216.星が降った後
その日は神々に祝福されたと思える程に、晴れた晴天の天気だった。
束の間の戦争中の休息。
連合軍も帝国軍も、初戦の疲れで死んだように休息を取っていた。
中には既に死んで行った者達を悔やんでいる者も多くいる。
アカバネ大商会の従業員達による、戦死者の回収も既に終えていた。
――――そんな中。
――――誰もが思いもいなかった事件が起こる。
その町の名前は『ホフヌグ町』。
大災害で居場所を失った多くの帝国民達の為に建設される予定だった町だ。
現在は戦争に巻き込まれていた。
その町に異変が起きる。
晴れは晴天。
そんな空から、一筋の光が町の中心を照らした。
――そして。
一筋の光の中から、光の十字架が町に降りてきた。
その十字架はあまりにも神々しく、町にいた全ての者は、その十字架に見取られていた。
その光景に、戦争を憂いた人々は祈りを捧げる人もいた。
十字架が町に降りて、十秒が経った。
――
――――
――――――
――ホフヌグ町から轟音と共に、大爆発が起きた。
◇
僕は戦死者と弔い、アカバネ島に戻ってきた。
その時、アカバネ大商会に緊急連絡が入った。
「く、クロウ様!!」
大急ぎでディゼルさんが走って来た。
只事ではないのが分かる程に慌てていた。
「ディゼルさん、どうしました?」
「お、驚かずに聞いてください……ほ、ホフヌグ町が……」
「ホフヌグ町が?」
「――――消滅しました」
え?
消滅?
ホフヌグ町が?
……??
「原因は分かりません。ですがホフヌグ町から大爆発があり……ホフヌグ町の人々と共に……消滅――」
ディゼルさんの言葉が途中、
僕はとある事に気づいた。
何か、大切な事をずっと忘れていた気がした。
どうして……。
どうして今まで気にしてなかったんだ!!!
ホフヌグ町には……
僕の……
大切な……
「イカリくん……は?」
ディゼルさんは唇を噛みしめていた。
「ねえ、ディゼルさん……イカリくん……は……生きて……ますよね?」
ディゼルさんは俯いた。
「お願い……生きているって……無事って……言って……く……だ…………」
◇
ホフヌグ町の大爆発。
その事実は、瞬く間に大陸中に広がった。
何故なら、大陸中、何処でも見える程の大爆発だったからだ。
その大爆発は戦争の在り方を変える事となった。
それぞれの想いを胸に、彼らは戦争に翻弄されるのであった。
◇
セレナディアはホフヌグ町の消滅を目の前で目撃した。
目の前と言っても、打ち合わせの為に連合軍の東軍に訪れていた時の事だ。
その眩い光と共に、大陸中に響き渡った轟音。
今でも耳に残っている感覚がある程に、衝撃的な出来事だった。
その事件によって、彼女には一つ、思い浮かんだ事があった。
あの町には多くのアカバネ大商会の者達がいた。
――弟の友人もいたはずと。
セレナディアはジョゼフに断わりを入れ、アカバネ島に急行した。
そして、目の前には泣き崩れている弟の姿と、一緒に泣きながら弟を介護しているアリサとディアナが見えた。
◇
帝国の全ての町、帝国軍にある声明が発表された。
それは教会からの声明だった。
――――「グランセイル王国は卑怯にも、帝国軍が多く駐屯していた復興の町に大型兵器を使用した。これは許される行為ではない。カイロス信者達よ、決して彼らを許してはならない! 彼らにカイロス神の天罰を!!」
その声明の効果は絶大だった。
誰もがグランセイル王国とアカバネ大商会に憎しみを持つようになった。
最もその声明に感化されたのは、帝国軍だった。
帝国軍は怒りに震えた。
――グランセイル王国を許すな。
――アカバネ大商会を許すな。
彼らは今一度団結するのであった。
ホフヌグ町の消滅。
その事件はのちに『星が降った日』として記される事となるのであった。