『聖女現る』
リリアはダンジョンの入り口で、地図を逆さに持ったまま得意げに叫んだ。 「よし!この地図によれば、宝物はすぐそこだ!」
……もちろん、地図は上下逆。仲間のスライム・ぷる太がぷるぷる震えながら突っ込む。 「リリア、それ出口方向だよ……」
「えっ!?じゃあ宝物は出口にあるの?なんて親切なダンジョン!」 リリアは目を輝かせて走り出すが、すぐに石につまずいて派手に転んだ。
その拍子に床の仕掛けが作動し、壁から矢が飛び出す――が、全部リリアの頭上をかすめて天井に突き刺さった。 「ふふん!私の計算通り!」 「絶対偶然だよね……」とぷる太はため息をつく。
だがその先には、巨大な宝箱が鎮座していた。リリアは胸を張って近づく。 「見たかぷる太!私のポンコツ戦術が功を奏したのだ!」
宝箱を開けると、中から出てきたのは――
……大量のジャガイモ。
「えっ……宝物って、食料庫だったの?」 「まあ、リリアにはぴったりだね。ポンコツ冒険者の主食!」 ぷる太の皮肉をよそに、リリアはジャガイモを抱えて満面の笑みを浮かべるのだった。
リリアがジャガイモを抱えて喜んでいると、背後から澄んだ声が響いた。 「……そのジャガイモ、神具の修理には使えませんね」
振り返ると、聖女のようなオーラをまとった少女が立っていた。年の頃は十代後半、純白の神官服に身を包み、背には大きすぎるリュック。そして手には――場違いなほど巨大なつるはし。
「わ、わぁ……聖女様?」リリアは目を丸くする。 「私はマリー。教会の神具を壊してしまって……修理の素材を集めに来ました」 そう言うと、マリーはつるはしを軽々と肩に担ぎ、岩壁を一撃で粉砕した。
「ひぃっ!?大男並みの怪力!」リリアが叫ぶ。 「素材は力で掘り出すものです」マリーは涼しい顔で答える。
探索を続けるうち、魔物が現れた。牙をむくオークが突進してくる。
「きゃー!」リリアが慌ててジャガイモを投げるが、効果はゼロ。 その瞬間、マリーの瞳が冷たく光った。 「……邪魔です」
つるはしが振り下ろされ、オークは一撃で粉々に。さらに次々と現れる魔物を、マリーは過剰な殺意で殲滅していく。聖女のオーラはどこへやら、まるで修羅のごとき姿だった。
「こ、怖い……でも頼もしい……」リリアは複雑な気持ちで見守る。
やがて素材集めは完了し、マリーは依頼料を受け取ると静かに言った。 「これで神具は修理できます。……あなたのおかげで助かりました」
「えっ、私何もしてないけど……」リリアは苦笑い。 「ジャガイモを投げてくれたでしょう。それも立派な援護です」 そう言ってマリーは微笑み、ダンジョンの出口へと去っていった。
リリアはジャガイモを抱えながら呟く。
「ポンコツは私だけじゃなかったんだなぁ……」




