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登校初日

「さーくら、ちったら編入生、一人でいけるかな?隣に座るこどんな奴?友達になれるかな?」


学校説明会がお話あった次の日の朝、俺は渡された教材ともらった鞄、それに心地を手に今日から編入することとなる『吉祥異能学園』の通学路を歩いていた。


俺も転入


もらった地図を見た感じ俺の家から通える距離だった。

都心から少し離れた、あることは知っていたが一回も降りたことのない駅で降りる。

特に疑問に思わなかったがこの駅で降りている人って一人も見たことがない。


その最寄り駅から歩いて約20分あっけなく俺は学校にたどり着いた。


入り口である校門から見えたその建物に俺は唖然とした。


あのパンフレット詐欺である、写真とは全く違う校舎がそこにはあった。

改装したばかりなのか、建築したばかりなのかわからないが、歴史をこれっぽっちも感じさせない校舎。

何よりそれを守るように囲まれた巨大な壁。よじ登るのは不可能なほどツルツルである。

最新のセキュリティバッチリなんてお墨付きがしっくり来るほどの外装である。


さっきからこの壁なんだろうなって思っていたけど、まさか学校の柄だとはおもわねぇだろ、普通。


俺が通っていた公立高校は間違いなく普通の学校だっただろう。

それと比較するのもおかしいが、こんなに違うものなのか。

これが名家の人間も通う学校というものなのか。

さすが私立のお金持ち学園。


というか俺ほんとにここに入っていいのか?

間違ってはないな、ちゃんと『吉祥異能学園』って書いてあるし。

というか、異能学園てかいちゃってるよ、隠す気ねぇだろ。


入るか、行くか?いや、誰か別の生徒が登校するときに後ろについていけば、いやでもなぁ。

こんなことになるなら、昨日四季絵に一緒に登校するかって言われたとき断るんじゃなかった。


校門まえで少しうろうろしていると不審者と思われたのか誰かに肩を掴まれる。

びっくりして、振り返るとそこには見知った顔があった。


「何をしているんだ?井伊生徒。こんな早い時間に校門前でうろうろと」


昨日知り合ったばかりの俺の担任、美杉先生がそこに立っていた。

見知った人間がいるという安堵に俺は少し泣きそうになる。


「すみません、本当にこの場所に入っていいか不安になちゃって」


「何を言ってるんだ?まぁいい。このまま職員室に一緒に行こうではないか。少し必要な手続きもあるのでな」


そう言って校門をくぐる美杉先生の跡をついていく。

校内に入ると中もすごく綺麗だった。

真っ白な壁にど足で踏んでもいいのかと疑いたくなる廊下。


美杉先生は慣れた足取りで職員室まで向かう。


職員室の中も以下同文。

というわけではなかった。


綺麗なのは綺麗なのだが乱雑された資料は一般的な学校の職員室のそれと同じであった。

それとちらほら他の教員が自分の席につき、授業の用意らしきものを整えていた。

この人たちも異能力者なのだろうか?


「井伊生徒、ここにサインをおねがいしてもいいかな?」


美杉先生は自分の席に置いてあった数枚のプリントを俺に渡してきた。

なんか、色々なことが書かれているようだが目を通すのめんどくさいしサインする部分に自分の名前だけ書いて渡した。


美杉先生はプリントを受け取りファイルに入れてカバンの中へとしまった。


「転入初日とはいえ、こんな早くに来るとは感心はするがホームルームまであと30分はあるぞ?」


「俺って少し心配性な奴でして、迷うことも考えて早めに出てきたんですよ」


「そうか、なら暇なこの時間に学校案内っと言いたいところではあるがなにぶん自分もやらなきゃいけないことがあるもんでな。この時間帯だとうちの教室は誰よりも早くに来ている生徒がいるから彼に少し学校を案内してもらうといい、それかもう十分もすれば四季絵生徒も来るだろうから彼女も合流して回るのもいいと思うぞ」


