第2話 〜井墨瀬ヒカリの新しい日常〜
とりあえず、異世界転移するまでは投稿します。
多分あと1話くらい。
ではどうぞ、お楽しみをっ!!
現在、夜の21時59分37秒。集合時間までなんときっかり23秒前。ヒカリはとある森の入口に到着する。
「みんな〜おいっす~」
「おいっす〜。じゃ、ないわよ。まあ、いつもの事だけれども」
「さッッッッすが先輩!指定の時間ギリギリに来るなんて、そんなこと!先輩しか出来ませんよ〜」
「何それ煽ってる?褒めてる?」
「そんなの決まってるじゃないですか。どっちもですよ!どっちも!」
「ははは……あ、あれ?そういえば、タマさんは一緒じゃないんですか?」
「あれ?現地集合って言ったけど……まだ来てないのか……な?」
「まぁ、あの子のことだからね、忘れてる可能性あるかも。ヒカリさん、タマモさんと連絡取れるかしら?」
「は~い、ではでは失礼して……」
プルルルルルルル…………ピッ。
「あ~もし?まもちゃん?」
「もし。ねえ、今どこいるのヒカリ?寝坊?また?それに……フフフ、今日は私が一番。まだ誰も来てない」
(な~に嬉しそうにしてんのさぁ、この子は……)
「な~に言ってんの……まもちゃん今どこ?」
「ん、山の入口」
「入口?でも……あ、まさか南側の?」
「そだよ」
ったく……あれほど打ち合わせしたのにも関わらずこの子は……。そんな、嘆きに近い意を込めた深いため息とともに、呆れた声でその情報を正してさしあげる。
「はぁ……いい?まもちゃん、落ち着いて聞いてね?集合場所は…………北の入口だよ?」
「え?そだっけ?私は南って聞いてたけど」
「ほんと?ほんとにほんと?」
「うぅ……多分。そんな気がするような……無いような……言われてみれば…………そっちだったかも……」
「でしょ?で、どうする?今からこっち来る?」
「いや、めんどくさい。から頂上で待ってる。どうせ集まるのなら一緒でしょ?」
(でぇたよ。ミスマイペース。何のためにわざわざこんな夜中にみんなで集まってるのさ……)
「ん〜……、分かった、OK!みんなには伝えといて差し上げますよ!もう!んじゃッ」
ヒカリはスマホをしまい、みんなに報告をする。
「ってことらしいです!」
「「「……………………」」」
ヒカリと他の三人は、首を傾げて黙って目を合わせる。
「……あなたねぇ。いまの会話、私たちに聞こえてたと思う?」
「でぇすよねぇ」
その後、今の電話の内容をサクッとみんなに伝える。
「なるほど……。でもこんな夜にひとりじゃ危ないし……。うん。私、今から南に向かうわ。みんなはそのまま頂上で待ってて。後ヒカリさん、タマモさんへの連絡お願いするわね?」
「は〜い」
ケイはそう言うと、近くに止めてあった自転車に跨り、暗い一本道を進んで行く。
・
・
・
「じゃ、そう言うことで。ケイさんのこと、ちゃんと待ってあげるんだよ〜」
「うぃ」
「ほんじゃ〜」
パタンッ。
「まもちゃんにも連絡したし。私達もぼちぼち行きますか〜!!」
「は〜い!」
「は、はい」
こうしてヒカリ、サギリ、ミサオの3人は、暗い暗い森の中へと進んでいく。
森の中は全く手入れされていないのか、草は生い茂り、見たこの無いような花まで咲いていた。それに……。
「せ、先輩……?今喋りました?」
「いや?何も喋ってないよ?」
はっは〜ん。さてはこの娘、相当怖がってるな?普段と違って敬語が出ているあたり、ほぼ間違いないだろう。そんなればやることは1つ。
「ねねっ……さぎりちゃん。」
ヒカリは、沙桐にコソコソの何かを話す。
「なるほど……、はい。分かりました♪」
