228.神
コンテスト、最終選考で落選してしまいました……応援してくださった方々ありがとうございました!
次のコンテストを目指して頑張ります!
――【クロノスリザレクション】
僕の質問にメティスが答えてくれた。
『クロノスリザレクション』。
初めて聞く魔法の名前だけど、不思議ととても心地よい名前だった。
【クロウくん、それは魔法ではないわ。だから魔法ではなく、クロウくんの願いを込めて、使うの】
僕はリサの手を握った。
そして、目を瞑って、祈った。
神様。
僕をこの世界に転生させてくれてありがとうございます。
僕の弱さで、またリサを守る事が出来ませんでした。
でも……それでも、僕はリサと一緒に生きていたい。
だから……。
どうか、彼女を……助けてください。
「クロノシア、リインカーネーション」
【…………】
◇
そこは真っ白い世界だった。
ここって――――
「ほっほっほっ」
僕は聞き慣れたその笑い声がする方に、目を向けた。
そこには――――
「久しぶりじゃの? クロトくん……いや、クロウティアくんかの?」
僕が転生する際に、会っていた神様だった。
「神さ……ま?」
「ほっほっほっ、そうじゃな、儂は君達の世界の『神』と呼ばれているから、そう呼んでくれてよいのじゃ」
お爺ちゃんは、あの時と何も変わらない、優しい笑顔で僕も見つめていた。
ああ……お爺ちゃんを見ていると、何故か涙が流れた。
「僕は……また……リサを守れませんでした…………」
「そうじゃな……」
「でも、僕はやっと分かりました。リサに幸せになって欲しい……そう考えてきました」
僕はお爺ちゃんを真っすぐ見つめた。
「でも、違いました。僕は……リサと共に生きたい。一緒に幸せになりたい。だからお願いします。どうか僕にもう一度チャンスをください」
僕はお爺ちゃんに頭を下げた。
心の中には、ただそれしかなかった。
必死で、これしか僕に出来る事はないから。
「ふむ、ではクロウティアよ、選ぶがよい。君が持っている大きすぎるその力を犠牲に、リサを助ける覚悟はあるのか?」
確かに僕には大きすぎる力がある。
でも、そんなモノ無くたって、何の問題もない。
だって、僕は知っている。
僕を、僕達を待っていてくれる人達がいる事を。
僕に力が無くても、僕達は前に歩けるはずだ。
「勿論、あります。僕はどうなっても構いません。リサと一緒に生きられるなら」
「――――、アルテアの全ての人々から、君の記憶が消えたとしても?」
「はい、大丈夫です。だって……僕は信じてます。もし、皆が僕を忘れても僕は決して忘れません。記憶が無くなっても、絆が消える事はありません。だから、そこからもう一度始めます。今度は――僕から皆に繋がります」
僕の迷いのない返事に、お爺ちゃんは嬉しそうに笑ってくれた。
「クロウティアや」
「はい」
「儂から一つお願いがあるのじゃ」
「お願い……ですか?」
「そうじゃ、今からアルテナの時間で、二年後。再度儂を訪ねて来て欲しいのじゃ」
「再度……ですか? でも、僕、どうやって――」
「それは君の最も近くにおる者に聞くと分かるじゃろう。そろそろ時間が無くなってしもうたな。クロウティアよ、その心を決して忘れずにのぉ」
「!? お爺ちゃん! ありがとうございます!!」
「お爺ちゃんか……ほっほっほっ」
お爺ちゃんはまた嬉しそうに笑ってくれた。
「そうじゃ、クロウティアや。最後に良い事を教えてあげよう」
消えゆく意識の中、お爺ちゃんから衝撃的な事実を知る事が出来た。
――――僕は、前世で、リサと一緒に自殺した。
しかし、現実はそうではなかったとの事だった。
そもそも、人を殺した罪は大きい。
理由はともあれ、悪意がなくとも、明確な意思で人を殺した罪人が転生等出来るはずもないという。
僕が火を付けたのは、机の上に丸めた新聞紙。
確かに火は付いた。
でも、その新聞紙からテーブルは燃えなかったそうだ。
だから……新聞紙が燃え終わり、僕達はそのまま寝ていただけだったそうだ。
僕達が死んだ本当の原因。
――――自暴自棄になった父親が、家に火を放ったという事だった。
◇
「ほっほっほっ、良い子ではないか」
お爺ちゃんの前には、揺れている小さな炎があった。
「其方の念願。きっと叶えられるじゃろう」
小さい炎が揺れた。
「なに、そんな心配する事もあるまい。彼を見守っていれば、いずれ辿り着くじゃろう」
小さな炎が少しずつ、小さくなっていった。
「其方も無理はせずにな」
炎はやがて、消えてなくなった。
「――――――『神』、か」
真っ白い空間には、一つ、溜息が響いた。