222.教会の地下
※本日始まるこの話しから、最後までシリアスな展開が続きます。シリアス展開がどうしても苦手という方は申し訳ございませんが、227話から読んでください※
僕とリサ、ソフィアは教会の地下に降りた。
地下は一本の長い廊下になっており、左右に部屋があった。
その部屋の中から、多くの生命反応があった。
恐らく、拉致されてきた奴隷や信者達かも知れない。
僕とリサは廊下の先に進み、ソフィアに捕まっている人達を解放するようにした。
◇
廊下の一番奥に、大きな広場があった。
その広場には地上の華やかで美しさの欠片もない、禍々しくてどす黒い雰囲気しかなかった。
広場の中央には、不思議な魔法陣が書いており、逆五芒星が描かれていた。
その五芒星の折り返し地点にそれぞれの枢機卿が祈りを捧げていた。
――まるで、機械のように。
そして、奥には真っ白いローブに、背丈の高い帽子を被った、優しい表情の老人が一人、玉座に座っていた。
――ああ、この人が教皇か。
「教皇……! エデン・デュカリオン!」
「ん? ほぉ、帝都に入った『鼠』は……お前達だったのか、女……その顔は……セシリアの娘か」
彼の鋭い目線が僕達を睨んだ。
「ここが分かるとは……大したモノだ……ただの人間にしては中々どうして」
「くっ、お前がこの戦争を引き起こした理由はなんだ!」
「ん? ――――ほお! お前は……そうか! クロウティアなのか!」
「ッ!?」
「グハハハハ! そうか! 成程、成程」
教皇は何かを納得したように、頷いている。
「まさか、アカバネ大商会を作ったのは、クロウティア、お前の仕業だったのか」
「それがどうした!」
「くっくっくっ、何も知らないお前に慈悲をやろう。お前がアカバネ大商会を作ったおかげで、儂はこの戦争を始める切っ掛けが出来たのだ。お前には感謝しているぞ?」
「なっ!? この戦争を……わざわざ起こしたというの!?」
「ああ、そうだとも!」
理解出来ない。
戦争をして、一体何の得になると言うの?
「儂は長い間、この時を待ち続けていた。人々が血を流すこの瞬間を……それをまさか、お前が手助けしてくれていたとは! グハハハハッ! これは傑作だな!」
一体、この人は何を言っているの?
「更にお前自ら儂の元に来るとは……くっくっくっ、これも運命というやらかもしれぬのぉ」
この教皇、全く強い気配がない。
この人……本当に人なのか?
「これで遂に儂の悲願も叶う事だろう、くっくっくっ、彼奴めの悔しがる姿が浮かぶわい、クハハハハッ!」
「リサ、先に僕から仕掛けるから、補助お願いね」
「うん。分かった。くろにぃ、気を付けてね」
僕とリサは小さい声で話し合った。
この教皇は、何処か可笑しい。
このままにはしておけない。
僕が仕掛けようとした時。
「クロウティア、儂からのプレゼントは気に入ったかな?」
「プレゼント……??」
「そうとも、お前が必死になって守ろうとしたあの町は、儂のプレゼントで吹き飛んだであろう?」
「ッ!? やっぱり……やっぱり! お前がホフヌグ町を消滅させたのか!!」
「クハハハハッ、久しぶりの『グランドクロス』は綺麗じゃっただろう?」
「ッ――お前だけは、お前だけは許さない!!」
「くろにぃ! 落ち着いて!」
「闇の手!!」
僕は全力で、教皇に向かって『闇の手』を発動させた。
一瞬で、十本の手が教皇を――――、
「ホーリーランス」
教皇の詠唱で、光の槍が十本現れた。
『闇の手』は光属性魔法に完全消滅になる。
放たれた光の槍で、僕の『闇の手』十本が消えてなくなった。
「ッ!」
僕は急いで、火属性魔法を発動させて、飛んできた光の槍を撃ち払った。
「ほお! 無詠唱でそこまで使えるのか、流石はアイツが託しただけの事はある」
アイツ? 誰の事だ?
それに、この教皇、強さが全然感じられないのに、光属性魔法をあんなに簡単に使えた。
更に、一回の詠唱で十本の光の槍を出していた。
「くっくっくっ、中々楽しませてくれそうだ。では儂も少し本気を出そう」
教皇が立ち上がった。
そして、教皇からは今まで感じた事もない、禍々しいオーラを放った。
それと同時に、リサの右目に十字架の光が浮かび上がった。
「なっ!? 嘘!? そんな……」
「ほお? クハハハハッ、まさか『聖女』も一緒だとは! クハハハハッ!」
教皇は僕が思っていた以上の存在だった。
――――本陣衝突まで、あと3時間。