261.テーマパーク
更に一か月が経ち、冬になった。
少し肌寒い季節になったこの時期、遂に例のモノが完成した。
――――『テーマパーク』の完成だ!!
と、完成したんだけど、実はまだ公開しない事になっている。
何故かと言うと、来年の夏まで、一般公開はしない事になっているからだ
一般公開しないでどうするのと思っていたら、毎日僕に使って貰いたいらしい。
ええええ!?
あんなに凄い遊園地を独り占めするの!?
あっ、奥さん達と楽しんでくださいって……う、うん、そうだよ? 僕もそう思っていたよ?
とにかく、来年の夏までは、僕専用遊園地になる事が決定した。
冬期間の三か月間は僕専用で、春からの三か月は週に一度、従業員達に開放する事にした。
◇
「という事で! みんなでテーマパークです!」
「くろにぃ、それ誰に向かって言ってるの?」
「えっ? なんとなく?」
奥さん達からクスっと笑われた。
僕の家族、エクシア家、お義父さんやお義母さん方々、アカバネ大商会の管理職や知り合いの皆で遊びにきた。
入口には改札があって、従業員さんから腕に紙のようなテープを張ってくれた。
どうやらアトラクションに乗る際に見せるらしい。
中に入ると目の前に見えるのは、大きなスライムの銅像と一緒に噴水になっていた。
この『テーマパーク』の名前。
――――それは『スライムランドパーク』だ。
そのモデルになっているのは、アカバネ大商会の、いつの間にかマスコットとなっているソフィアだ。
本来ならナターシャお姉ちゃんのモチーフにした天使だったんだけど、カナン町を建設した頃からかな? ソフィアの活躍もあって、従業員達でソフィアを崇める会も開かれていると噂されているくらい人気が出て、ナターシャお姉ちゃんからもスライムの方が可愛いというのもあり、『スライムランドパーク』になった。
当の本人のソフィアも非常にご満悦のようにしている。
僕は、初めての遊園地に心が躍った。
◇
最初に来たのは、正面噴水から両サイドに並んでいる商店街だった。
甘いお菓子の香りがふんわりと広がっていて、更に色んな人形が売っていた。
ナターシャお姉ちゃんを模したプラチナエンジェル。
ソフィアを模したテーマパークのマスコットキャラクターの『ぷよぷよスライム』。
――――僕の女神化を模した女神様人形。
どれも可愛らしく作られていた。
「ねぇねぇ! くろにぃ! この人形可愛いから買って!」
リサが女神様人形を持っておねだりしてきた。
それを見た他の奥さんたちもみんな女神様人形を持った。
少し悲しい気持ちになりながら、奥さんたちに女神様人形をプレゼントした。
その傍らで僕はプラチナエンジェルとぷよぷよスライムをこっそり買った。
噴水をぐるっと回り、商店街を抜けるとアトラクションが見え始め、その前に風船がタダで貰えた。
この風船、実はものすごく最先端の技術が使われている玩具だ。
中には水が入っており、水風船でぷよぷよしていてスライムの形がしていて、ソフィアの触り心地を再現していた。
更に、緩い飛行魔法が掛かっているので、その場で浮かぶのだ。
持続は二十四時間と短いけれど、これから『スライムランドパーク』に訪れるであろう多くの子どもたちには素敵なプレゼントになるに違いない。
風船を持った僕達は次なるステージに進むと、そこには看板が三つ出ており、『左側、広場』『真っすぐ、アトラクション』『右側、自然』と書かれていた。
取り敢えず、ここでチームで分かれる事となったので、僕と僕の奥さん四人とレイラお姉さんの六人で真っすぐのアトラクションに向かった。
本当は右側に行ってみたかったけど、セナお姉ちゃんの無言の圧力……いや、優しい目線…………で、アトラクションに行く事にした。
まず遠くにアトラクションが見えるが、中々に遠く感じる。
そう思っていると、なんと、目の前の道が動いていた。
その道に乗ると、何もしなくてもそのままアトラクションステージに向かうそうだ。
僕達はそのまま動く歩道に乗って流れる景色を眺めながらアトラクションステージに向かった。
◇
アトラクションステージに着くと、目の前には本でしか見た事がなかった数々のアトラクションが広がった。
一番の高台には『観覧車』がでかでかと立っており、時計の針のようにゆっくりと回っていた。
更にそこから右手に空中を舞うように設置されている道があり、そこを超高速列車が走る。
その種類も弱、中、強と三種類のジェットコースターが設置されている。
弱いジェットコースターは『マイルドコースター』。
普通ジェットコースターは『ジェットコースター』。
強いジェットコースターは『ライトニングコースター』。
と名付けられているそうだ。
ジェットコースターを見るや否やセナお姉ちゃんが目をキラキラさせて、僕をぐいぐい引っ張ってジェットコースターに向かった。
「せ、セナお姉ちゃん! ジェットコースターはあとから乗るものだと思うんだ! 最初から乗るものじゃないと思うんだ!!」
「何言ってるの! ここが完成したら一番最初に乗るって決めていたのよ!」
「せめて最初はマイルドから行こうよ!! 最初からライトニングがいくらなんでも――」
「最初から一番凄いのに乗るから面白いでしょう!」
「ま、まだ時間はいっぱい――――「ほら! ライトニングに到着!」、早いよ! え!? 本当に乗るの!? あっ、ナターシャお姉ちゃんも僕を押さないでよ!」
こうして僕の人生初めての遊園地の乗り物は超高速列車『ライトニングコースター』に乗らされたのだった。
「い、いやぁあああああああああああああ」
超高速のライトニングコースターから女性の笑い声と共に、クロウティアの悲痛な叫びが『スライムランドパーク』に響き渡った。