とても近い場所にいたはずなのに
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小学生のある日の放課後。
隣の家に住んでるマナちゃんと僕の部屋でいつものように笑いながら宿題したり漫画読んだり。
マナちゃんは可愛くて頭も良くてスポーツ万能。
綺麗な肌と長い色素の薄い髪色でお人形さんみたい、なのに明るい性格で天真爛漫な彼女は女子からも男子からも人気が高い。
たまたま家が隣同士じゃなかったら僕とは全然接点なかったのかも。
だから僕が抱えている秘密の気持ちが胸をしめつけてきたりするんだ。
「ユート。 今日も見ててあげてもいいよ!」
「マナちゃんはゲームみてるだけでも楽しいんだね」
「別に、ユートと一緒だったらなんでも楽しい……わけじゃないんだからね!」
「僕はマナちゃんと一緒だったらなんでも楽しいけどなぁ」
「〜〜!! 嘘つき! ユートはそうやっていつも適当な事ばっかり言って!」
嘘じゃないんだけど、マナちゃんにはいつも伝わらないだよなぁ。
パクパクと口を開いたら閉じたりして適当な事を言うなと怒りを露わにするマナちゃん。
これ以上怒らせないように『ソロモンキー』を起動する。
ウチにあるゲームはソロモンキーだけ。
史上最高難易度の高いゲームだとお父さんが言ってた。
ゲームなんてこれしかないのに全然クリアできない。
新しくゲームを買い与えるのが面倒で絶対にクリアできないやり込みゲームをあてがわれてるだけなのかもしれない。
ウチあんまり貧乏な感じはしないし。
考えごとをながらやっても、集中してやってもソロモンキーは敵に阻まれて何度も死んでしまう。
「全然クリアできないね」
「うん」
「このゲームって『クリアできたらなんでも願いが叶う』っておじさん言ってたけど、本当かしら?」
「お父さん適当だからなぁ。 まぁ話は半分に聞いといた方がいいよ」
「その割にユート真剣じゃない? 叶えたいお願いがあるの?」
「あるよ」
切実に真剣に叶えたい事が。
「どんなお願い?」
「マナちゃんには秘密」
「な!? 私はユートに秘密があってもいいけど、ユートは私に秘密があっちゃダメなの! 言って!」
整った眉がへの字に見えるほど顔をひきつらせてる。
この理不尽さもマナちゃんの魅力の一つだけど言えるわけがない。
「言わない。 ゲームクリアできたら言うよ。 それよりマナちゃんの秘密って?」
「い、言うわけないじゃない! ユートのバカ! 適当マンの息子!」
「……お父さんと違って適当じゃないから言えないんだよなぁ」
そう、簡単に言えるわけがない。
僕はマナちゃんの事がずっとーー
◇
高校三年の夏の放課後。
部活帰りの帰り道だが日が沈むのもすっかり遅くなって、まだ辺りは明るい。
通学路をいつも通り真夏と帰る。
周囲からは兄妹の様に思われていて、こうして一緒に登下校してるのに俺達が付き合ってるなんて噂は一切たたない。
真夏の方も「今日の夕飯なに食べる?」なんて聞いてくる始末だ。
ありがとう、真夏の作るカレーやら唐揚げは絶品だ。
でも違うんだよ。
「ユート? 考え事?」
ここ最近すっかり女の子らしく成長した真夏のキュート顔が俺を覗き込む。
かわよ。
じゃない!いや!かわいいけども!
夏祭りに誘おうと思ってたけど!
そん時いよいよ告白しようと決意してたけど、今は気になる事があるんだよ!
「真夏……バスケ部の門脇くんに告白されたの?」
「な、 なんでユートが知ってるの!?」
「マナミちゃんが拡声器使ってクラス中に広めてたよ」
「バカミ……なんてことを……」
門脇くんはイケメンで目立ちたがり屋。
女の子をとっかえ引っ換えしてるなんて話も聞くけど、サバサバした性格の真夏とはウマが合うみたいだ。
よく楽しそうに話してるのを見かける。
「門脇くんと付き合うの?」
「……ユートはどう思う?」
どう思うってなんだよ。
なんで俺に聞くんだよ。
思わず、真夏から目を背けてしまったけど、真夏が質問を続ける。
「バカミも、 門脇も、 学校のみんなは私たちの事を兄妹のように扱うけど、ユ、ユートはどう……思う?」
真剣な声色を感じて、そらしてしまった視線を真夏に戻す。
長いまつ毛を伏せて、不安が色濃く表情に出ている。
「門脇が……夏祭り一緒に行こうって言ってるけど……ユートはどう思う?」
その顔を見ても正直、真夏が何を言わんとしてるかはわからない。
でも、真夏が俺以外の奴を好きになるなんて……嫌だ。
「俺は……真夏と兄妹じゃない。 そんな風に思えない」
「う……ん」
あれ?
表現間違えたか?
真夏泣きそうになっちゃった。
でもずっと我慢してたんだ。
このまま突き進むしかない!
「俺はずっと真夏の事が……子供の頃から……」
「う……ん」
「子供の頃から……!」
「うん……」
さっきまで明るいと思ってたけど夕日が差し込み始めてる。
真夏の顔が真っ赤なのは夕日のせいじゃないよな?
「……は一旦置いておいて! 夏祭り! 明日夏祭りだろ! 俺と行こうよ!」
「う……? ん?」
日和ったーーーー!
超こえーーー!
「頼むよ! そん時かならず子供の頃から伝えたかった事言うからさ!」
我ながら本当に情けない。
こんなんほぼ告白してんのと変わんないし。
「門脇とは夏祭り行くなって事?」
「うん……そう、なるね……」
正直きちんと告白した門脇くんの方が立派だ。
幼馴染である事をいいことに、無理やり真夏の行動を制限しちゃってるし。
「ユートが私に伝えたい事があるから?」
「そう、だね。 絶対伝えたい」
だったら今伝えりゃいいのに。
明確に正しい答えがわかってても、それで言えてたらとっくに言ってるしここまで拗らせてない。
「ふふっ。 だったら今言えばいいのに」
真夏にも全く同じ事を言われてしまう。
俺の滑稽さがおかしかったのか、笑い声がこぼれてる。
「神社の裏だと花火もよく見えるだろうし、そ、そこで待ってるから」
「家隣なんだから一緒に行けばいいんじゃない?」
それは……そうなんだけど。
生まれてから真夏とは待ち合わせというモノをした事がない。
なんか昔から一緒に出かける時は家から出かけてお互いの両親に見送られて。
そういう所から所帯じみちゃうというか。
それでもはっきりと理由を伝えれない俺に真夏が助け舟を出してくれる。
「いいよ」
「え?」
「門脇には断っておくから……わ、私もユートと……行きたかった……し」
「それって……?」
「……絶対に行くからちゃんと待ってなさいよ」
身体を丸めて上目づかいで承諾してくれる。
頬が真っ赤なのは絶対に夕日のせいじゃない。
俺は嬉しさの余り心の中で感涙しながらガッツポーズを決める。
俺の様子が完全におかしくなり、同じ側の手と足を突き出しながら歩いて家まで帰った。
真夏はくすくすと笑ってくれていた。
俺は生涯この選択を後悔する。
もっと早くに気持ちを伝える事も、この時に気持ちを伝えていれば。
いつも通り一緒に家を出ていれば。
待ち合わせなんてもんをしなければ。
生まれた時から一緒にいて、近くにいて、思いを伝える瞬間なんていくらでもあったのに。
彼女が遠くに行ってしまったのは俺のせい。
だから、誰よりも自分を許す事ができない。
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