像や音楽室の肖像画並みにメジャーなアレだ。うちの学校にも当然彼女の話があった。
ただ、うちの学校に伝わる花子さんの話は、少し特殊だった。
花子さんと言えば、よく三番目のドアを三回ノックすると返事が返って来るっていうのが一般的だと思う。でもうちの学校では、そういった話は一切なかった。学校中の女子トイレの個室に無差別に現れ、入った女子生徒に悪戯をするといった、かなり信じ難いものだった。
流石にこの話は他のオカルト好きな子にも受け入れられず、皆ただの話のネタぐらいにしか思っていなかった。
かくいう私も、「それってただの変質者じゃん」と言って馬鹿にした記憶がある。
だがしかし、私は出会ってしまった。花子さんと呼ばれる少女に。
あれは委員会の集まりで遅くまで学校に残っていた日だ。日の短い季節だったので、やっと帰れるとなった時には既に外は真っ暗だった。
私は帰る前に用を足しておこうと、いつも使うトイレに入った。花子さんの話など完全に忘れていた。日が落ちているとはいえ、電気をつけてしまえばそんなことは気にならない。
私はのんびりと一番手前の個室に入り、鍵をかけた。紺色のスカートと1日穿き続けて少しよれてしまったパンツを下ろして洋式の便器に座り込むと、自然と息が洩れた。
半分くらい用を足したときだったと思う。突然股に違和感を感じた。かといって途中で放尿を止める訳にもいかずそのままでいると、滑らかな手つきで股を探られた。
とても細い指。それでいて的確に気持ちいい場所を突いてくる。用を足し終わっても違うものが込み上げてきて、私は便器の上で果てた。
彼女は息も途絶え途絶えになっている私の耳元で、オルゴールのような軽やかな声で囁いた。
「ふふっ、こんなに感じてくれて嬉しいな。また何処かで逢えるといいねっ」
私は何が起こったのか理解出来ず、しばらく便器に座ったまま呆然としていた。
それからのことは全く覚えていないのだが、気がつくと自分の家へと帰っていた。
私は後に卒業するまでに、三回彼女に出逢った。彼女の愛撫は回を重ねるごとに激しくなったが、不思議と嫌悪感はなかった。
トイレの花子さんの話には、「花子さんは必ず女の子にしか悪戯をせず、男の子に遭遇すると股間に鋭い蹴りをかます」とか、「花子さんに悪戯をされた子は同性愛に目覚める」といった逸話が加えられることもある。それもあって彼女は、『トイレの百合子さん』と呼ばれることもあった。
前者は私には分からないけど、後者に限っていえばそれは真実かもしれない。恋人の女性に指で責められながら、ふとそんなことを思い出した。
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