閑話.とある兄妹の七夕
※作者の主観が多数入っており、事実と物凄く違う所がございます。
誰が一目で見てもその部屋は子供部屋にしては大きいと思えるくらいの大きさであった。
その部屋にとある兄と妹がいた。
齢十歳くらいの兄妹だった。
そして兄妹は現在、縦長く切った紙に一生懸命に文字を書いていた。
そう、本日は年に一度の『七夕』の日だ。
日本では『七夕』の日に『短冊』に願い事を書いて飾るイベントの日だ。
二人が書き終えた頃。
「なあ、リサ、七夕ってどういう日か知っているか?」
「うん? 『短冊』に願い事を書く日でしょう?」
少し首を傾げた妹がとても可愛らしかった。
「それは七夕飾りと言ってな、五色の色紙に願い事を書いて飾るイベントなんだよ」
「えー! そうなの?」
「うん」
「え……」
「どうしたの?」
妹は自分が一生懸命に書いた紙を見た。
「この紙……色ないんだけど……」
「あっ……ごめん、でもこういうのは色とか関係ない! 大事なのは気持ちだよ!」
「気持ち?」
「そうだよ、そもそも七夕がどういう日なのかを知って、ちゃんと願うのが大事なんだよ」
「そうなんだ~」
妹がキョトンとした顔になっている。
そんな妹を兄は優しく見つめた。
「七夕はね、星の上に住んでいる織姫様と地上に住んでいる彦星様が年に一度だけ出会える日なんだよ」
「年に一度だけ!?」
妹が驚いた。
「そうなの、お空には星の川が流れていて二人は普段会えないんだって」
「そうか……二人とも寂しくないのかな?」
「うん、とても寂しいの、だから僕達がこうして『短冊』に願い事を書いて沢山願う事で、星の川を渡れる橋を作れるんだって」
「凄い! じゃあもっと沢山書いていいかな!?」
「そうだね、僕ももっともっと書こうかな!」
「うん! 書く!」
はしゃいでいる妹を優しい目で見つめた。
本当は色紙を用意してあげたかった。
「くろにぃ? 織姫様と彦星様は恋人なの?」
「ん? どうして?」
「ほら、年に一度しか会えないって言ってたからさ」
妹は書く手を止め兄を見つめた。
そして兄は…
「ううん、違うよ」
「えっ!? 違うの?」
「そうなの、織姫様と彦星様はね、兄妹なんだよ」
「兄妹?」
「うん、だから二人は一年に一度会って元気を確かめ合ってまた離れるんだって」
それを聞いた妹は急に涙む。
「い……いやだ! 私はくろにぃと離れたくない!」
そう言い、兄に抱き着いた。
兄は驚いたが、妹の頭を優しく撫でてあげた。
「大丈夫、僕も絶対にリサとは離れないから心配しないで」
「う……ん……、くろにぃ……大好き……」
「僕もだよ」
立派に構えたまだ建てて間もない綺麗な一軒家。
その一室に家具は殆どなく、小さいテーブルには傷だらけの兄妹が書いた『短冊』が数点上がっていた。
『来世でもリサの兄になれますように』
『次生まれてもくろにぃの妹でお願いします』
◇
「クロウ! ねえ! 起きてってば!」
僕を起こす声がした。
その声で起きると目の前には可愛らしい女の子が僕を起こしていた。
僕の姉だ。
「ねえ? クロウ? 怖い夢でも見た?」
姉が何を言っているか、すぐに分かった。
僕の頬には大粒の涙が流れていたから。
皆様も短冊を作り飾りましたか?皆様の願いが叶う事、祈っております。




