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214.剣聖vs剣聖

 剣聖二人はお互いの剣を抜き、構えていた。



 ――風が止んだ。



 その瞬間、二人はお互いに仕掛ける。


 王国剣聖の初撃剣戟を、帝国剣聖は受け止めると、すかさず王国剣聖は一歩下がり相手の攻撃を待った。


 予想通り、受け止めた帝国剣聖のカウンターが王国剣聖を襲う。


 その鋭くも重い剣戟一振り一振りの音が戦場に響き渡った。


 帝国剣聖の連続剣戟に、王国剣聖が少しずつ後退しながら、相手の攻撃をいなした。



 本来、武器での戦いはお互いの刀身をぶつけ合うのが通常だ。


 しかし、彼女達の戦いのレベルは既に最高峰であった為、彼女達のぶつかり合う剣は刀身ではなく、剣先であった。


 数十センチもある刀身ではなく、数ミリしかない剣先での攻防。


 当たるはずがないのに、お互いの剣先がぶつかり合う。


 一合、二合、――――――、十合。



 戦場の兵士達がたった一度の息を吸う間の出来事だった。



 その、人ならぬ最高峰の戦いに、全ての兵士達は恐怖した。


 自分達が戦っているのは化け物(・・・)なのだと。



 お互いに三十合打ち合った彼女達は一度距離を取った。


 けれど彼女達にはその距離も大した問題ではないはずだ。


「剣技!」「剣技!」


「「青龍(せいりゅう)型、神速剣(しんそくけん)!」」


 二人はまるで打ち合わせかのように、剣技を発動させた。


 瞬きの間――――。


 彼女達の姿はただ一瞬でお互いを通り過ぎただけであったが、戦場に響く剣と剣がぶつかり合う音は何重にも重なり爆音となっていた。


 一体、あの刹那に何回剣と剣がぶつかり合ったのか。



「剣技、白虎(びゃっこ)型、凶鋼斬(きょうてつざん)!」


「剣技、玄武(げんぶ)型、冥水剣(みょうすいけん)!」


 王国剣聖の白く光る剣戟と帝国剣聖の青く光る剣戟がぶつかり合った。


 戦場に響く音は、大魔法が放たれたかのようだった。




 二人は少し距離を取り、息を整えた。


 そして、またぶつかり合う。


 二人は剣技を数回繰り出し、お互いに相打ちとなっていた。




 ――――そんな人離れした戦いも十分が経とうとしていた。


 たった十分なのに、見つめる兵士達には数時間にも感じる程の戦いだった。




 既に両剣聖には無数の傷が増えていた。


 深刻な傷はないものの、このまま戦い続けてもジリ貧になるだろう。


 ――そう思っていた時。



「皇女さん、申し訳ないけど、私は負ける訳にはいかないわ」


「??」


「――――だから、卑怯だけど、隠した力を使わせて貰うわね」


「ッ!」


 実は、既に帝国剣聖は多く消耗していた。


 王国剣聖がこれ程までに強いとは、思わなかった。


 そんな彼女が、今度は隠した力を使うと言った。


 それは、帝国剣聖には絶望に近い言葉だった。






「――――神々の楽園、全開」






 戦場に今まで感じた事のない、威圧感が放たれた。


 空気、大気、風、目に見えないはずなのに、威圧感により揺れ見えるようだった。


 その圧倒的な威圧感に、帝国剣聖、そして全ての兵士達が恐怖した。




 ◇




 ◆レイラ・インペリウス◆



 丁度、八年前。


 私が八歳の時、私は死ぬ間際だった。


 そんな状況だった私にも奇跡が起きた。


 お父様の親友、『アデルバルト・ドラグナー伯爵様』。


 彼が私を救う為、大陸中を回り、遂には私を救ってくださった。


 伯爵様からは本人ではなく、別なお方だと聞かされた。


 それも知っていた。


 私が助かったその時、優しい匂いがしたから。




 あれから八年間、私は自分の弱さで周りを悲しませた事に責任を感じ、毎日厳しくも辛い訓練をこなした。


 アデル伯爵様との稽古もあったので、私は日々日々強くなっていった。


 そして、私が十五歳となった時、私より強い人はアデル伯爵様とお父様しかいない事に気が付いた。


 いつしか私は、国内で『不屈の戦姫』なんて呼ばれるようになっていた。


 後悔はしていない。


 自分の弱さで、お父様にもアデル伯爵様にも大きな迷惑を掛けてしまったから。


 しかし、ここまで強くなった私は、孤独になっていた。


 アデル伯爵様が常に孤独で生きて来たように、私もその想いを知る事が出来た。



 そして、更に一年が経った。


 既に帝国内では王国と戦争があるかも知れないと噂されるようにまでなっていた。


 そして、あのいけ好かない……教皇の宣言で、戦争は始まった。



 戦争を止める事が出来なかった。


 私も、お父様も。


 断わる事が出来なかった。


 私達には……誰よりも大切な人だから。


 今まで沢山尽くして頂いたから。


 今度は私とお父様は守りますから。


 だから……。


 どうか、生きて。




 ――――アデル伯爵様。

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