そういうと美杉先生は自分の携帯を操作し、その早くに来ている生徒とやらに『ツナガリ』にて連絡をとった。


「大丈夫だそうだ、教室はこのまま最上階まで上がった、1のAとかかれているクラスだ。5分前には悪いが一度職員室までも出って帰宅れ」


「わかりました。ありがとうございます」


そう言って職員室から出て、近くにあった階段を上がる。

この建物は六階建てで最上階まで上がるのに普通にしんどかった。

これでは休み時間運動場で遊べないではないか。


最上階には1のA書かれた部屋と1のBとかかれたふた部屋しかなかった。

この広い廊下を見る限り一部屋すげぇでかい気がする。


さてと俺は扉に手をかけて軽く深呼吸をする。

小さい頃から転入を繰り返していた俺は懐かしい気分で少しドキドキしながら扉に手をかけて教室に入った。


「やっぽー!俺の名前は冠 遊具!あそびごごろ満載の男だよ!さぁ何して遊ぶ?学校探検?いいね!ついでに人つなぎの大秘宝でも探しに行こうぜ!例えば俺とかと!」


教室に入るや否や持っていたクラッカーを盛大に鳴らす男子生徒。

一般的な男子高校生ほどの身長で制服の上からはわからんが結構鍛えている。

ぼさっとしたボリュームのある髪型は茶髪に染めており高校デビュー真っ只中であろう。

人懐っこそうなその顔に俺はにっこりと笑う。


「よう、久しぶり遊具。こんなところで何やってんの?」


「転入生で親友である奴の歓迎だよ、久しぶり奴哉。人生楽しんでた?」


ケタケタ笑いながら持っていたクラッカーのゴミをかき集めてその辺のゴミ箱に捨てる。

中学の時の唯一の男友達、冠 遊具 はいたずらに成功した子供のように楽しそうである。


四季絵と同じ学校にスカウトされて知っていたし、朝早くに教室に来るのは中学からのこの男の習慣だからもしかしたらと思ってはいた。


「にしても、奴哉も異能力に目覚めるとはな、数少ない友人がこの異色な学校に転入してくるとは世の中狭いもんだな。俺はお前がまた一緒のクラスになってくれて嬉しいぜ!」


「俺も嬉しいよ。それで俺はどの席を使えばいいんだ?」


「昨日新しく届いたこの机使っていいはずだぜ?後ろのロッカーは空いてるとこ好きに使ってもらって、鍵の番号は自分で設定しろよ」


俺は案内された席に持っていたカバンを下ろす。

そしてカバンの中から心地を出した。


狭いカバンの中から解放された金の球は自由に広い教室を徘徊し始めた。


「へーそれがお前の異能力ね。名前はなんていうんだ?」


「心地と命名した!井伊 心地。それがこいつの名前だよ」


ドヤ顔で心地の名前をいう俺に遊具は羨ましそうな葉状を浮かべる。


「なに?どういうこと?異能力名、申請する際にするときにそんな名前通るの?いいなぁ!じゃあ俺ももっと面白いふざけた名前つければよかった。アレクサンダー大王とかモンちょむペケポンとか」


「遊具の異能力はどんなもんなんだ?」


「俺?俺の異能力はねぇ」


遊具が異能力を発動しようとしたのか何やら決めポーズを取るさいにゆっくりと教室の扉が開いた。


長い黒髪を一本し縛り上げた大和撫子。

見知った顔の四季絵季節が教室に入ってきた。

この前あったサイト違う点は腰にこの前扱っていた刀を所持しており、その胸は平地の如くぺったんこになっていた。


「おっはよー!季節ちゃん今日も相変わらず美人だねぇ。どうよ?そろそろ恋人の一人でも欲しいんじゃないの?例えば俺とか!」


「おはようございます、冠くん。それと井伊くんも昨日ぶりですね」


「華麗なスルーごちそうさまです!」


「落ち着け、遊具。見ろ四季絵のゴミを見るような目。お前まさか中学の時みたいなこと高校でもやってんのか?」


「もちのろんすけ。特にこの学校は女子のレベルめちゃ高いぜ。異能力者って顔が整ってねぇと慣れねぇモンなのかね?そんないい女がフリーでいたらとりあえず彼氏立候補するだろ?」


