仕事仲間
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「わ! 守部先輩の顔の血色がいい!?」
汐留方面にある高層ビルのオフィススペース。
デスクにつくと隣で後輩の結城真冬が俺の顔色をみて驚愕している。
血色がいいなら驚くなよ。
「昨日は久しぶりに眠れたからね」
「炊事、洗濯、掃除全部引き受けてるんですもんね。 仕事もこなして化け物ですよ」
「……結城さんのそういう忖度ない所、 憧れるよ」
新卒で入ってきて俺のチーム管轄で育成することになった結城さんはショートカットが似合う快活な女の子だ。
無礼講と礼儀作法を上手に使い分ける彼女は男性社員からの人気も高い。
「褒め言葉ですよ。 社内のAIシステム開発で守部先輩チームが一番優秀って言われてますし。 私もそこに配属されてラッキーでしたよ」
「結城さんやチームのみんなが頑張ってくれてるからだよ。 俺はみんなの頑張りを正当に評価してもらってるだけ」
「みたいな感じで穏やかなのに、 社内プレゼンで最優秀の評価もらってきてくれるんだもんなぁ」
皮肉っぽくカラカラと笑ってはいるが彼女なりに褒めてくれているのがわかる。
勤務前に彼女と談笑するのは日ごろ留理の事でストレスMAXの俺には結構癒しだ。
「優しくて仕事もできて憧れの王子様が居ると思ったら、 そりゃあ奥さんの一人や二人いますよねぇ」
「二人いたら日本だと大問題だけどね」
こういう屈託ない所も彼女の魅力だろう。
「でも先輩ホントに今日顔色が良くてよかったですよ。 奥様と仲良くされてるんですか?」
「妻は友達と旅行中だから俺一人だよ」
「それでこんなに良くなるって……いえ、 なんでもありません」
口ごもらせてしまったし、言わんとしてる事もわかる。
実際熱海への不倫旅行中だから夫婦仲は最悪。
始業時間も近いのでそろそろデスクのPCを起動させて仕事に取りかかろうとすると瀧部長から声をかけられる。
「おはよう守部くん、結城さん」
「あ、おはようございます瀧部長」
「おはようございまーす」
瀧部長はいかにもキャリアウーマンと言った感じの仕事のできるパンツルックのスーツ姿が似合う美人女性だ。
俺たちのプロジェクトが正当な評価をもらえるのも彼女が上層部に根回ししといてくれるおかげだ。
「守部くん今日は随分と顔色がいいな? なにかあったのかい」
瀧部長にまで顔色の事を言われてしまう。
ちょっと寝れただけでそんなに変わるもんなのか?
よっぽど普段はひどい顔色なのかな。
「守部先輩の奥様が友人と旅行中だから羽を伸ばされてるそうですよ」
結城さんが可愛いらしい笑みを浮かべてくすくすと笑う。
やめてくれ。
夫婦仲は最悪だし、もう離婚寸前だがあまりその辺は立ち入られたくないんだ。
「ほう? そしたら今晩も奥様はいらっしゃらないのか?」
「まぁ、 そうですね」
部長の疑問に答えると鬱屈した気持ちになる。
今晩も妻はいわゆる『ゆうべはお楽しみでしたね』ってやつになるだろうからな。
「それなら今晩チームで食事にでも行かないか? 守部くんが先導してくれたプロジェクトに社内も期待してくれている。 懇親会的な予算も出ているんだ」
「いいじゃないですか! タダ酒が一番美味しいし!」
部長も結城さんとも何度かプロジェクトの懇親的な兼ね合いで何度か飲みにいった事はある。
二人ともザルでそこらの男性社員よりも強い。
普段だったら留理がいない日に一人でいると飯もノドを通らないので飲みは大賛成なのだが。
「せっかくですが、今日は予定がありまして。 よければ今度また誘ってください」
「奥様がいない日に予定なんて……女ですか?」
結城さんが冗談っぽく笑いながら口さがなく尋ねてくる。
「ちがう」と言いかけたが、実際女性と予定があるので返答に困ってしまう。
「ええ!? 奥様一筋の先輩が!? これは明日は大雪ですかね!?」
現在の季節は夏の始まり。
梅雨も明けて日照り続きの毎日に大雪などあろうはずもない。
「いえ、自宅でオンライン飲みですよ。 遠い場所にいる人と飲むので」
遠い場所とは言い得て妙かもしれない。
彼女は設定上故人だし、今や人気vtuber。
俺との接点は限りなく少ない。
残念そうにする部長と結城さんに謝罪して、俺はデスクワークに取りかかった。
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