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246.新たな夫婦

 僕が学園を卒業する直前。


 大きなイベントが二つあった。


 それは――――。




 ◇




 今日はエドイルラ街の広場に来ていた。


 空には花吹雪が舞っており、街は大きな歓声に包まれていた。


 誰もを祝福するかのように、ベルの音が鳴り響く。


 広場のステージの上には二人が、美しい礼服とドレスに身を包んでおり、その前には『女神教会』の教皇様であるセシリアさんが立っていた。



「汝ら、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、夫を愛し、妻を愛し、敬い、慰め遣え、共に助け合い、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」


「「はい、誓います」」


「では、これにて、二人の結婚を認めます。誓いのキスを――」



 デイお兄ちゃんとミリヤお姉さんがキスをした。


 二人を祝福する声援と拍手がエドイルラ街を包んだ。




 この日。


 大陸の歴史上、初めて大貴族と獣人族の結婚が執り行われた。


 この結婚により、今まで獣人族と結婚出来なかった多くの貴族達に勇気となり、また今まで蔑まれてきた獣人族の立場も向上するのであった。


 形は違えど、皆、同じ『人』なんだと。


 その功績から、遠い未来の歴史では、獣人族の夜明け(・・・)をもたらしたと、今回の結婚を彼の名前に因んで、デイブレイク(・・・・・・)と呼ぶようになり、未来永劫愛されるのであった。




 ◇




 デイお兄ちゃん達の結婚から三日後。


 僕達はアーライム帝国の帝都グランドに来ていた。


 広場には祝福の音楽は鳴り響いていた。


 ステージ前例には、片側に騎士達、片側に聖職者達という異例の雰囲気だった。



「汝ら、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、夫を愛し、妻を愛し、敬い、慰め遣え、共に助け合い、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」



 セシリアさんの美しい声が広場に広がる。


 その言葉を、多くの観衆が見守った。



 新郎の類稀(たぐいまれ)な体格と新婦の可愛らしい体格差が非常に目立っている。



「「はい、誓います」」


「では、これにて二人の結婚を認めます。誓いのキスを――」



 新郎が新婦の前に跪いた。


 ――――そして。





 この日。


 大陸の歴史上、初めて枢機卿の結婚が執り行われた。


 初めての女性枢機卿であり、初めて枢機卿でありながら結婚をした。


 この事実は、今までの教会の教えを一新するモノであった。




 この結婚を誰よりも喜んでいたのが、意外とレイラお姉さんだった。


 レイラお姉さんには、お父様である皇帝の近くで祝ったらどうかと相談してみたけど、あくまで人質だから僕の隣が良いって聞かなかった。


 新郎新婦が退場する際、僕達を見かけると、その場に止まり、僕達に深々と一礼した。


 これからの二人の幸せを祈ってます。


 ちゃんと幸せになるという罰だからね!




 ◇




 デイお兄ちゃんの時は、島で盛大に宴会を開いて、夜もずっと宴会状態だったけど、今回は帝国の方だからそういうのはなかったので、そのまま島へ戻って来た。


「くろにぃ! サテラさんすっごく綺麗だったね!」


「え? うん! そうだね!」


 いきなりリサが新婦さんを褒めた。


「あのドレスって、アカバネ大商会が出していたドレスだよね?」


「え? う、うん。ナターシャお姉ちゃんが考えたドレスだね」


「そっか~」


 リサがニヤけているけど、どうしたのだろうか。


「そう言えば、この前のミリヤさんのドレスも綺麗だったわね」


「あ! 私も思ったよ!」


 今度はセナお姉ちゃんも参加し出した。


 更にディアナも参加して三人がドレスの話しで盛り上がった。


 あのフリフリが綺麗、とか、あの模様が綺麗、とか、スカートの形が綺麗、とか…………うん、楽しそうなのは良い事ね。


 それを一緒に聞いていたレイラお姉さんはちょっとだけ寂しそうな表情をしていた。




 ◇




 ◆アリサ◆


 先日デイブリッド様の結婚式、そして本日のアデルバルト伯爵様の結婚式に参加した。


 二人の奥さんになるミリヤさんとサテラさんはとても綺麗なドレスを着ていた。


 一か月程掛けて、ドレスを見ていたと聞いていた。



 正直言いたい。


 私達の結婚式っていつなの!?


 くろにぃったら全然興味なさそうにしているでしょう?


 あと一か月もしないうちに、学園を卒業して、年が明けると十五歳になるんだよ!?



 あの時……結婚してくださいと言われて、物凄く嬉しかった。


 あまりにも嬉しすぎて、ずっとニヤニヤが止まらなくて大変なくらいに。


 なのに……


 なのにだよ!?


 何で、まだ『結婚式』の話しが出ないのよ!


 まさかとは……思うけど……くろにぃの事だから……、忘れてたとかないよね?


 まさかね~、こんな一大事な事を……忘れてるとか…………本当にないよね??



 不安になったので、結婚式帰りにくろにぃにドレスをアピールしてみる事にした。


 …………なんでポカーンとなってるのよ……はぁ。


 セレナせんぱ……じゃなかった、セナさんも話しに乗って来たので、ディアナちゃんと三人でドレスの話しで盛り上がった。



 そう言えば、最近増えたレイラさんはどうするのかな?


 セナさんの代わり身として、人質になったって言っていたけど、セナさんは既にここにいるし、結婚も決まっているからね。


 でも、あの人。


 多分、くろにぃの事が好きだと思う。


 くろにぃを見つめる目がいつもハートになっているからね。


 人質も自分から買って出たらしいし……もしかして、それを言い訳に…………憶測で話しても仕方ないけどね。






「はい、私はクロウ様に会う為、わざと人質になりました」


 あ――――気になって聞いてみたら、そんなあっさり答えてくれるんだ……。

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