310.ディアナvsジャンネル
本日と明日は久しぶりに二話投稿です。
魔王城より東西南北に分かれている領都が四つ。
魔王が君臨する一年前よりも遥か以前から、この四つの領はそれぞれの四人の領主によって統治されていた。
それぞれの領は、仲が良い領同士ではなかったが、領主同士では交流が続いていた。
東領を治めている『虐殺の四天王、アスティー』
西領を治めている『加虐の四天王、スニカーグル』
南領を治めている『暴虐の四天王、タリヒルラ』
北領を治めている『残虐の四天王、ジャンネル』
彼らは魔族の代表となり、その強さも相まって多くの魔族達から人気であった。
彼らはそれぞれの領都で『魔王城』の結界の為の『オベリスク』を守っている。
流れてくる噂では、既に『抜け道』が全滅している噂。
魔族の噂は、本物である確率の方が非常に高い。
四天王の誰もがこの噂を鵜呑みなどしなかった。
――――人族が反撃してきた。
そう受け取っていた。
その中でも、クロウティアと一度対峙しているスニカーグルは、尚更防衛に力を入れていた。
◇
◆ディアナ◆
私は大急ぎで、白狐に乗り込み、レジスタンスの皆さんと『北領』に向かった。
北領を治めているのは『残虐の四天王、ジャンネル』という魔族のようだ。
走り続ける事、二日。
北領都が見えた所で、ひと休憩を取り、私達は戦いに挑む事となった。
北領都の広場には、話で聞いていた『オベリスク』が立っていた。
今回の目標はあの『オベリスク』を壊す事。
でも、町の正面には強者の気配が放たれていた。
恐らく、向こうも私が来た事に反応しているのだろう。
昨日、休憩の所を襲って来なかったのを見ると、クロウ様が仰っていた「魔族の全ての者が悪い魔族ばかりではないかも知れない」の言葉はその通りだと思える。
私達はゆっくりと領都の前に進んだ。
領都の入り口に、小さな身体から強者のオーラを放っている魔族が一人。
彼はあぐら状態のまま、空中に浮いていた。
「よお、お前が侵入者だな」
「そうですね、貴方から見ればそうなりますが――――」
「良い、言いたい事は分かるが――――話し合いに来た訳じゃないだろう?」
彼の両手から、大きく真っ黒な光が二つ作られた。
黒い光は少しずつ姿を作り、丸い円盤のようなモノとなり、彼の左右に展開した。
私も剣を抜き、彼と対峙する。
「俺の名は、ジャンネル。誇り高き魔族の王の一人だ」
「私はディアナ・エクシア。クロウティア様の妻の一人であり、向こうでは『英傑』と呼ばれています」
「『英傑』か……相手にとって不足はないな!」
ジャンネルの目が大きく開くと同時に、展開している円盤二つから魔法の光と共に、大地を揺らす攻撃が始まった。
発射される丸い球は、無数の振動からなる魔法の玉のようで、試しに石を蹴ってみると、玉の中でぐちゃぐちゃに切り裂かれた。
恐らく風属性魔法で激しい暴風を一箇所に集めた魔法のように見える。
「剣技! 豪狼斬!」
私の黒い魔力を帯びた剣から、斬撃が放たれる。
ジャンネルの放った風の玉とぶつかると、大きな音と共に消滅した。
「ふん! 『英傑』がそんなもんか! インパクト!」
円盤から唸りと共に、風の玉が数十発放たれる。
「奥義! 閃光殲滅斬」
私の剣が今度は眩く光り、ジャンネルに向かって振り下ろした。
ズガガガガ――――
大地を割く轟音とジャンネルが放った風の玉が全て消えた。
「剣技! 神速剣!」
私は一瞬でジャンネルを追い詰めた。
「これで貴方の負――――ッ!」
ジャンネルに届く一歩手前。
ジャンネルが展開していた円盤から大きな鉄球が放たれた。
思わぬ攻撃に、思いっきり剣で受け流すも、流し切れず、私は大きく吹き飛んだ。
◇
「ふん、そんな見え透いた剣が俺に届く訳ないだろう」
吹き飛んでいるディアナに向かい、ジャンネルは冷たく言い放った。
「インパクト、タイプチェンジ。インファイト」
ジャンネルの言葉に浮遊していた円盤がうねうねと動き出すと、鎖に繋がっている鉄球へと変わった。
鎖はジェンネルの両手に繋がる。
「ここからが本番だぜ! 『英傑』さんよ!」
足を崩したジャンネルが高速でディアナを襲う。
「くっ、まだ……です! 剣技、轟雷撃!」
ディアナの刀身から青いオーラが発せられ、ジャンネルが飛ばした鉄球に合わせて斬り下ろした。
金属と金属がぶつかる音が鳴り響く。
しかし、ジャンネルのもう一つの鉄球がディアナを襲う。
グギッ
生の身体を叩く音が聞こえた。
吹き飛ばされたディアナの吐血が地面を濡らした。
「はあはあ……」
「おいおい、『英傑』にしては弱すぎるのではないか?」
「…………」
「人間の『英傑』なんぞ、大した事ないな~」
「……貴方の仰る……通りかも……知れません…………、私は、クロウ様の妻の中で……最も弱いです」
「ん? クロウ様の妻?」
「セナ様のような誇りも、レイラさんのような才能も、ヒメガミさんのような覚悟も……私には足りていません」
「??」
「それでも……私はクロウ様の妻でありたい。だから、クロウ様には嫌われるかも知れない……この力を使います。守りたいから」
ディアナの声に、ジャンネルはただならぬ気配を感じ、後方に大きく引いて構える。
「私が『黒狼』である事の意味を教えてくださった事、感謝します。クロウ様の為にも私は負けません」
ディアナは剣を高く持ち上げた。
そして。
「解放、『黒狼ノ神』」
ディアナの周辺に真っ黒いオーラが立ちあがった。
雷の轟音が鳴り響く。
見る事しか出来ないジャンネルは冷や汗を流した。
「嘘だろう……『英傑』は伊達じゃないな……」
黒い暴風が晴れる。
中には今までのディアナとは違う形のディアナが立っていた。
髪の色すら茶色から真っ黒に変わっており、目や尻尾も真っ黒に染まっている。
そして、全身から大きな皮のような鎧を着こんでおり、剣を持っていた腕には、剣の姿はなく――――小ぶりの槌を持っていた。
「お待たせしました。これが私の本気、『黒狼ノ神』です。出来れば……クロウ様の許可を取ってから解放したかったのですが……貴方にこの力を出さなければ……勝てなさそうですから」
悠々と立ち塞いでいるディアナに、ジャンネルは一言も返せられなかった。
それくらい、今の彼女からは強者の威圧感が放たれている。
一瞬の油断で、自分の命が吹き飛ぶと悟っているからだ。
ジャンネルは全神経に集中する。
「では、行きますね、神術、怒れる雷の――――」
一瞬で彼女の姿が消える。
ジャンネルはすかさず、上空に飛んでいる彼女を見つけていた。
円盤二つを重ねると、真っ赤な光が溢れ出る
「インパクト! タイプチェンジ! ガード!」
円盤二つは盾の形に変わった。
「大爆震雷撃!!」
ディアナの小ぶりな槌からは、ドラゴンすら小さいと思われる雷が溢れ出て、ジャンネルを飲み込んだ。




