76.二人目の剣士
三度目のアカバネ祭が大成功に終わった。
その名は王国内だけでなく、周辺の共和国や東王国へも凄まじい勢いで広まった。
それから『アカバネ魔道具』の賃貸も無事始まった。
エクシア家が大々的に関わる事で、献上せよと言い続けてきた王国領の無能貴族達を黙らせられた。
『エアコンキューブ』に関しては小型なのも相まって注文が殺到した。
少し余裕のある平民達から貴族、商会、ギルド、様々な国営の事業所等、その審査だけでも一年は待つ事になった。
『シャワー』は意外と人気が無かった。
何故なら各支店に行けば、どの道使えるため、平民達からの注文が一切無かった。
代わりに王国内全ての冒険者ギルドと全ての軍事施設から注文があった。
こちらはそれ程多い注文でも無かったので、一週間程で全賃貸契約が完了した。
それと同時に王国魔道具ギルドから正式的に両魔道具を研究用に差し出せとエクシア家に直訴された。
お父さんからは「アカバネ魔道具の所有権はアカバネ商会のオーナーにある、彼の許可を直接取ったらエクシア家も許可しよう、まずはそのオーナーを探す事だね」と返していた。
お父さん……そのオーナーって目の前にいますけど……。
◇
今日はお姉ちゃんの稽古場に来てみた。
何だか最近商会ばかりでお姉ちゃんの稽古に来るのもとても久しぶりだった。
お姉ちゃんとデイお兄ちゃんとディアナちゃん三人で稽古を行っていた。
何だか最近お姉ちゃんがますます強くなった気がする。
勿論切れない補助魔法のおかげなのは間違いないんだけど、それを完璧に使いこなしている。
ディアナちゃんも思っていた以上に強かった。
お姉ちゃんには及ばないものの、強化されているデイ兄ちゃんと同等には強かった。
今だとお姉ちゃん対デイ兄ちゃん、ディアナちゃんペアだ。
「ん? クロウ!」
お姉ちゃんが僕に気づいた。
いやいや、お姉ちゃん…稽古しながら木剣振り回しながらこっちに手振らないでよ……。
それでも押される二人が不憫だ……。
「よし! 今日は久しぶりにクロウと稽古しよう! クロウ対私達全員ね!」
お姉ちゃんの我が儘で僕対三人になった。
多人数訓練になるので、僕に取ってはとても有意義になる稽古だ。
しかし、以前は闇の手一本すら相手出来なかったのに、いつの間にかお姉ちゃんが一本に勝てていた。
むむっ、二本だとさすがに勝てないけど、既に一本では歯が立たないのか。
デイ兄ちゃんとディアナちゃんはまだまだだね!
◇
数日後、デイ兄ちゃんの十歳の誕生日が来た。
十歳の誕生日は発表も兼ねているので盛大に行うそうだ。
ライ兄ちゃんは既に『剣士』と発表しており、デイ兄ちゃんも『剣士』と発表するので中々大きな発表になるそうだ。
誕生日会に僕は出ない。
何せ僕は今でも病気だと言う事になっているからね。
おおおおおおおお!!!
屋敷に歓声が響いた。
恐らく『剣士』の発表だろうね。
それと、今のエクシア家はアカバネ商会と専属契約を行っているのもあって、ライ兄ちゃんの時より数段人が多い。
ライ兄ちゃんもそうだけど、デイ兄ちゃんもお父さんに似てて、イケメンだからモテモテらしくて他家から求婚も多いそうだ、勿論家の大人達の話だ。
結婚は全て本人に任せるとお父さんも断言しているので、同年代の学園では大きい争いになるらしい。
先日ちょっとだけ会いに行ったライ兄ちゃんからも婚姻の件で色々大変だと言われた。
◇
デイ兄ちゃんの誕生日会も無事終わり、『魔道島』も後一週間程で完成しそうだとソフィアから報告があった。
ソフィアから凄いから楽しみにしててって言われた。
これはもしかしたら『魔道島』に町建設計画も出来ちゃったりして…ワクワクしてきた。
そんな事を思っていると、
ソフィアから【王都の魔道具ギルドにある『エアコンキューブ』が分解を感知して解除になったよ!】と言われた……魔道具ギルド……やっぱりそう出たか……。
それからお父さん、ダグラスさん、ディゼルさんと四人で会議になった。
「ソフィアから、王都の魔道具ギルドに設置されてる『エアコンキューブ』が解除になったって報告がありました。どうやら分解したみたいです」
「あ……あいつらまた勝手な事を……」
「さすがは王国領の有名な魔道具ギルドなだけありますね」
「取り敢えず、その件に関しては僕から正式に抗議させて貰う」
「分かりました! そこはお父さんに任せるね、そうね、これを機にその他の王都内の『エアコンキューブ』の申請は全部却下にしてください」
「かしこまりました。それが妥当でしょう」
「はぁ……またこれで陛下から色々言われそうだわ……」
お父さんが肩を落とした。
頑張れお父さん!
「あ、お父さん! 移動にはうちの『次元扉』使って良いですからね!」
「ん?……じ……次元……扉? クロウティア? 初めて聞くんだけど……?」
「だってー、あれはアカバネ商会のために作った物ですから!」
「……名前からして非常に聞きたくないような……聞きたいような……」
「はい! 向こうの扉に一瞬で移動出来るの!」
お父さんが天を仰いだ。
その後、同じ話を聞いたお母さんは別な町に自由に出掛けられると凄く喜んでくれた。
来週も二話投稿でございます




