表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

Recollection

 ――数ヶ月後。――


 ――エルダー山脈。雷神トールが住むと言われている霊峰。その樹海の中で一人の少年が剣の鍛錬をしていた。背丈はそれほど高くはなく、琥珀色の双眸をしている。


 彼の名はアレン。エルダー山脈の麓にある、フィル村に住んでいる。


 五年前、アレンははエルダー山脈の頂上に倒れていた。偶然、薬草を探しに来ていたイーリスに発見されて、フィル村に運ばれた。

 アレンは自分の名前と、歳以外は何も覚えていなかったので、イーリスの提案により、村長の家(イーリスの家でもある)で暮らす事になった。


 イーリスは、ある雷鳴の轟く夜に、雷と共に降りてきた子供だという。

 その所為か、イーリスは魔術の中で最も難しい、雷の魔術が使えた。

 そしてイーリスは村長に、育てられ、健やかに育ち、神官になることを夢みて頑張っていた。


 ゆえに、彼女は「トールの愛娘」と呼ばれていた。

 イーリに命を拾われたアレンは、彼女を守れる「騎士」になるべく、剣の訓練に明け暮れた。


 あれから五年、十三歳になった今でも、アレンは剣の鍛錬をしていた。


 「はぁっ!せいっ!やあっ!!」


 ――もっと、もっと強くなって、イーリを守るんだ!――


 その一心で、剣を振るった。



 ――日の暮れる頃、頼まれていた薪を背負ってフィル村に戻った。

 村に戻るや否や、一人の少女がアレンに向かって駆け出してきた。


「こらーっ!アレン!」


 短めの金髪に、翡翠の瞳の活発な少女。


「げっ!?イーリ!?」


 俺はイーリから逃げ始めた。捕まったら説教だ。冗談じゃない。

 しかし、薪が邪魔でどうにも走れない。仕方なく家の影に隠れた。


「ハァ〜、危ない危ない。」


 イーリはアレンが鍛錬に行くのに反対している。だから隠れながら行くのに、 勘がいいのか、すぐバレてしまう。


「まったく、もう少しおてんばじゃなければなぁ…、」


 一人ため息をついてると、雷鳴が聞こえて来た。


 ――あ、まずい。――


 エルダー山脈は一年中雷が落ちるから、雷鳴は珍しくはない。でも、それにしては、あまりに近すぎる。アレンが恐る恐る振り返ってみると――


「アーレーン……」


 顔を引きつらせているイーリがいた。


「天誅ー!!」


 落雷が、また村に焦げ跡を増やした。


 ――夢を見ていた。赤子を抱くエルフの女の人と、それを見守る男の人がいた。幸せそうな家族だ。そんな記憶の無い俺はよくわからなかったけど、とても幸せそうな家族だった。――


 気がつけば家の中にいた。まだ少し、体が痺れる。


「やれやれ、まったくイーリには困るぜ。毎度毎度雷を落とされる身にもなれってんだ…」

「何よ、まだ足りないの?」

「おわっ!?」


 アレンが寝ている部屋の前にイーリがいた。


「い、いつから居たんだよ!?」


「何を今更…私の家なんだけど?」


 やや怒りぎみのイーリが、アレンを見つめる。


「アレン。言ったでしょ?樹海には行かないでって」


「あそこじゃなきゃ、鍛錬出来ないだろ」


「だから、それをやめてって言ってるの!どれだけ心配してると思ってるの?」


「子供扱いすんな、俺より年下の癖に」


 イーリは十二歳。アレンより年下ではあるが、アレンを運べるほどの怪力を持っている。アレンからすれば、お転婆姫なのだ。


「子供じゃない。しかも精神は幼稚だし」


「なんだって!?」


「なによ!?」


 互いに睨み合うアレンとイーリす。最近はこんな事ばかり続いている。いつからこうなったかは、アレンは忘れたが、とにかくよく言い争いになってしまうのだ。


「とにかく、樹海には行かない事!いい!?」


「はいはい」


 アレンは仕方なく、おざなりに返した。そもそも、アレンに鍛錬をやめる気など全くないのだ。


 そんな事よりアレンはどうしてか、さっき見た夢が気になった。あんな幸せそうな家族とは、関係がなさそうなのに、頭から離れなかった。


 その夜は、もう一度あの夢をみれないかな、なんて考えながらアレンは眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