今後について
「お話は終わったみたいですの?」
その声がする方向を見てみるとそこには水色髪の小さな女の子。
俺をここに保護してくれた、清水のお嬢ちゃんが立っていた。
俺たちの会話がひと段落するまで待っていてくれたようだ。
「災難だったですね、季節ちゃん。あ、座ったままでいいですの。まだダメージが乗っているのでしょう?」
立ちあがろうとした四季絵を静止させ、こちらに近づいてくる。
「しかし、流さん。目上の人の前で、いえお言葉に甘えさせてもらいます」
四季絵が何か言おうとしたが目力で黙らせる。
そして四季絵の隣の椅子に座る。
俺から見たら顔だけしか出ておらず、間違いなく足も地面に届いておらずプラーンとしているのだろう。
「ありがとうね、お嬢ちゃん。俺のこと保護してくれたみたいだし、話が終わるのを待っててくれて」
「軍の一隊長、いえ大人として当然の対応をとったまでですの」
当然といったその表情に少女の年齢見あわない大人びさを感じる。
「ちょっと、井伊くん失礼ですよ。きちんと敬語を使ってください」
「へ?別にいいじゃん。なんか、軍の隊長らしいけど、俺にはあんま関係ないし。年下それも小学生くらいの子に礼儀もなんもないでしょう」
身を乗り出して俺を注意する四季絵にあっけらかんに言う。
四季絵は少し困った表情で清水のお嬢さんをその目で見る。
清水のお嬢さんは特に興味もないかのように言い放った。
「初対面の人が流を子供扱いするのにもなれたのですの。ちなみに流は今年で28歳になる立派なレディーですの」
そういうと軍の手帳なのだろうか?
警察手帳のようなものを懐から出す。
そこにはお嬢ちゃんの写真と所属舞台、年齢に性別誕生日などが書かれていた。
年齢欄いは確かに28歳と書かれていた。
まじかこの青がみ少女。
ロリ軍隊長ではなく合法ロリ軍隊長だったのか。
世の中のロリコン諸君集まれー。
「そうだったんだ、じゃなくてそうだったんですか」
「今更敬語じゃなくていいですの。切羽詰まってて説明しなかった流も悪かったですの」
本当に気にしていないのか、それともあまりに子供扱いされすぎて慣れてしまったのかわからないがタメ口で話すことを許可してくれた。
「流の年齢なんかよりもはいこれ、季節ちゃん新しいネックレスですの」
そういって、清水のお嬢ちゃんが懐から取り出した綺麗な宝石がついたネックレス。
七色に輝く中央の宝石に細かい飾り細工がついていた。
四季絵はありがとうございますといい、首元につけた。
なんでこのタイミングで渡したんだと不思議そうに思っていると四季絵がおれの表情で察してくれたのか説明してくれた。
「これは『ファムファタール』が出しているという『アウノウン』が感知するオーラとでもいうのでしょうか?を抑えてくれる道具です。これがあるから『ファムファタール』の女の子は外の外出が認められ一個人の自由も約束されています」
「便利なもんがあるもんだな。じゃあなんで今回あの猿たちは四季絵が『ファムファタール』ってこと見抜いて襲撃かけたんだ?」
「このネックレスも完璧というわけではないのですの。日び改良に進化を重ねてはいるのですが完全にそのオーラというかフェロモンの方が近いですね、を完全遮断はできてないのです。勘のいいというより圧倒的上位の『アウノウン』にはそのフェロモンを異次元から感知されるみたいなのですの 。それに『ファムファタール』が出すフェロモンにも、強弱があり季節ちゃんの放つフェロモンが季節ちゃんの成長により強くなったのも襲われた原因の一つでしょう。これは我々大人のひいては軍の管轄不足で起きた事故なのですの。季節ちゃんにも少年にも多大な迷惑をおかけしたことお詫び申し上げますの」
「謝らないでください、流さん。大体『ファムファタール』なのにこんなに自由にしてもらっていること自体特別というかほとんどの『ファムファタール』子は軍の管轄下の施設に入ってこんなことがないようにしているのに。私が我儘言わず施設に入っていれば一般の人にも井伊くんもこんな目に遭わずに済んだかもしれないのに」
「それは違うですの季節ちゃん。それは彼女たちが自分で決断したことですの。そして自由に外に出歩きたい、青春を謳歌したいと決めたのは四季絵ちゃんあなたですの。すべての子供達に与えられた選ぶ権利ですの。流たち大人はその意思を尊重し、できる限りのサポートをする。だから流は謝罪するですの。流たちが不甲斐ないばっかりに季節ちゃんに嫌な思いを一般の方々に多大な被害を出したことを」
そういって頭を下げる。
なんか、かっこいいな。
見た目は少女なのだが、持っている中身の厚みがすごいというか。
かっこいい大人ってこういう感じなんだろうと思った。
「だから四季絵ちゃん、あなたは何も気にしなくていいというのは無理かもしれないですけど、今まで通り自由に過ごしてください。ただでさえある程度の束縛をあなたは我慢しているのですの。『ファムファタール』に生まれたというだけで理不尽を我慢する必要はないですの」
しっかりと四季絵の目を見ながら微笑みかけ、自分の小さな手を四季絵の手に重ねる。
四季絵は少し涙ぐみながら、ありがとうございますと小さく言った。
その光景に俺はただ黙って見ているしかなかった。
