195.ケーキ開発
夕方、セシリアさん、ブルックさんとフィーネさんに加えて、お母さん、セレナお姉ちゃん、リサ、ディアナで集まった。
これからセシリアさん達が作ってくれた『ケーキ』の試食会だからだ。
僕達の前には五つのケーキが並んでいた。
一つ目のケーキは良く見かける『スフレケーキ』だった。
ふわりした甘さがする美味しいケーキだ。
二つ目のケーキは『フルーツケーキ』だった。
小切れになったケーキの上に甘酸っぱい果物が数点乗っており、断面で見える程、中にも果物が入っていた。
甘いクリームと果物の味が広がる美味しいケーキだ。
三つ目は『ロールケーキ』だった。
ふわふわしたスポンジ生地に甘いクリームが一緒に包まれていて美味しいケーキだ。
ここまでは、いつも食べているケーキだった。
どれも美味しくて、恐らくブルックさんとフィーネさんが作ってくれたケーキだろう。
実は二つ目に食べたフルーツケーキは、僕が幼い頃、お姉ちゃんに連れられ、厨房で良く食べていたケーキだ。
何だか懐かしくて、パクパク食っていたらブルックさんが懐かしそうに見つめていた。
セレナお姉ちゃんがほっぺにクリーム付いてるよって言って、僕のほっぺに付いていたクリームを取ってくれた。
昔と変わらないね。
そして問題の四番目と五番目のケーキだ。
まず、四番目のケーキは真っ黄色のケーキだった。
形はスフレケーキと同じ丸々とした形をしているが、色合が今まで見た事もない黄色いケーキだ。
初めてみる『カステラ』というケーキを僕達は口に運んだ。
物凄い甘さとふんわりした生地がスフレケーキと違う甘い味わいでとても美味しかった。
しかも、みずみずしい生地が口の中で溶けてなくなる程に美味しかった。
五番目のケーキは手のひらくらいの大きさのまん丸で平べったいケーキだった。
上には単純にハチミツだけが掛かっていた。
またもや初めて見るケーキ『ホットケーキ』を僕達は少しずつ食べ始めた。
う~ん、美味しいけど、何と言うか、素朴な味だった。
でも不思議な事に、食べていると自然と笑顔が零れる美味しさだった。
気が付けば、僕達は笑いながらケーキを食べていた。
ケーキや紅茶を楽しむのではなく、それらが話しを彩っているだけで、決して主張し過ぎない美味しさ。
うん、ゆっくりするには一番良いかも知れない。
満場一致で、『ロイヤル紅茶』と『ホットケーキ』を出す事となった。
セシリアさんから『ホットケーキ』は誰でも簡単に作れるからと、僕以外の全員が食い入るように作り方を聞いていた。
何処にでも見かける『コッケの卵』と『ミロミルク』と『菓粉』を混ぜて、焼くだけだという。
『菓粉』はケーキを作る時に使う粉で、何処の町でも簡単に買えて安価のモノだった。
この三つ、良く見ると、どれも非常に安価で買えるモノばかりだ。
子供のお小遣いでも買えるくらいには簡単に買える。
安いからという訳ではないが、身近にあるからこそ、素朴な味なのかも知れないね。
セレナお姉ちゃんとディアナが料理をするなんて……何だか新鮮だ。
やはり、慣れない手付きが見てるだけでハラハラするくらい危なっかしい。
フライパンをそんなに振り回しちゃダメだよ! 二人とも!
◇
僕の前には『ホットケーキ』が三枚、並んでいた。
えっと……ちょっと焦げてるのと、形がお花みたいになっているのと――、もう一つは何で色が黄色くなくて青くなってるの!? 青くなる要素あった!?
えーっと、セレナお姉ちゃんとリサとディアナが作ってくれたのね?
最初は僕に食べて欲しい!?
誰が何を作ったかは教えない?
いやいや、まず自分達で試食を――――あっ、はい、食べます。
最初はちょっと焦げてるモノを食べてみた。
味はとても良くて、美味しい、ちょっと焦げ味がアクセントになって良いかも知れない。
次はお花みたいな形のね。
うん、とても美味しい。
セシリアさんが作ってくれたモノと大差ないね。
最後は――――青か……。
何を入れたら青くなるんだろう。
取り敢えず食べてみた。
――――――!?
美味しい!?
今までの『ホットケーキ』の素朴な味と違って、爽やかな風味が広がって美味しい。
色が普通のと違うだけで、とても美味しい。
ちょっと焦げてたのはディアナだったのね。
普段から少しは料理をしているそうだけど、こういう火の調整が細かい料理はしなかったのか。
でも初めてにしては、とても上手だと思う。
花の形になっていたのはリサが作ったのね。
え? 花の形にしたんじゃない? 焼いてたら勝手に花みたいになった?
寧ろ、焼いてる途中でフライパン操作だけで花の形が作れたなら、凄く上手いと思う。
そっか……青はセレナお姉ちゃんか。
セレナお姉ちゃん、とても美味しかったけど、何で青いの?
え?
――――えええええ!?
超高級な『夜光草』の粉末を料理に入れると美味しいって聞いてたから、入れてみたって!?
『夜光草』は中々摂れないため、高級な調味料の一つだ。
粉末にして、入れる事によって、爽やかな味になり、色も鮮やかな青色になるという。
だから『ホットケーキ』が青かったのね。
でもこれで『ホットケーキ』に色んな調味料を入れる事で、色んな味を楽しめる事が分かったね!
セレナお姉ちゃんはいつも何かを発見するのが凄い!
流石に『夜光草』は値段が高いので、これから色々試してみるとブルックさんとフィーネさんが目を光らせた。