エピローグ
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最終回です。
ご覧いただきありがとうございます。
◇
体が動かないの。
なんでかしら。
ユートがいる神社の裏に向かってたはずなのに、今はうつ伏せてる。
地面が泥で濡れてたのかしら。
全身がずぶ濡れになってるみたい。
嫌だなあ。
せっかくお母さんに頼んで浴衣着こんだのに、汚れちゃったらユートどう思うかな。
昨日誘ってくれた時にものすごく動揺してたから、気づかないかも。
そんなわけないか。
私の髪型、服装、ネイルにメイク、なんだったら私より私のこと気づいてくれてるんじゃないかしら。
ううん。
でも、私の一番大事な気持ちには気づいてないみたい。
変なところで鈍感なのよね。
だから、門脇みたいな男と話してるだけで心配になっちゃうのよ。
バカだなぁ。
でも、試すような真似してごめんね。
だってユート私の世話ばっかり焼いてくれるから、ホントは私の方が心配だったの。
私の髪の色が男の子にバカにされていじめられてたらユートがいつも助けにきてくれたよね。
『マナちゃんをいじめるな!』って。
あれ?
結局あの時はユートもいじめられちゃって二人で一緒に泣くはめになっちゃったんだっけ?
いつからか呼び捨てで呼ばれるようになってもずっと心配だった。
私が空回りしてバカミと喧嘩しちゃった時も、バスケ部の部費を巡って生徒会と対立しちゃった時も。
ユートがやれやれみたいな顔して先んじて解決してくれるんだもん。
あれが俗にいう『やれやれ系』ってやつ? 人気ジャンルなわけだ、普通にかっこいいもん。
そうよ。
ユートって誰に対しても優しいし女子からも人気高いのよ。
クラスの子も他のクラスの子もなんで私にユートの恋愛相談してくるの?
私、ユートの妹じゃないんだけど。
恋愛感情もってる相手に恋愛相談っておかしくない?
だから、不安になるのよ。
家が隣だったから、生まれたころから一緒にいるから、幼馴染だから、妹だから。
ユートが世話を焼いてくれる理由って何?
門脇には悪いと思うけど、昨日の慌てっぷりってそういう事だよね?
私一人の空回りだったんじゃないよね?
確かめたいの。
早くユートに会いたい。
待ってるよね?
でも、ごめん。
なぜか身体が動かないの。
あれ?
なんか男の子が泣いてる?
お母さんとはぐれちゃったのかな?
あれ?
あの子さっき車に……
それで咄嗟に身体が動いて……
あ。
嘘。
たまたま泥水でもあるところに転んじゃったのかと思った。
違う。
これ、全部私の血だ。
浴衣、水色系だったのに真っ赤に染まってる。
痛い。
痛いよユート。
ああ、でもあの子、お母さんに抱きしめてもらえてる。
よかった。
もう、はぐれちゃダメだよ。
運転手さんが何かいってる?
救急車?
まって。
声がでないの。
怖い。
このままユートに会えないの?