流石は私の後輩である。実はこの娘、真面目そうな見た目に反して、ものすごくイタズラ好きなのである。
「では失礼……」
そう言うと、沙桐は茂みの奥へと消えていく……。その後しばらく歩いていると、操は違和感に気付く。
「せん……ぱい……?」
「ん?どしたん?」
「い……いや、さ、ささ、さぎりが……。いない……です…………」
「そういえば先輩言ってたもんな……。この森、幽霊が人を攫うって」
カタカタカタカタカタ……。
お?この調子なら……。その後もヒカリの後輩いじめ(仮)は続く。
「そして……」
「そして?」
「さらわれた人は魂を抜かれて……」
ゴクリ……。
「体を乗っ取られるんだって……。そう。あんな風に……」
ヒカリの指さす先には、メガネをかけた1人の美少女がいた。
「ミサ……オ……ちゃん。助け……」
「「あ、あああ、ああ…………」」
そんな2人の様子に、サギリは首を傾げる。まあ、2人というか、主にヒカリに対してだ。
「ミサオちゃんは……ともかく。なんで先輩まで?」
「えぇっとねぇ……。サギリちゃん、落ち着い聞いてね?いい?」
「は、はい……」
「後ろ、見てみ?ゆっくりね?」
「後ろ……ですか?」
サギリはヒカリの指さす方をゆっくりと見る。するとそこには、この世の生き物とは思えないクマのような巨大な何かがいた。
「………………は?」
「とりあえず、逃げよっか。」
「どどど……どうやって……。」
「とりあえずほら、ゆーっくりこっちに、ね?」
「は、ははは……。はい……。」
ヒカリに返事を返すと、沙桐はゆっくりとヒカリの元へと移動する。
「あぁ……。すみませんねぇ。わざわざ待って貰っちゃって……。じゃあ、どうせなら……」
グガァァァァァァッ!!!!
「「「ですよねーッ!!!!」」」
熊?のような巨大な生物の咆哮に合わせ、ヒカリ達3人は全力で走り出す。
「なな、なんなんですかあれ!先輩!?」
「そんなん私が知るわけないでしょうが!」
「とりあえず逃げましょう!!」
すると……。
パシューーンッ。
どこからかともなく謎の光が怪物を襲う。しかしあれはなんだったんだろう。どうも現実の物とは思えない不思議な光だった。
「今のなんだろうね」
「そんなのいいですから!ほら、あの熊さんも怯んでるみたいですし、さっさと行きましょう!!」
こうして3人は、森の頂上目指し走っていく。
「ったく。あれほど行くなっていたのに……」
「やっぱり、もっと強く止めるべきだったんじゃない?強引にでも」
「だよなぁ。んじゃ行きますか」
「待ちなさい」
「ん?あんたは……」
「これは、あたし達の世界の問題。だからお願い、このまま行かせて」
「でもいいの?あの子達、死ぬかもしれないのよ?」
「それなら心配要らない。だってあの子達は……だから……」
・・・
一方その後のヒカリ達はと言うと……。
「いやいやいやいや!何ここ!?本当に日本!?」
「こんなの聞いてないよ!」
謎の光に助けられて何とか逃げ切り、しばらくは見つかることなくやり過ごしてきた。一旦逃げようかとは思ったが、気になるのはやはり珠萌と先輩。私一人で行くとは言ったが、私の事を心配してか、この二人はここまでついてきてくれた。本当は身の安全を優先して帰って欲しかったが、言ったら聞かないのがこの二人。一体誰に似たんだか、まさか私ではないよね?とまあこんな感じで山頂付近までは来ていた。
「タマモさん、ケイさん。無事なのでしょうか……。」
「サギリ、アンタ以外と余裕なのね。」
「まぁ。今のところは。さっきのクマみたいな大きいやつさえ来なければ、はい」
「サギリちゃん……。それ多分言っちゃダメな……」
すると案の定…………
グルオォーーーーーーーー!!
