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【WEB版】被虐待児の最強転生して優しい家族に囲まれ  作者: 御峰。
最終決戦編

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346.時空ノ神

「素晴らしいだろう! これが、虚空すら遥かに超越した『時空』の狭間だ!」


 全てが止まった世界。


 灰色の世界には、命も時も何もかも感じられなかった。


「『ヨグ・ソトース(時空ノ神)』を手に入れたエデンは、女神に更なる復讐(・・)の為、時を遡った。いつか再び生まれるであろう女神を、地獄の果てまで追い詰める為……そう、それがお前なのだ。クロウティア、いや……お前であって、お前でない……お前の中にいる……元女神『時ノ女神クロノティア』にな!」


 ドクン。


 大きな心臓の鼓動の音が聞こえた。


 全ての時が止まっているこの世界。


 僕も動けるが、心臓は動いていなければ、呼吸もしていない。


 呼吸なんて、この世界では何の意味も持たないのだ。


 そんな中、僕の中に心臓の音が聞こえる。


 僕の中にいる『時ノ女神の因子』というモノかも知れない。


「僕がエデンを倒してしまった……だから、元々の身体である『虚無のノア』に『ヨグ・ソトース(時空ノ神)』が宿った……そして、時を渡る力で、今度は最後の壁となるディグニティ様を……」


「喰らった! これで、我々は元の一つ(・・)となったのだ! ただし……我『虚無』だけが生き残っているがな」


「…………全てを手に入れた『虚無のノア』は……このまま世界をも女神をも神をも『虚無』にしようとしている。そういう事なんですね」


「ああ、そうだとも。我が存在している限り……この世界を果てまで『虚無』と化してやろう!」


「そうはさせません。僕も全力で抗って見せます。かつて…………全ての希望を失った『時ノ女神』を守り抜いた天使のように! 神格化! 正義ノ天使(女神)!」


 ドクン。


 心臓の鼓動がまた響く。


 でも、心配する事はない。


 僕は……必ず、この世界を守って見せる。


 イカリくんを守る事は出来なかったけど、手が届く愛する者を守るから。


 目の前の()から、必ず守って見せるよ。


 だから、心配しなくていいよ――――――。




 ◇




 クロウティアは剣を持って、ノアに仕掛けた。


 その剣は神器『天叢雲(あめのむらくも)(のつるぎ)』を土台にして錬成した剣だ。


 妻の姫神の母である卑弥呼から授かった神器である。



 クロウティアの攻撃に、ノアも反撃する。


 ノアの両手には禍々しい二振りの剣が握られていた。



 二人の攻防は激しく続いた。


 お互いに傷は全く増えず、時が止まった世界で音もなく、ただただ剣と剣とぶつけ合っていた。


 どれ程の時が流れたかも分からない。


 世界の時が止まり、動かない世界で、動けるたった二人であった。


 しかし、二人の間に小さな変化が始まった。


 時が止まり、何もないはずの灰色の世界。


 その世界に、『声』が響いた。


 『声』は戦っている者を労わる声。


 そして、歌声が聞こえた。


 何度も聞いたその歌声……世界の人々の声も一緒に流れてきた。


 クロウティアはその『声』に答えるかのように、少しずつノアを押し込んだ。




 ――その時だった。


 たった一瞬であった。


 時が止まった世界に、もう一人だけ、一瞬動ける者がいた。


 ノアの足元に一瞬で触手を伸ばしたソフィアであった。


 ノアの足を一瞬止める。


 止めるのは一瞬で良かった。


 クロウティアはその一瞬を見逃さず、持っていた剣をノアの胸に刺し込んだ。




 ◇




 力が弱まったノアにより、世界に少しずつ色が染められていく。


 少しずつ元にいた場所が彩られていく。


「ぐ、ぐああああ! ま、まさか、わ、我が負ける……だと! 断じて……断じて許さん! 最後に女を道ずれにしてやろう!!!」


 身体が少しずつ灰と化していくノアが、クロウティアとソフィアを吹き飛ばし、近くにしたアリサに向かった。


 吹き飛ばされたクロウティアの虚しい声が響いた。


「り、リサ!!! や、やめろ!!!!」


 ――――その時。


 ドクン。


 動いてないはずのノアの心臓が動いた。


 消えかかったノアの手がアリサを貫く直前に止まる。




 ――――「リア(リサ)!!!!」


 ノアに聞こえないはずの声が聞こえた。




「り、リア……まさか……君は…………くっくっくっ、神め……こんな仕打ちをするのか……呪ってやるぞ! 神よ! 我は永遠に貴様を! 断じて許さん!!!!」


 ノアは灰になる中、最後まで『神』を貶し続けた。


 ノアの身体が全て灰となり、世界に色が戻って行った。



 ノアとクロウティアの姿が一瞬いなくなった事に驚くアリサ達であったが、直後、現れたノアがアリサの前で消えていった事と、クロウティアが涙を流しながらアリサを抱き締める姿を見て、皆も戦いの終わりを知った。




 ◇




「く、くろにぃ! この島……止まらないよ!」


 既に崩壊しつつあった『天空の城』であったが、ノアが消えた後、その浮遊機能を無くし、大陸に向かって落ち続けていた。


「ど、どうしよう! この下の部分に『不可侵の結界』が張られてて、壊せないってメティスが……」


「…………力で押し戻す?」


「……セナさん、それは流石に無理だと思う……」


「……そうよね…………」


 僕達が困っていた時、一通の『遠話』が届いた。


【マスター! 今すぐ島に戻ってください! 落下する『天空の城』を止める方法がございます!】


「ヘレナから島に戻って来て欲しいって! もしかしたら落下を止められるかも!」


 ソフィアに急ぎ『扉』を作って貰い、僕達は島に帰還した。




 ――こうして、僕は遥かの時を続いていた戦いを終えた。


 世界を『虚無』にしようと企んでいた『魔神ノア』。


 僕は……ううん、僕達はみんなの力で彼に勝つ事が出来た。


 しかし、彼が残した落下してくる負の遺産が僕達に大きな不安を抱かせるには十分だった。

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