表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
191/360

185.恋

 風呂上り、僕達四人は湖辺を歩いた。


 リヴァはお酒が気に入ったらしくて、テラスで飲むからと僕達だけになった。


 いつの間にみんな浴衣姿になっている。


 三人とも、美しい浴衣姿に良い香りがしていた。



 何となく、さっきの露天風呂の件があって、僕達は黙ったまま、美しい湖を背景にゆっくりと歩いていた。


 みんなもそれぞれ、何かに思い更けている感じだった。


 今、みんなはどういう事を思っているのだろうか?


 ふと、僕達が歩いていると、何処からか良い匂いが流れてきた。


 焼き串の香ばしい匂いだ。



「セレナお姉ちゃん」


「うん? どうしたの?」


「久しぶりに、焼き串食べない?」


「…………、うん」


 リサとディアナも良いとの事で、僕達は匂いに釣られ、焼き串を売っている屋台にやってきた。


 屋台では美味しそうな焼き串が売っていた。


 みんな、それぞれ好きな焼き串を取って、代金を支払い、隣にある長い椅子に座った。


 うん。


 美しい湖を見ながら食べる焼き串もまた絶品だね~!



 そんな僕の耳に聞こえた声は――――。






「ねえねえ、見て見て、あそこのカップルたち、凄く可愛いわ。あの男の子とみんな恋人かしら?」


「え? あの子、男の子なの? あー、確かに服は男性服だね、てっきり女性四人組かと思ったよ」

 

「私も初めはそう見えたんだけどね、あの子、ちゃんとエスコートしてたからね、それにしてもあの四人、絵になるわね」


「女性三人も凄く可愛いね」


「女性の私から見ても可愛すぎるわ」






 ひそひそ話が聞こえてきた。


 ええええ!?


 僕達カップルじゃないですけど!!


 姉弟と兄妹と主従? 関係ですけど!!


 僕は気まずくなり、焼き串の味も感じられないまま、食べていた。




 三人も僕と同じ思いをしていたとは、思ってもみなかった。




 ◇




 次の日。


 別荘から帰って来た僕達は、そのまま学園に行き、いつものように別れた。


 そして僕は真っ先に、イカリくんの所へ急いだ。


「やあ、クロウくん、急いでどうしたの?」


 僕を見かけたイカリくんだった。


「えっとさ、ちょっと相談したい事が……あってさ」


「ふふっ、君から相談なんて、珍しいね。それでうちのクロウ姫は何がお困りですかな?」


 最近、イカリくんは女神クロウティアの噂を聞いてから、偶にクロウ姫とからかってきた。


 そもそも女神クロウティアって! 僕、男ですけど!?


「えっとさ…………、イカリくんって……その……恋人っている?」


 それを聞いたイカリくんが大笑いした。


 ええええ!?



「ないよ? 僕はずっと家に籠っていたからね、クロウくんは恋人にしたい人でも見つかったの?」


「うっ、見つかった……という訳ではないけど……そもそも僕みたいな人に恋人が出来るとは思ってないし……」


 あれ?


 イカリくん?


 なんでジト目で見つめてくるの!?


「あのさ、クロウくん」


「うん?」


「君……どれくらいモテてるのか……まあ、そっか、それならば――」


「え!? イカリくん? 何処に?」


 イカリくんが立ち上がり、僕を連れて、何処かに向かった。




 ◇




 イカリくんに連れられ、僕は魔法科の二年生の練習場に来た。


 入った瞬間――――。



 きゃぁああああああ!! 見てみて、クロウティア様よ!!!



 と物凄い黄色い歓声が上がった。


 えええええ!?



 それからイカリくんに連れられ、色んな教室の前を歩いた。


 何処に行っても、凄い歓声が上がっていた。




 ◇




「さて、クロウくん?」


「は、はひ!?」


 イカリくんがジト目で僕も見て来た。


これ(・・)でも君はモテないとでも?」


「ううう……ごめんなさい……」


「ッ……本当……可愛いらしいな」


「ん?」


 イカリくんが何かを小さく呟いたけど、聞こえなかった。



「まあ、取り敢えず、こんな感じさ。君が十二分にモテモテなのは、理解出来たかい?」


「う、うん。でもあれはきっと、僕がエクシア家の――」


 えええええ!?


 イカリくん痛いよ!? 僕のほっぺを引っ張らないで?



 それから僕はイカリくんから、三十分程、良く分からない説教を受けた。




 ◇




 ◆イカリフィア・ハイランド◆


 ほっっっんとに! この男は!


 いつまで経っても、自分が滅茶苦茶モテている事に自覚がない。


 しかも、悩んでる姿がまた可愛らしくて――――げふん、そういう事ではなくて。


 とにかく、急に恋人の悩みだと相談されたけど、クロウくんなら恋人には困らないだろうね。


 容姿は世界でも片手指に収まる程の美貌。


 血統も世界で最も良い血筋。


 なのに物凄く強くて、『ロード』クラスの生徒。


 実は世界一の大富豪。


 一体……この子に弱点はあるのか?


 まあ、弱点と言えば、この子はイマイチ世間体というモノが分からないようだ。



 折角なので、クロウくんにはみっちり常識(・・)というモノを叩き込んだ。


 かく言う僕もそれほど詳しくはないけど……、さすがにクロウくんよりは知っているつもりだ。


 昔から女性とよく間違われているから、そこらへんは既に勉強済みだからね。



 説教後、やっとクロウくんも反省したようで、モテないって言ってごめんなさいと話した。



 はあ……、それがまた可愛過ぎなのだよね……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