1.転生
本日投稿三話中一話です。
◆とある館にて◆
「だ……旦那様！ ご子息様がお生まれになられました！」
慌ただしくメイド服を着た女性は扉を開けながらそう叫んだ。
そこには二十代と思われる美男子がいた。
「やっと生まれたのか！ でもどうして子供の産声が聞こえないのだ！」
「そ……それが……お生まれなったご子息様が泣かないのです」
彼が部屋の中に入るとベッドの上には綺麗な美人の女性が横たわっていた。
「貴方――クロウティアが無事に産まれたわよ」
「あぁ！ フローラ！ 良くぞ頑張ってくれた！ 息子の事は任せてあとはゆっくり休むといい」
「えぇ……クロウティアを……お願い――」
そう話したフローラと言われた綺麗な美人はそのまま眠ってしまった。
「しかし、産まれた子供が産声をあげなかったのか……占い師の占い通り死産もあり得たと思うと恐ろしいな」
静かに眠っている生まれたばかりの息子を抱き、彼はそう呟いた。
◇
お爺さんとの会話の途中で体が光り、気がつくと周りがよく見えなくなっていた。
- スキル『痛覚軽減レベル1』を獲得しました -
どこからか不思議な声が聞こえた。
- スキル『感情無効(呪)』を獲得しました -
えっ……と？ 痛覚軽減？ 感情無効？ 一体何の事なのだろう？
[痛覚軽減] - 痛みを感じると痛みを軽減してくれるスキル
常時使用可(激しい痛みは自動使用)
[感情無効(呪)] - 感情が表現出来なくなるスキル
常時発動
頭に直接声が聞こえてくる感じだった。
凄く吃驚したはずなのに、全く感じないのはきっと感情無効スキルのせいなのだろうか
それよりお爺さんと離れる時にお爺さんが言いかけた言葉の、いもう――って妹なのだろうか？
まず、妹を探す事が一番重要な目標になった。
しかし、目も見えなければ、身体も上手く動けない、どうしてなんだろうか？
そう思っていると体がふわっと上がった。
「＃＆”％”（＆％”Ｑ’」
何か、凄く大きい何かに抱き上げられたようだ。
それに何か聞こえるが何を言っているのか全然分からない。
- スキル『言語変換(聞)』を獲得しました。 -
また頭に響く不思議な声がした。
「よ～しよし、ぱぱだよ～」
えっと……たしかお爺さんと離れる前に話していた新しい世界で……と言っていたのは生まれ変わるって事だったのかな？
[転生] - 記憶を保ったまま、別世界で生まれ直す事
また頭に不思議な声が響いた、知りたい事も教えてくれるらしい
見上げてみても、視界がよく見えない。
「おっ、起きたな！ どうでちゅか～ぱぱが見えまちゅか～」
顔は見えないけれど、とても優しい声だ。
それと『ぱぱ』と言うのは一体何だろうか？
[パパ] - 父親の親しい呼び名。子供の頃によく使われる。
ッ！？ ちちお……や！？
前世であった事が思い返される、父親は常に暴力を振るっていた、思い返してしまう。
急に体が震えて気がついたら俺は気絶してしまっていた。
「ありゃ……また寝てしまったか、仕方ない」
- スキル『痛覚軽減』のレベル1が4に上がりました。-
響く不思議な声、ただ聞けるはずの主は気絶し虚しく響き渡った。
◇
それから三か月が経った。
目も見えるようになった。
そして分かった事は、どうやら俺が生まれた場所は不思議な場所だった。
部屋はとても広かった、前世で住んでいた部屋の数倍はあった。
両親が恐らく金持ちなのかも知れない。
お母さんはとても綺麗な人だった、最初お人形さんに見えてしまう程だった。
あと……お父さん……とても優しい人だ。しかしどうしても数回お父さんに抱かれると気を失ってしまっていた。
ちなみに気を失わなくなったのは、スキル『痛覚軽減』がレベル10になってからだった。
あと、兄弟がいた。
長男のライフリット五歳。
次男のデイブリッド三歳。
長女のセレナディア一歳。
俺クロウティア０歳。
お父さんの名前はアグウス・エクシア。
お母さんの名前はフローラ・エクシア。
６人家族で、周りにお手伝いさんがたくさんいた。
いつもスキルや質問に答えてくれる声を俺は《天の声》さんと言う事にした。
その《天の声》さん曰く、お手伝いさんたちはメイドさん達らしい
メイドと言うのは、貴族等の身の回りの世話をする仕事だと言っていた。
目を覚ましているとお母さんとお兄さん達が来た。
「あらあら、クロウちゃんおはよう～」
優しい笑顔で俺を覗き込むお母さんと、恐る恐る覗いているお兄さん達だった。
「おかあさま～くろうちゃんはなんでなかないの？」
上のお兄さんが不思議そうに聞いた。
「ん～きっと、泣くのが苦手なのよ」
「なくのがにがて？？」
「そうよ、泣いたりしたら周りの人達にも悲しいって事を伝えないようにしているの、とても優しい心の子なの」
「ん～？？、くろうちゃんはやさしいおとうと？」
「そうよ、だからお兄ちゃんのライちゃんとデイちゃんがしっかり守ってあげるのよ？」
「はいっ！」「あいっ！」
そう話して二人の頭を優しく撫でるお母さん。
この世界では俺のお母さんでもあるのだけど、前世の記憶があるのでどうしても他人に感じてしまう。
「それじゃ、クロウちゃんも元気に過ごして欲しいから、御まじない掛けるね」
そう言いながら俺の頭に優しく手を当ててくれた。
「癒しの神よ、我らに祝福を、リフレッシュ・ヒーリング」
お母さんの手から淡い緑色の光りが溢れ出た。
！？ これ…は？ りふれっしゅひーりんぐ？
[リフレッシュ・ヒーリング] - 回復系統中級魔法、弱い病気を治す
ま……まほう？ まほうって何！？
[魔法] - 自身のＭＰを消費し、各系統の力を具現化させる術。
使用するには、それぞれにスキルは取得している必要がある。
す……凄い！ 前世では魔法なんて使えなかった！
というか、この世界は地球ではないと言っていた。
家の部屋とかは前世のテレビで一度見た事がある、外国という世界に似ていた。
取り合えず、魔法を使うにはＭＰというものとスキルが必要なのか
どうしたらスキル取得出来るのかＭＰはどうしたら取得出来るのか知りたい
[ＭＰ] - 魔法や技を使用する際に使うエネルギー
自身のステータスにて確認出来る。
[スキル] - 職能が開花した際に職能に応じてスキルツリーが与えられる。
レベルが上昇する事によってスキルツリーから取得出来る。
種族限定スキルは生まれながら所持している。
《天の声》さんの説明のおかげで魔法やスキルについてわかった。
[ステータスボード] - 自身のステータスを確認出来る、「ステータス」と唱えると確認出来る、心の中で唱えても可能。
折角なので確認しておこう、「ステータス」
名前 クロウティア・エクシア
年齢 ０歳(男)
種族 人族(幼)
職能 未開花
レベル 1
ＨＰ 3/3
ＭＰ 20/20
力 10×0.1=1
速 10×0.1=1
器用さ 10×0.1=1
耐 10×0.1=1
魔力 10×0.1=1
精神 10×0.1=1
[レジェンドスキル] #&$% 、#!$&
[スキル] 痛覚軽減レベル10,感情無効(呪),言語変換(聞)
[技] なし