至極当然とも言わんばかりな表情の遊具に四季絵はより冷たい視線を向ける。

この男中学のある日を境に見た目がいい女子を口説きまくっているのである。


四季絵だけではなくいろんな女子に。

つまり顔が良ければ誰でもいいのである。

顔も平均値なくせにそんな奴にどんな女が惚れるというのだろうか。

そんなことして許されるのはイケメンのみである。


故にこの男中学の時はそりゃあ女子から嫌われて敵意を持たれていたわけである。

俺の友人は女という生物に何かしら嫌われる性質でも持ってないといけないのか。

泣けてくる、どっちも女の子と仲良くしたいと思っている分、余計に。


「おはよう、四季絵。おっぱいでっかいの隠していることほんとだったんだな。すごいなそれ、本当に真っ平じゃん。苦しくないの?」


「どうして、朝から友人たちからセクハラの猛攻を受けなければならないんですか。苦しくはありませんよ、むしろ走っても胸が痛くない分快適ですね」


「友人たち!つまり季節ちゃん俺のこと友達と思っててくれてたの!」


感激といった表情を受かべる、遊具をまたゴミを見る目で見下す四季絵。


中学の時、部室でよく3人でこんなバカな話し合いよくしたっけ、なんだか懐かしくも思えてくる。


「じゃあ、3人仲良く揃ったところで学校案内でもしてもらおっかな」


「そうですね、井伊くん。では冠くん。私は井伊くんと言ってくるのでここで留守番お願いします」


「俺も混ぜてよ!」


教室から出ていく俺と四季絵の後を慌てて追いかけてくる遊具。

ホームルームが始まるまでの間にこの広い学校の全てを見て回るのは不可能ということで、できるところだけ案内をしてもらうこととなった。


「井伊くんが一番お目当てであろう家庭科自習室はこことは別の別館にありますのでそちいらはまたいずれ、こっちの本校舎は基本的に座学メインの教室がですね。私たち一年生がいる六階の教室は一段下がるごとに2年生3年生の教室になっています。一階は先ほど入ったと思いますが職員室です。そしてここ3階が実験室けん理科室の教室と社会科となってます」


階段を下り、3階のフロアを案内される。

中が覗けるかと扉に手をかけたが開かなかった。

鍵がかかったいた。


「なかは一般的な理科室や社会科室と似たり寄ったりだぜ。人体模型があったり世界地図があったり、見たこともない生き物のホロマリン漬けやわかっている異次元世界の軌道周回だったり。もう少しファンタジー感欲しいよな。剣とか魔法の武器とか置いてくれていてくれてもいいのに」


「軍の許可なくそんな危険なものホイホイと一生徒に渡すわけないでしょう」


「刀を帯刀している奴が何をいうか。あれ?これ突っ込んだら負けなやつ?」


「私はいいんですよ。井伊くん。きちんと許可とってますし下の階に行きますよ」


そう言って階段を下る四季絵。

その後についていく。


「ここは多目的ルームです。全校集会やクラス集会の時に使われたりしますね」


2階のフロアを全て使っているという多目的ルームに着く。

その後も色々と案内してもらったうちに、美杉先生に言われた時間になったので俺は今職員室前へと戻ってきていた。


「さてそろそろいい時間ですので私は先に教室に戻ってますよ」


「案内ありがとな。恩にきるよ」


「別にいいって、そのうち友情で返してくれればいいから」


「では、井伊くんまた後ほど」


そういった四季絵は階段の方ではなく、すでにボタンを押して一階に泊まっていたエレベーターに乗って最上階の6階まで上がる。

もちろん、遊具を置いて。


「あれ?俺置いてかれた?ま、いっか。それよりも奴哉。お前転入する時の挨拶って決めてんのか?」


「そりゃ、無難に自己紹介だけすればいいかと」


「ばっかやろう!それじゃあ面白くないだろうが!いいか、うちのクラスには季節ちゃんのようないいとこの坊ちゃんお嬢ちゃんだ。プライドたけぇはクラスカーストの上に立ちたい奴らばっかだ。そんな奴らに初っ端からユーモアなしで取り入ろうとか思ってんじゃねぇ」


「いきなり大声出すなよびっくりするなぁ」


「奴哉、お前に最上級のこの一言を授けよう」


ゴニョゴニョと俺の耳元で最上級の一言をいう。

えぇ、そんなこと言っても大丈夫なのか?


「あながち間違いでもないし、この一言で得をするのはお前だけじゃない、今クラスで孤立しがちな季節ちゃんもこの一言で溶け込めるはずだ!」


「じゃあ、遊具が言えばいいじゃん」


「俺ではダメだ、すでにこの学校の女性と嫌女性教員からも嫌われているから」


「お前の高校生活、始まってまだ二ヶ月も経ってねぇだろうが」


何をどうすれば、そんな簡単に人に嫌われるのだろうか。

概ね何をやったかは想像つくが。


「何よりこの言葉はお前がいうことに意味がある!じゃあな、奴哉。俺、お前が決める時は決めれる奴って信じてるから」


そう言って階段を駆け上っていく遊具。



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