「さて、では少年。君の処遇についての話をするですの。初めに言っておきますが君にはあまり選択肢のないこちら側の都合を押し付ける形になるですの」
少し間をおいて話の方向性は俺のことへと移った。
「少年ってのはやめようや。俺のことは奴哉でいいよ。流のお嬢さんいや?オネェさん?」
「わかったですの。奴哉少年。流のとこは呼びやすいように呼べばいいですの。君の今後は軍の管轄下にある、特殊学校『吉兆異能学園』に転入という形になると思うですの」
今さっらと流したが俺がオネェさんと呼んだ時少し嬉しそうな表情を浮かべた。
じゃあ、オネェさん呼びで行こう。
そう言って流のオネェさんが出したのはよく見る学校のパンフレットだった。
パンフレットにはデカデカと校舎の写真と『吉祥異能学園』という文字が書かれていた。
「異能学園?」
「はい、異能学園ですの。詰まるところあなたのように世間一般に公表できないような人が持つには異なった能力を開花させてしまった若者たちが集まる学校ですの」
「いや、俺いたって普通の一般人なんですけど」
俺がいうと流のオネェさんは何言ってんだと怪訝そうな顔を浮かべる。
隣に座っている四季絵にも目をやると四季絵はそっと俺の方を正確には俺の肩あたりを指差しいた。
「その、肩に浮いている金色の球。それがおそらく貴方の異能力でしょう。井伊くん、異能力の開花の条件は人それぞれなんです。生まれついてから使えるものもいれば、何かの拍子に急に開花するもの、本当に様々なんです。確かに井伊くんは昨日までは一般人だったかもしれないですけど、今日からは立派な異なった能力を持つ存在になったんです」
まじで!俺そんなわけわからん奴になっちゃったの!でもこの金の球が俺の異能力ってやつ?でもコレ、あの博物館にあった展示物だし特に俺の自由意志で動くどころか、この金の球自分で石意思を持っているみたいに動くんだよな。
さっきのサルとの戦闘中も勝手に俺のアシストしてくれていたし。
「そういうわけなのですの。まぁ入学を断ってくれてもいいですけれど、あまりおすすめはしませんですの」
「断った場合どうなんの?」
「少なくとも今まで通りの生活とはいきません。それにその金色の足で一般の学校で目立たないという方が無理でしょうし軍としても異能力を世間一般に公開するというのは好ましくないので、貴方を常に誰かが監視、それに」
「わかりました、入学します」
流のオネェさんがおれに対する不利益をつらつらと並べて言ってきたのでおれは首を縦に振る他なかった。
ロールプレイングゲームとかでよく見る、はい、YESしか選択内パターンのやつだこれ。
「それが賢い選択だと流も思うのですの。色々と手続きや必要になる品々があるのでまた後日、奴哉少年には親御さんと一緒にここにきて欲しいですの」
そう言って渡された一枚のプリント。
そこには何やら地図のようなものが記載されていた。
俺は少し困った表情を浮かべる。
「これって保護者同伴じゃないとダメ?」
「できればそうしてもらえると嬉しいですの。この業界学生といえど、怪我や命の危機にさらされるという場面に出くわすこともありますの。そうならないように学校の教員も最大限のことはしますが、もしもと言うことがありますの。そういった説明は親御さんにしっかりしなくてはいけませんですの。なぜそのようなことを聞くですの?奴哉少年。ご両親と仲が悪いとか反抗期とかそんな理由だったりしますの?」
こてんと首を傾げる合法ロリ隊長。
仲が悪いとか反抗期みたいな、可愛いもんだったらまだ良かったんだが。
我が家の事情を今日あったばかりの他人に話すのは嫌だ。
友人である四季絵の前で話すのも嫌だし、どうしたものか。
あの人たちが俺のために時間を割いてくれるとは思わない。
小中と生きる最低限の環境を用意するだけで俺のこと、幽霊みたいにいない存在のように扱っているやつらだからな。
重たい沈黙が流れる。
流のおねぇさんは何かを察してくれたのか、椅子から飛び降りてこういった。
「言いたくない理由があるのはわかったですの。そのプリントに書かれた日にその場所まで来て欲しいですの。流はこれから事後処理業務をするですのでここらへんでお暇させてもらうですの。奴哉少年。君は平気そうならこのまま帰宅してもらって大丈夫ですの。よろしければ軍の車で家まで送りましょうか?」
「大丈夫、これからのことを考えながらノンビリかえるよ」
「そうですの、ではまた」
そういうと扉から流のオネェさんは出て行った。
俺も椅子から立ち上がって帰ることにした。
疲労感もどこか体に痛みがあるわけでもない、ほんとなら俺も四季絵と一緒に体の検査を頼みたいところだが、そこまで甘えるわけにはいかないだろう。
「俺も帰るとするかな、じゃあな四季絵。また学校で」
「もう帰るんですか?」
「ここに長いする理由もないし、四季絵ともっとおしゃべりしたいと思うけど、今日は疲れたろ?また友達になったんだし避ける理由もお互いになくなったんだから、今日で今までの疎遠期間を埋める必要はねぇだろ?だからまた学校でな」
「そうですね、井伊くんが転入してくる日を楽しみに待ってます。同じクラスになれるといいですね、中学生の時みたいにみんなで」
にっこりと笑う四季絵。
俺は振り返りぷらぷらと手を振った。
中学生時代によくこうやってさよならをしたなと思いながら。