270.空の旅
予想していた事と反して、まさかの読者様の評価ポイントが先に一万を超えました!!ブクマポイントの方が先行するイメージがあったので……とても嬉しく思います!これからも続きますので、どうか最後まで読んで頂けたら幸いです。
それと補足になりますが、232話 (セナ)の件での多くの意見に対する作者なりの補足意見を232話の後書きに追加で書いております
まず、今いる場所、港町シナノは東大陸の西側に位置する。
そこから東大陸の中央にあるという首都エドオリに向かい、東を目指した。
馬で行くのか、馬車で行くのか、どうするのかと思ったら、まさかの…………歩きだった。
「お菊さん、歩きだと、首都エドオリまで何日かかるんですか?」
「そうさね、大体一か月って所かしら」
「い、一か月!?」
「そりゃ、歩きだからね~、うちの旦那みたいな獣人族の速足なら二週間くらいで行けちゃうんだろうけど」
隣のゴロスケさんも頷いていた。
このままでは、事が大きくなると大変だから……これは飛ぶしかなさそうだ。
「えっと、僕達、急いでいるので……飛んで行っていいですか?」
「えっ? 飛んで行く?」
「はい」
「「???」」
僕は三本の『闇の手』を出した。
「ひい!?」「なっ!?」
その三本で、レイラお姉さん、お菊さん、ゴロスケさんをぐる巻きにした。
これから安全に飛べるね!
一応念のために、僕の肩に乗っているソフィアからも粘着性のある触手を追加でくっつけておいた。
お菊さんが声にならない声で何か叫んでいたけど、きっと、レイラお姉さん同様楽しんでいてくれていると信じよう。
あまり時間がないから、お菊さんごめんね?
◇
話せる状態じゃなかったお菊さんは置いといて、何とか意思疎通が取れたゴロスケさんのおかげで、首都エドオリが見えるくらいの所の、近くの森に着地した。
最終的にお菊さんは気絶していたから、割と静かに飛べていた。
所々に村も見えていたし、飛んでるうちに飛ぶモンスターにも襲われたけど、ソフィアの一撃で全て落としていた。
森は少し不気味な雰囲気だったが、モンスターの気配は全くしない。
ゴロスケさん曰く、首都エドオリの防衛隊が定期的にモンスターを狩っているからだと教えて貰った。
お菊さんが起きるまで、僕達は焚火をした。
実は焚火、人生初めてだよ!
ソフィアが瞬足で薪用の木の枝を集めてきてくれた。
流石のゴロスケさんも苦笑いする。
集めた木の枝に火を付けると、レイラお姉さんも初めての焚火だとはしゃいでいた。
うんうん、僕も楽しいかな!
今度、奥さん達と焚火してみたいね!
「はっ!? あれ……私……空を……? 夢かな?」
「残念ながら夢じゃないよ、取り敢えず、その涎を拭きな、お菊」
ゴロスケさんからタオルを貰い、お菊さんは恥ずかしそうに身だしなみを整えた。
「全く……この歳にもなって、こんな事になるとはね……」
「あはは……少し急いでいたので、すいません」
「まあ、面白い経験になったからいいさね。でも帰りは遠慮させて貰うよ、うちらはのんびり歩いて帰るよ」
「分かりました」
折角の焚火なので、『異次元空間』から魚を皆の分、取り出した。
「なっ!? 何処から出てきたんだい!?」
「僕の『アイテムボックス』に入れていた魚ですよ~」
「『アイテムボックス』なのに、今獲れたと言わんばかりの新鮮な魚が!?」
「あはは……特別製の『アイテムボックス』なんですよ~」
ゴロスケさんがお菊さんの肩に手を上げ、首を左右に振った。
――「何を言っても、これが現実だ。気にしたら終わらないからそんなもんだと納得しよう」と言わんばかりに。
串に刺した魚を焚火で炙って、美味しそうな匂いが広がった。
出来上がった魚串を、僕達は夢中で食べた。
とても美味しい!
お菊さんが、こんな新鮮な魚を森で食べられるなんて……とぼやいていた。
「それでは、先ず、今の情報を話すさね。ここからもう少し東に向かえば、首都エドオリが出てくるはずで、その首都エドオリから南に向かうと、ダンジョンがある町『イセ』という町があるさ。そこでダンジョンに入れるんだけど、入れるのは首都エドオリで許可証を持った者だけなのさ」
「その許可証は何処で手に入りますか?」
「それは『お寺』という場所で試験があって、合格すれば貰えるはずさね」
やっぱり、こういう風景だから、しっかり『お寺』もあるんだね。
仏様とか祀っているのかな?
「『お寺』ってどんな仏様を祀ってるんですか?」
「ほとけ様? それは初めて聞く言葉だね。『お寺』では神様を祀っているんだよ」
「へえ! 『お寺』では神様を祀っているのですね! てっきり、仏像とかが建てられていると思いました」
「ふつぞう? それは何かは分からないけれど、神様の像なら建てられているわよ」
「へえ! やっぱり、神様の像があるんですね!」
どうやら、この世界での『お寺』は仏様ではなく、神様を祀っているみたい。
日本だと、神様を祀っているのは、神社だったんだけど、この世界にはないのかな?
「あんちゃん……本当にこちらの大陸の事が詳しいんだね、『お寺』が神様を祀っている場所だと、よくわかったもんさ」
あっ! またやってしまった……。
「あ、あはは……うちの従業員さん達からよく聞いていたので……」
「ふう~ん、従業員ね」
お菊さんの鋭い視線が痛い。
「まあ、いいさね。『お寺』で祀っている神様の名前は『天照大神』様だよ、ヤマタイ国の宗教でもあるさね」
天照大神様か……、これも何処か前世に似てる名前な気がする。
「この『天照大神』様を祀っているのは『天照教』という宗教なんさ、一応、女王の一族しか就く事が出来ないので、西大陸風に言うと、権力が強いわね」
女王の威厳の教か……以前のカイロス教会と似た感じなのかも知れないね。
「それと、『天照教』は実力主義でもあるので、最上位戦士『スサノオ』達に勝てたら、最上位の職業にも就けると言われているわさ、ただ、今まで誰一人成し遂げられなかったけれど……」
それからお菊さんから、ヤマタイ国の戦士の位を教わった。
最上位戦士『スサノオ』が主軸となり、国軍を率いているようだ。
グランセイル王国に例えるなら、将軍とかになるのかな?
それと、神術という術を使える者を『ツクヨミ』と呼ぶらしい。
『ツクヨミ』は『スサノオ』と以上に凄い人達のようだ。
感覚的には『賢者』に近いようだ。