『絶対に行く』って言っちゃったの。
ユートがどう思っていても、今日、私も伝えるつもりだったの。
まってよ。
行きたくない。
私ユートの所に行きたい。
「ユー……ト……」
ユートに会いたい。
◇
「悪趣味だわ」
「だねぇ」
今更、死の直前の気持ちなんて思い出させられるなんて。
「忘れちゃってるかもしれないからさぁ。 期限? 分かりやすく言うと成仏ってやつ? 8月30日。 つまり君の誕生日までさ」
ロキと名乗る男神にツンデレ系vtuberに受肉させられて、バーチャルの仮想現実世界に来て一年近く。
現実ではあれから10年経ってるみたい。
「それでも、あなたのルールに雁字搦めになりながらも、私はユートを見つけたわ」
「あれは、 笑ったねぇ。 転生直後にとっくに見つけてたんだからさ。 なんのためにチャンネル登録20万人も集める必要あったんだろうねぇ? すれ違って期限ギリギリになるのもラブコメに必須な要素かなぁ?」
「あなた本当に神様なの? ラブコメとゲームが好きなだけの変人っていう方がしっくりくるわ」
「だとしても僕のラブコメ好きとゲーム好きのおかげで可能性があるんだ。 少しは感謝してほしいねぇ」
人を食った笑み。
事実、人を食べることもあるらしい。
「ソロモンキーをクリアして願い事を叶える人間を作り出すために、ホント大仰よね」
「シギュンが作ったゲームが人間界にあるせいで、あちこち恨まれててね」
「奥さんのためにがんばってるって言われなかったら、絶対に引き受けなかったわ。 ユートを騙すような真似」
「僕の能力はリスクを多く与えると強まるからねぇ。 おかげで君は幼馴染くんに正体を明かすことも生前の思いを伝えることもできない」
残忍性すら感じるこの男神も奥さんには尻に敷かれてるのかしら。
皮肉っぽく言われても、正直そこは好感もててしまうのよね。
「8月30日だよ。 こういうのシンデレラっていうのかな? それまでに幼馴染くんと共にソロモンキーをクリアできたら君を現世に戻すことだって可能さ」
「シンデレラはラブコメじゃないわ」
「僕にすりゃ人間の愛なんてコメディみたいなもんさ。 君たち含めてねぇ」
だとしたらやっぱり悪趣味だわ。
すべてコメディに捉える感性なんて。
「別に期限まで間に合わなくてもいい」
「へぇ?」
「私の事でずっと苦しんできたユートを立ち直らせれれば、 それでいい」
「あははは! 君たちのは特に滑稽だから、チャップリンだね」
人を食った、いいえ、食べた笑み
本当に悪趣味。
「人間の10年は長いよ。 真実を語る術を持たない君が、 あと1カ月足らずでどこまでやれるかは期待しているよ」
端正な顔立ちが余計、人をイラつかせる。
誰のせいで……いえ、チャンスをもらった事は事実。
ユートを失意のどん底に落とした私だからこそ、彼を救うことができるのは私だけなんだから。
◇
そこそこ高層階のマンション、自宅のベランダで青空を見ながらコーヒーを飲む。
メイマナと初めて限定配信をしてから一年。
季節はまた夏が来た。
結構色々あったな。
いや、大分色々あったな。
離婚直前に別居してた留理のテンプレートのようなストーカー化。
まぁ、今では逮捕歴もついて少しはおとなしくなったのかな?
塀の中では規則正しい生活をせざるを得ないだろうから、更生してくれることを切に願う。
警察沙汰になりかけて、慰謝料を払うためにベーリング海のカニ漁へと旅立った翼くん。
最後の情けだと、お父さんがサムズアップしながら紹介してくれたらしい。
瀧部長と結城さんのド修羅場も大変だった。
メイマナと限定配信しながら続けたソロモンキー攻略。
何度も、何度も、ソロモンキーは死んでいった。
それでも俺たちがあきらめる事はなかった。
そして、8月30日にメイマナと過ごした夏祭り。
俺たちはついに花火を二人で見ることができた。
うん。
やっぱり色々あった。
俺と真夏の事を許せと言ってくれたメイマナ。
傷つきたがりのみっともない俺を叱咤しつつも、時に優しく諭してくれた。
さすが自称同い年。
でも、実際のとこ俺の方が年上になるんじゃないのか?
「ユートー! ちょっとこっち来て―」
「はーい」
今日は休みだからな。
まだまだ時間はある。
どこかに出かけたっていいかもしれない。
真夏の青空が広がっていてすごく気分がいいから。
ここまで、お読み頂き本当にありがとうございました。
60分物の実写ドラマを作るような気持ちで当初プロットを作りました。
ですが作り始めると、どんどん話が膨らんできてしまって、入りきらない話はエピローグでさらっと回収となりました。
リメイクして設定残しつつ舞台を高校生に移したりとか、エピローグでさらっと回収した内容をしっかりと書き上げるか等、いろいろやりたい事はありますが、今のところ実際書くかは未定です。
感想で皆様のお声をお聞かせ頂けると幸いです。
改めてここまで読んで頂きありがとうございます。
少しだけ充電期間入ろうと思いますのでページ下部に私の別作品のURLがありますのでご覧いただければ重ね重ねで恐縮ですがうれしいです。
次回作もtwwiterで配信いたしますので良ければフォローお願いします。
https://twitter.com/kazuyurichihi
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