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272.試験

2021/10/23 現行を読んでくださっている読者様へ、お詫びと報告を一点。

270話のクロウくんとお菊さんの話し合いに出た「『お寺』では神様」のくだりですが、実際のお寺では神様ではなく仏様であり、神様は神社だという事をすっかり忘れてしまいました(作者は神様の事に疎いもので)なので、ストーリーに変更はありませんが、より自然にみえるよう追加編集致しました。

「あ、貴方様は!?」


 テルキさんが驚くも、彼女の「よい」と右手を上げると、テルキさんが訓練場の外に行った。



「すまんな、次はそちらの男が受けるのだろう? 相手は私がしよう」


 真っ赤な髪が風に揺れており、その髪の間から出ている一本の角は、彼女が人族ではない事が一目瞭然だった。


 真っ赤な髪と同じ色の真っ赤な瞳が、獲物を狙うかのように、僕から視線を離さなずにいた。


「分かりました、僕はクロウって言います」


「そうか、クロウと言うのか、私は姫神(ひめがみ)というモノだ」


「ヒメガミさん、よろしくお願いします」


「ああ、クロウはどっち(・・・)が得意なのだ?」


 どっちって、武器と魔法の事かな?


「僕は魔法使いです」


「そうか、マホウというのだから、西の客人だな?」


「はい、こちらでは魔法という言葉はないんですか?」


「ああ、我々にはその『魔法』というのは使えない」


 へー! 意外と隣大陸なのに、戦いの文化まで違うのね。


「我々は、それらを『神術(しんじゅつ)』と呼んでいる」


 魔法は神術と呼ぶのか。



 訓練場に僕とヒメガミさんが対峙した。


 隙一つないヒメガミさん。


 それだけで、この人がとても強い人だと分かる。


「いつでもいいぞ!」


「分かりました! では行きますね?」


「ああ!」



 まず、小手調べに風属性魔法で作った風をグルグル巻きにした風玉を撃ってみた。


 ワクワクしている表情がもろに出ているヒメガミさんが素手で、難なく僕の風玉を真っ二つに斬った。


 次は『闇の手』四本を繰り出した。


 ヒメガミさんは一本一本を見極めて、最小限で避けていた。


 凄い!


 ここまで、綺麗に避ける人は初めてみたかも知れない。


 最近ではセナお姉ちゃんが漸く、これくらい出来るようになってきてるから、ヒメガミさんの実力の高さが分かるね。


 まだ『闇の手』は四本しか使えないから、次は魔法も混ぜてみようかな。


 軽く風属性魔法と土属性魔法で作った風玉と土玉を数十発混ぜてみた。



 ヒメガミさんの表情がますます嬉しそうになってる!?


「中々やるね! 流石に避けられないし、仕方ないか」


 ――――「神術! 臥龍ノ神体!」。


 ヒメガミさんの周りに、リヴァの本体に似てる小型龍が五匹現れた。


 その小型龍達が闇の手を妨害する。


「神術! 閃撃(せんげき)連打!」


 先程、僕の魔法を斬った鋭い腕とはまた変わって、重い威圧感が伝わる腕に変わった。


 そして、一撃一撃重い打撃が、僕の魔法を打ち壊した。



「ヒメガミさんって物凄く強いんですね!」


 僕の言葉に彼女は驚くも、


「それはこっちの台詞、次はこちらからも行くよ?」


 言葉が終わると、彼女は目にも止まらぬ速さで、僕の右側の懐に入って来た。


「豪打撃!」「氷属性魔法!」


 彼女の打撃の前に、氷の壁を作った。


 氷の壁を打ち付ける鈍い音が訓練場に響く。


「火属性魔法!」


 ――――そして、僕は彼女に、思いっきり火属性魔法を放った。




 ◇




 ◆姫神◆


 先程感じたとんでもない威圧感。


 その正体は、やはり……この子だった。


 名前をクロウと言った。


 彼は、恐らく、普通の人には決して強そうには見えないかも知れない。


 だが、分かる者が一目見ただけで、その強さが分かるはずだ。


 今まで見て来たどんな人よりも……遥か高みにいる。



 さっき試験官の輝鬼を軽々と破った女も強い。


 だが、この男はその比ではない。


 戦う前から既にその雰囲気を醸し出している。



 試験が始まり、彼はいきなり『無音』で風の神術を繰り出した。


 あの風の丸い塊。


 見ただけで分かるほどに、当たれば――――即死だろう。


 私は急いで、腕に『切断気』を集め、彼の神術を斬った。


 何故か、難なく斬れた事に私も驚いた。



 それから、初めてみる神術が続いた。


 黒い影の触手が四本。


 一体何処からあんなモノが出るのやら……。


 その触手一本一本が素早く強い事がヒシヒシと伝わった。


 私は、最大速度で避けていった。


 彼は……表情一つ変わらず、抜けた表情のまま見つめている……。


 ――――私には本気を出すまでもない。


 そう言っているかのようだった。



 今度は神術でさっきとは違う、風の刃や土の塊を作り出した。


 その数の多さに驚いた。


 あれが、これから容赦なく、こちらに向かってくる。


 そう確信した私は、『神術』と『武術』を繰り出した。


 ――まさか……私が『神術』と『武術』を繰り出しても、足元にも及ばない存在がいるなんて……。




 彼の神術を『武術』で全て打ち壊して、『究極武術』の一つである『神速』で彼に仕掛けた。


 それでも、彼には見え見えだったようで、氷の壁を作られてしまった。


 そこに、私の自慢の『武術、豪打撃』を打ち込んだ。


 私の豪打撃で壊せない壁が今まで存在していただろうか?


 ダンジョンのあの見えない壁ならまだしも……人が作り出した氷の壁がほんの少し傷ついただけだった。


 ああ……これほどまでに強い人がいるなんて、想像もした事がなかった。



 ――そして、彼は炎の光線のような神術を繰り出した。


 今までみてきたどの炎よりも、熱く、穏やかながら激しく、深紅の美しいその神術が私を襲った。




 ――――今まで()ったどの炎よりも、美味(・・)な炎だ。

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