54.報酬
アカバネ商会は増々広がり、王国内の全ての街で支店を置く事が出来た。
そしてダグラスさんからそろそろアカバネ商会の『本店』を作ろうと提案があった。
今まで気にしていなかったけど、たしかに『本店』が無いのは不思議な話だ。
会議の時に、『本店』の事が議題に上がり、最終的に『王都』にするか『エドイルラ街』にするかで分かれた。
最終的に『エドイルラ街』に『本店』を出す事になった。
僕が住んでいる街という事もあったが、エクシア領は登録商会の税が王国内で一番安いのが良いそうだ。
『次元扉』で移動が自由になっているので、貿易街ホルデニアから遠くても問題ないだろうとの事であった。
それからダグラスさんよりエドイルラ街で土地を購入したと連絡があった。
広場の前の敷地を購入出来たという。
そういえば、ダグラスさんが購入した全ての街の支店って広場の前なんだよね。
広間の前ってかなり高額なはずなのに、簡単に購入してくる当たりダグラスさんの能力の高さが分かるようだ。
異次元空間の『資金』スペースを見たが金貨は相変わらず減っていない。
え? 資金使わずに支店手に入れてるの?ダグラスさん優秀過ぎない!?
アカバネ商会も凄く大きくなったので、今からはダグラスさんと各支店長達の管理職組を中心に商売をしていく事となった。
もう僕には手に負えない程に大きくなってしまった。
あと、従業員達によるご意見箱も順調に進んでいた。
僕では考えもしなかった意見が次から次へと出てきた。
例えば、うちの商会では『魔石』を取り扱っていない。
それは『魔石』が基本国で管理されるからでもあるし、冒険者ギルドも関与しているからだ。
だから買う物は基本素材や食材類になっている。
ありがたい事に『握手会』の力が思っていた以上に凄まじく、『プラチナカード』の売上が止まらなかった。
更に彼らは『ダンジョン』ではなく、通常モンスターを狩るようになり、素材の買取量がどんどん増えていた。
その傍ら、一つクレームがあった。
通常モンスターを狩って来た冒険者はモンスターの返り血を浴びてくる事もしばしばで、強烈な匂いが問題となった。
それを清掃隊から一早く報告、意見として、『水が出る魔道具』で水浴びをさせてはどうかって意見があった。
しかし、それでは人数が多いので何か良いアイデアが浮かばないか悩んでいた。
そんな折、お姉ちゃんから「いつもクロウがやってくれるあの水で身体流す魔法で魔道具作ったら?」と言われた。
確かに、お姉ちゃんが稽古の後、風呂に行く手間を減らす為に、『シャワー』って名付けた魔法があった。
しかし、その魔法、何が大変ってスキル『魔法操作』が必要で、魔法操作は固定出来ない事が発覚した。
そこで、シャワーって名前で思い出した、前世の水浴び方を。
上から水を流せば良いのでは?と思い、人が一人丸々入るサイズの箱を作り、上部に水を雨状に降らすように作り、一定量の水を流した後、温風を送るように設計した。
これで服や防具を着たまま、『シャワー室』へ入り、水を浴び乾燥させる。
完成してお姉ちゃんに見せたら目をキラキラさせていた。
そんなお姉ちゃんから「せっかく水を流せるなら、石鹸水とか作って流せないの?」と言われたが魔法で石鹸水は作れなかった。
水を一分間流して、温風を三十秒流すように作った。
そして上の魔石の下に石鹸を粉にして入れるようにして、石鹸粉を入れると一分間流れる水に最初十秒程石鹸水が流れる仕組みにした。これで冒険者達がどんなに汚れていても一分半で匂いが解決出来た。
これをダグラスさんに伝えたら、石鹸を粉にして包んだものを『粉石鹸』と名付けて売るという。
アカバネ商会に一つルールが制定された。
『買取のお客様には周りのお客様を不快にしない為、汚れを落としてから入店してください』との事が制定。
『プラチナカードをお持ちのお客様に限り、一日一度『シャワー室』の使用が可能です、別途に『粉石鹸』を銅貨十枚で販売しております。』
