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蛍光灯

『蛍光灯』をテーマに恋愛小説を書きました。

 私は、お世辞でもいい女だとは思えない。私のことをいい女だと称するのは、所詮身体目当ての軽い男だけだ。かくいう私も、人のことなどいえないほど軽い。軽くて、安い。身体の交わりが愛情ありきだなんて思ってた純粋な私は、遥か昔に置いてきてしまった。


 私は、求められたら誰に対してでも身体を許す。LEDには劣る蛍光灯のように安くて大した輝きもない私を、身体だけとはいえ求めてくれる。それは当たり前のことではなく、私はそれを拒絶できるような、選べるような立場ではない。一度きりだとしても、求められることは私にとって悦びで、だから必ず受け入れる。「可愛い」「気持ちいい」という言葉を貰えるだけで、充分。「好き」だなんて言葉は一生貰うことなど、ない。そう思ってた。だが今私の目の前にいる冴えない男は、私に今確かに「好き」だと言った。彼の耳まで真っ赤に染まった顔が、聞き間違いだという考えをねじ伏せる。


「僅かな希望を込めて、今のは軽い冗談だと思いたいわ。本気だとしたら、あなたはどうかしてる」

「どうかしてるんだよ。君のことで頭がいっぱいになって、君の心が欲しくなる。これを恋と呼ばず、何を恋と呼ぶっていうんだい?」

 顔を真っ赤にして、伏し目がちになって、明らかに恥ずかしいだろうに、この男は臭いことを言う。真っ直ぐな気持ちを伝える。こんな目は初めて見る。

「何で……何で私なの?」

「傍にいると、落ち着くから」

 彼は気まずそうに頬を掻いて、はにかんだ。その顔がちょっぴり可愛いと思っただなんてことは、口が裂けても言うものか。

 しかし、何故私を。友達でいた期間が長く隠す気もなかったので、私の交遊については大体知っていているのに。こんなイカれた女のどこに、落ち着く要素なんてあるというのだろうか。


「私、結構軽いよ」

「知ってる」

「浮気するかもしれないんだよ」

「知ってる」

「全然綺麗じゃないよ」

「全然なんてことはないと思うが、まあ超絶美人ではないな」

「酷い。じゃあなんでこんな私をそんなに口説くの? そうまでしなくても、あなたならいつだって一緒に寝てあげるのに」

「君の心が欲しいから、かな」


 私の汚いところをさらけ出しても、全て躊躇することなく受け入れられる。こんな私の、身体だけじゃなくて心が欲しいと言ってくれる。私の胸が、滲むような暖かい気持ちで満たされる。初めて感じるこの気持ちは、きっと彼と同じなのだろう。

「もう……私重いよ。スパッと切れないよ」

「さっきと真逆のこと言ってんじゃん。ま、俺としてはそう簡単に切れない方がいいかな」

「……っ」


 彼に負けないくらい熱くなる顔を見られたくなくて、私の心を掻き乱す彼の胸に顔を埋めた。そっと腕を回すと、彼の体温を直に感じる。

 人に抱きつくのがこんなに気恥ずかしくて落ち着くことを、私は初めて知った。

恋愛書くの久しぶり過ぎて、十八番のはずなのに苦労しました……。

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