90.剣聖
『奇跡の大地』編最終話でございます。
◆セレナディア・エクシア◆
今日は私に取ってもエクシア家に取っても大きい一日となる。
私の十歳の誕生日の日が来た。
多くの貴族が私の誕生日会に参加する。
王国内でもエクシア家は上位貴族だ。
そして唯一アカバネ商会と契約を交わした貴族、その利益は王国内で一番高い。
そんなエクシア家の唯一娘の私に求婚をしようと多くの貴族達が挙って参加をした。
私の職能開花がある夕方前にパーティーが始まり沢山の貴族達に挨拶する羽目になった。
これも貴族としての仕事なので、仕方ないと割り切り、ずっと笑顔で頑張った。
同じ年の子を持つ貴族から上下八歳くらいまで幅広い自分の息子を紹介してくる。
全く興味が無かったので、誰一人覚えていなかった。
そして夕方前――私は二度目の開花する前に一度会場を後にした。
向かったのは――――アカバネ島だ。
私の部屋から直通出来るようにしているので、いつでも行けた。
アカバネ島ではアカバネ商会の皆さんとクロウティアが待ってくれていた。
クロウティアは病気と発表しているので、誕生日会には参加出来ない。
こうして、島で皆と待っていてくれていた。
今日開花は島でしたいと私の頼みで誕生日会が開かれていた。
頼む前から準備されていたけどね。
そして皆さんからお祝いを言われながら数十分して――。
- まもなく職能開花が始まります。-
何処からか不思議な声がした。
これは職能開花する際、必ず言われるそうで、世界では『女神様の声』と言われている。
そして――。
私の職能『剣聖の証』が『剣聖』となった。
◇
◆エクシア家屋敷の誕生日会場のとある貴族の子供◆
本日の主役のセレナディア様が一時会場から姿を消された。
どうやら職能開花があるからという理由だそうだ。
十歳で才能開花って……まさか最上級職能だったりして……ね?
僕は本日セレナディア様に初めてお会いした。
そんな僕が真っ先に思った事は、
こんな美しい方が存在するのか……。
僕と同じ年の彼女は、今まで見て来た全ての女性の中で一番美しかった。
最早、美しいと言う言葉すら失礼に当たるかも知れない程の美しい女性だった。
そして夕方に彼女は戻られた。
先より何処か大人びた顔になっていた。
これから彼女の職能を公表するはずだ。
「皆様、本日は私の誕生日会にお越しくださり誠にありがとうございます」
その声もまた美しかった。
「僭越ながら本日私の職能を公表致します」
周りの人達も息を呑んだ。
僕はただの『ノービス』なのだけれど、彼女からは不思議と凄い力を感じていた。
「私の職能は――――本日より『剣聖』となりました」
その一言で、会場のざわつきは大きくなった。
あれ程美しい女性が、職能でも伝説の『剣聖』。
まさに選ばれしお方なのだと、この会場にいる僕と同じ子供達は全員そう思うのであった。
◇
セレナお姉ちゃんが屋敷の会場で職能『剣聖』を発表した。
僕達はソフィアのおかげで会場の状況を隠れた遠距離ライブ観戦装置で見ていた。
セレナお姉ちゃんの発表で、会場のざわつきはどんどん大きくなり、割れんばかりの拍手がした。
王国内で『剣聖』が生まれるのは数十年ぶりだと言うからその盛り上がりはとんでもない物となっていた。
恐らく、後日全世界に広まるだろう。
うちのお姉ちゃんが世界一のお姉ちゃんになるのだ。
さっきはお姉ちゃんに近寄る輩が絶えなかったのに『剣聖』を発表してからは誰も近寄らない。
どうやら最上級職能持ちの女性に言い寄る程勇気がある者はいなさそうだ。
前半はあんなに言い寄ってたのに……因みに全員顔覚えたからね!
全員アカバネ商会の敵として認定だ!
そして、誕生日会も夕食を後に終了した。
それから本日の主役が両親と一緒にアカバネ島へ戻って来た。
そして今度はアカバネ島で二回目の誕生日会の開幕だった。
屋敷のエクシア家の従業員達も全員招待した。
皆初めて来た島には相当驚いていた。
そして準備されていた料理にも声を上げた。
その中でも長年屋敷で料理長をしてくれているブルックさんから物凄い勢いで島への出入りの許可をお願いされた。
屋敷の給金全部払うとまで言われたけど、僕達は幼い頃からずっとブルックさんからデザートを作って貰ってたからそのお礼にうちの島への出入りを許可した。
ブルックさんからは号泣しながら感謝された。
どうやらこの島で獲れる農産物や海産物を一目で超高品質だと見抜いたそうだ。
流石はお父さんが惚れた料理人だ。
お父さんから真剣な顔で、ブルックはやらんぞって言われた。
大丈夫!屋敷でいつも会えるし問題ないよ!
楽しい時間が過ぎ、深夜の時間帯になった。
誕生日会もお開きになり、皆それぞれ帰路についた。
セレナお姉ちゃんも流石に疲れたようだ。
僕とお姉ちゃんは屋敷に戻り、お姉ちゃんの部屋へお姉ちゃんを送った。
「お姉ちゃん、『剣聖』おめでとう!」
「うん、ありがとう」
お姉ちゃんの笑顔がとても綺麗だった。
そして僕はとある物を渡した。
「はいっ、お姉ちゃん」
「うん? これ何?」
「誕生日のプレゼントだよ!」
「あれ? プレゼントは先貰ったけど…?」
「うん、あれはお姉ちゃんの弟として、これはクロウティアとして!」
お姉ちゃんが小さくフフッと笑った。
お姉ちゃんが箱を開けた。
そこには小さく淡い翡翠色に光る宝石のネックレスがあった。
「綺麗! 凄く綺麗!」
お姉ちゃんがとても喜んでくれた。
「ねぇクロウ、これ、付けてくれる?」
「うん、分かった」
そのネックレスをお姉ちゃんに掛けてあげた。
うん、お姉ちゃんにとてもお似合いだ。
「クロウ、ありがとう」
笑顔のお姉ちゃん、世界一可愛い。
奇跡の大地まで長く読んで頂き誠にありがとうございます。
次の編から色々動き出します。
一つ告知させてください。
五日後の2021/7/30~31の分の投稿ですが、
まとめて30日の23:47から5分起きに複数話上がります。
是非一気に読んで頂けるとありがたいです。
作者が書きたかった物語の一つです!
ここまで二十万字以上なのに……読んで頂き誠にありがとうございました!
次の編からも宜しくお願いします!