『シャワー室は一回銅貨五十枚』
これがアカバネ商会の新しいルールになった。
それから思っていた以上にこの『シャワー』が人気になり、冒険者達は毎日使っていた。
意外だったのは、冒険者達だけでなく、入りに来る家族がいる事だった。
皆家で水浴びくらいしか出来ないので、ここの『シャワー』はとても良いとの事だった。
意見を出してくれた清掃隊にはダグラスさんから報奨金として金貨一枚が贈られた。
意見だけではなく、社会貢献度も高得点だったと高額の報奨金となり、今期最高報奨金になった。
あれから毎日のように、シャワーの『魔道具』を売ってくれないかとあらゆる場所から問い合わせがあるようだが、販売はしていないと全部断ってるそうだ。
◇
そんな折、またもや欠損奴隷が多数届いたと連絡があり、向かうと、約百名程欠損奴隷達がいた。
勿論、奴隷伯爵さんからだと言う。
全員回復させ、後は従業員達に任せ、僕は奴隷伯爵の元を訪れた。
前回お姉ちゃんから奴隷伯爵に行く際は絶対連れてってと言われたから、お姉ちゃんも同行した。
ついでに一緒にいたディアナちゃんも連れてきた。
伯爵さんのところに着き、いつもの部屋へ案内されると、伯爵さんが部屋で待ってくれていた。
「おほほ~クロウ様セレナ様お久しぶりでございます~、あら? 貴方は……ディアナさんですかね~おほほ」
「お久しぶりです」「お久方ぶりでございます」「お……お久しぶり……です」
「ディアナさんも元気そうで何よりでございますね~」
「はい、伯爵さん……親と共にその節は大変お世話になりました、ありがとうございます」
丁寧に頭を下げるディアナ。
「おほほ~」
ご機嫌に笑う伯爵さん……しかし本来の伯爵さんから随分違うもんだ。
「では、クロウ様、約束通り~先日の報酬をお持ちしました」
まず『座標石』を出し、その横に大きな袋を出した、音からして恐らく中身は貨幣だろう。
それと三番目には大きな卵を取り出した。
「では、まず約束通りの『宝石』をお返し致します~そしてこちらの袋が金貨でございます」
『座標石』を仕舞い、金貨袋を開けた。
「えぇぇぇぇ!? 伯爵さん!? 金貨間違えてますよ??」
その袋の中にあったのは、金貨では無かった、
その中には白く輝く金貨があった。
「おろろ? たしかに、白金貨が入っていると思うのですが~」
「えぇぇぇぇぇ、白金貨ですよ!? しかもこれ何枚ですか!? えぇぇ??」
隣にいたお姉ちゃんとディアナちゃんは白金貨の価値が分からないようでキョトンとしていた。
「おほほ~、それであってます、今回の報酬として白金貨百三十枚になります~」
あまりの驚きに僕は足がふらつきソファーに倒れこんだ。
「クロウ様~確かにこの金額は額としては大きいのかも知れません~ですがあれはそれ程までに価値があったのです」
伯爵さんが優しい目になった。
「私だけではなく、彼女のお父様からの感謝でもあります。勿論この事は誰にも本人にも話していないのでご安心ください」
まさかこれ程までに大金が手に入るなんて……白金貨百枚って……国の予算以上では……?
「それと、この卵ですが、少々特別な『ただの魔物の卵』でございます~」
「魔物の卵?」
「はい~こちらの卵を触るとMPを吸われてしまいますが、一定のMPを与えると孵化します。孵化した魔物は一生ご主人様に従順に従う魔物となります。普通のモンスターとは比べ物にならないくらい知能が高いので色々便利ですよ~」
良く分からないけど、これもとんでもないものかも知れないと勘が騒いだ。
伯爵さんから多額の報酬を貰い、震える足で帰った僕だった。
変なクロウ~とお姉ちゃんが言っていたから帰って価値を伝えたら、全力で返そうと相談された。
本当に受け取って良かったのだろうか……。
白金貨100枚=1兆円相当…
僕も一兆円欲しいです。




