254.初夜と赤ちゃん
挨拶周りを終えて、帰って来た時には既に夕方だった。
僕は奥さん達と夕食を取り、これからの事を少し話しつつ、他愛ない話しをした。
寝る時間になったので、みんなお風呂に入って寝る事になった。
あ……疲れた身体にお風呂は楽園だね~。
普段よりも長いお風呂を堪能した僕は、自分の部屋へ戻った。
――――しかし。
そこで待っていたのは――――。
いつぞやの夢で見た、ほんの少し透けて身体のラインが見える寝間着だった。
違う。
寝間着が待っていたんじゃない。
寝間着姿の奥さん達四人がいた。
「えええええ、え、え、え、――――みんな、なぜ、ここ、に?」
「クロウ……何言ってるの? 夫婦何だから一緒に寝るのは当たり前でしょう?」
あ……そうだった……。
夫婦って一緒に寝るのだった。
いや、夫婦になった事がなかったから分からなかったよ。
うん。
うん…………。
はぁ、そうか……。
これから奥さん達と寝なくちゃいけないよね……。
奥さん……達の…………寝間着…………下着姿…………。
◇
――――――「はっ!?」
僕が目を覚ますと、ベッドの上だった。
何だか……幸せな夢を見ていたような?
周りを見てみると誰もいない。
それもそうか。
僕の部屋だしな。
あれ? 昨日、何したっけ……。
何だか……長い長い幸せな夢を見ていた気がする。
僕は起きて、部屋を出た。
いつものように朝食を食べにリビングに向かった。
リビングに入るとナターシャお姉ちゃん、セナお姉ちゃん、リサ、ディアナが朝食を取っていた。
あれ?
「この光景、何処かで見た事あるよ?」
「寝ぼけてないで、顔洗って来なさい! クロウ!」
僕はセナお姉ちゃんに言われるがまま、顔を洗って、朝食を取った。
朝食が終わる頃、
「えっと……昨日は、僕、どうなったの……かな?」
リサが一溜息吐いて、話してくれた。
「くろにぃ、昨日は私達の寝間着に興奮して、あのまま気絶しちゃったよ?」
ぐはっ…………やっぱり、また気絶していたのか……最近気絶する回数が増えた気がする。
◇
◆昨晩◆
「あ……これは、また気絶したのかな?」
「うん……そうみたいね」
「クロウ様にはまだ刺激が強いのかも知れません……」
「ナターシャ姉さんの透ける寝間着は、クロウにはまだ早かったのかしらね」
実はアカバネ大商会の『アカコレ』が決まった頃。
ナターシャが真っ先に取り掛かったのが、下着作りだった。
何故かというと、本人はクロウティアの為を思って、作り出した事らしい。
セシリアからのアドバイスもあり、下着産業を『ランジェリー』と呼ぶようになる。
この『ランジェリー』産業は、世界に大きな衝撃を与えた。
アカバネ祭には決して出なかったのだが、女性達の噂は瞬く間に広がり、多くの女性の為の『ランジェリー』が広がった。
その中でも、最も人気があったのが『少し透けるワンピース風寝間着』だった。
可愛らしいデザイン。
寝間着の中をほんの少しだけ見せる透け感。
身体のラインや下着の形、色が少し見える透け感。
それはナターシャが思いついた『|見えなさそうでギリギリ見える《チラリズム》』事だった。
そして、それは物凄い人気を博し、実は大人の世界では爆発的な売り上げを上げていた。
クロウティアにはまだ報告していなかったが、アカバネ大商会の中でも売り上げ上位に入っている産業だったりするのだった。
「では、明日はもう少し緩い感じにしようか?」
ナターシャとセナとディアナが、ああだこうだと話している間にアリサは何かを考えていた。
「ねえ、アリサちゃん。どうしたの?」
三人の視線がアリサに集まった。
アリサは優しい笑みで四人の前に気絶――――もとい、寝ているクロウティアの頭を優しく撫でながら話した。
「そんなに急がなくてもいいんじゃないかな? くろにぃはくろにぃの速度で歩けばいいと思うな。だって、もう急がなくても、私達はくろにぃの奥さんになったんだから」
それを聞いた三人もぱーっと笑顔になった。
「そうね。私達は私達の速度で進めばいいよね」
◇
顔が真っ赤になったクロウティアが呟いた。
「ど、どうしよう……誓いのキスもしたし…………同じ布団で寝たから……その……赤ちゃん楽しみだね」
それを聞いた四人がキョトンとした表情になった。
「えっと、くろにぃ、一応聞くけど。赤ちゃんの作り方って知ってる?」
「え!? そんなの……結婚して、誓いのキスして、同じ布団で……寝たら、出来るんでしょう? それくらい分かるよ!」
四人は顔を合わせ、大笑いした。
本来なら成人前に親が教えるのだが、肝心の両親は上兄二人と娘には教えていたが、何でも出来る三男がまさか知らないとは思いもせず、教えていなかったのだ。