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桃色満月

作者: 杞憂冬季

ユメカウツツカ夢何夜?

 ペタッペタッと湿ったような足音が雑居ビルのどこかから聞こえてくる。『それ』の正体は不明だがどうやら見つかってはいけないものだと認識しており、不快な足音に恐怖を覚える。

 私は怯えながらも階段を何度も上り下りしている。

「どこにあるんだ。見当たらないじゃないか!」

 何を探しているんだろう。確か鍵だった気がする。でもどこの鍵を探しているんだったか。探している鍵はどんな形だったか。思い出せないが探さずにはいられなかった。

「あれ?いつの間に。」

 私は階段を上りきり屋上へ出たようだ。

 上を見上げるとそこには月が輝いていた。私が両手を広げても収まらないくらいに大きな満月。優しくて涼しい風を体で浴びながら、視界に広がる景色を見つめる。

 この建物の周りに他の建造物は無く、ただ紫がかったピンクの花が、辺り一面に広がる草原の中でポツリポツリと咲いていた。

 朝焼けだとか夕暮れだとかのそれらとは違う、淡いピンクに染まった光景に私は形容しがたい心地よさを感じていた。


 ペタッペタッと背後から足音が聞こえ振り向くと、そこにはヒトのような生き物がたっていた。ヒト、なのか?衣類は身に付けておらず、皮膚は赤みがかっており爛れているようにも見える。

 こちらに敵意はあるのか?何となく温厚なイメージだけどを抱いたのは私が平和ボケしているからなのか。

 とにかく、その生き物が動き出す前に私は走り出した。屋上なのに手摺りが無いという事に気づかないくらいに全力で。

 屋上を飛び越え地上へ落下するが痛みは感じない。さっきの生き物は屋上からこちらを見下ろしているが追ってくる様子はない。


 私はもう一度空を見上げる。大きくて綺麗なその月は、少しずつ周りと同様に色を帯びていく。

「私が探していた世界はここにあったんだ。」

 ようやく辿り着いたことに安堵し、草原に寝そべった。

杞憂冬季=給湯器w

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