「「やっぱり!」」
「やっぱり?」
「いいから逃げる!」
誰かさんがおっ立ててくれたフラグのせいか、お決まりの展開へと発展する。周りには木が生い茂り正直歩くのは無理そうだ。下りの方にはあの化け熊。逃げる方向は整備されたのぼり道一つ。
「二人とも!苦しいだろうけど走るよ!!」
「「はい!!」」
こうしてあの頂上、もう視認できるほどまで近づいた、元々の目的地まで走る。
(あそこまで行けば、何とか開けた道に出る……そうするれば何とか二人は助かるかも……)
……そう。勿論、自分が犠牲になれば、だ。果たして自分にそんなことができるのか?自分の命を投げ出してでも、そんな大層な選択ができるのか?迷っていても仕方がない。今は取り合えず全力で進むしかないのだ。それ以外の心配などあそこまで行ってからでいい。余計なことは考えず、ただただ真っ直ぐ全力でこの道を駆ける。
はぁはぁはぁはぁ………………
頂上まで後目と鼻の先。
(後、もう少し!!)
だが何故だろう。この胸の奥底に感じる不思議な違和感。そして、何となく。ただ何となく背中に感じる、ずっしりとした重みに、どこか懐かしさを覚える。
(そういえば、なんで私たち。この山頂を目指してたんだっけ?)
そう、なぜ自分達は今、この目の前にある山頂を目指していたのか?それは集合場所へと集まるためか……はたまた、マモちゃん達も同じ目に合ってるかもしれないから?
よくよく考えればそんなわけが無い。普通、こんな事態に会っていれば逃げる。それが当たり前のはずなのだ。だが何故だろう。私どころか、ここで着いてきている2人。サギリとミサオですら、そのことについて何も疑問は抱いていない。それどころか、3人とも不思議と足が進んでいたのだ。
それは何故なのか、人の心配?パニクっていたから?約束だから?違う。多分そんなんじゃない。きっとそう。この胸の奥底から溢れてくる、この不思議な気持ちがそうさせていたのだろう。それは、興味……いや、探究心に近い何か。この先には、今までとは違う何かがある。何故だかよく分からないが、そう確信するような、そんな不思議な感覚。
正直なところ、この化け物から逃げている事だって、ただの理由付け。逃げ口上なのかもしれない。だってしょうがないでしょ。それが私の望みなのだから。この退屈な日常から脱却できる、最後のチャンスなのかもしれないのだから。
そんな淡い期待を込め、最後のラストスパートを掛ける。そんな時だった。あの光が現れたのは……いや、どちらかと言うと闇か……。
突如現れた、おぞましくドス黒い漆黒の闇。それはそう、こんな夜中でさえも、ハッキリと黒を視認できるほどの漆黒。
(なに……あれ……)
振り返ると、先程まで追いかけていたあの化け物はもう居ない。目の前へと迫り来るそれは、一瞬で私の体を包み込む。
(うグッ…………くる…………しぃッ…………)
一体なんなのだろうか、この闇は。ずっしりと感じる重みと共に、心臓が握る潰されるような感覚……。薄れゆく意識の中、後ろからも2人の苦しさが漏れ出すうめき声が聞こえる。
「……ギ……チャ……サオ……チャ……」
あまりの苦しさに上手く声が出せない。
(なんで……こんな…………)
クチャッ……………………
なんの音?この体の中から響いた音は何?頭ではそう考えているものの、何となく察しは付いている。あぁ……もう私死ぬんだ……。とってもとっても、退屈でつまりのない人生でございました。そんな後悔に似た憎しみを抱きながら、この闇に身を任せながら意識を失うのであった…………。
お楽しみいただけたら、観劇の極みです。
とりあえずもうひとつ投稿してる方に集中したいと思うので、どうぞよろしくお願いします。