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180.アクアドラゴン

 アクアドラゴン様が怒った。


 うん、僕達が全然話を聞いてあげなかったから。


「ご、ごめんなさい!」


【ふ、ふん、分かっておればいいのじゃ、では改めて我――――】


「僕はクロウって言います!」


【くっ、我――――】


「私はセレナと申します、宜しくお願い致します」


【…………】


「え? えっと、私はアリサと申します」


【…………】


「私はディアナと申します」


 アクアドラゴン様がじーっとこちらを見ていた。


【終わりかの?】


「え? あ、はい」


【ごほん、では改――――】


「アクアドラゴン様はどうしてここにいらしたんですか?」


【話を聞けーー!! 今、我が自己紹介する所だろう!!!】


 え!? アクアドラゴン様って自己紹介するの!?


「ええええ!? ごめんなさい、てっきりそういうのはないのかなと……」


【そんなはずないじゃろ!!! 我にはちゃんとリヴァ(・・・)という名前があるんじゃ!!!】


 アクアドラゴン様の名前は、どうやらリヴァ様と言うみたいだ。


【ごほん、では改めて――――】


「よろしくお願いします! リヴァ様!」


【…………】


 あれ? リヴァ様? 何故泣いているのですか!?




【もう()いわ、では本題に入ろう】


 リヴァ様が立ち直った。


【おぬし、クロウと言ったな?】


「はい!」


【先程の大魔法は、おぬしが使ったな?】


「大魔法?? いいえ?」


「いや! 使ってるから! くろにぃ!」


「えっ!? いつ!?」


「さっき、くろにぃが『クリムゾン・ストーム』使ったでしょう! あの竜巻!」


「あ! あの風属性魔法を強く(・・)したあれか!」


 リヴァ様と皆がジト目で僕を見つめていた。



【ごほん、まあ、おぬしは我を討伐(・・)しに来た者には見えんのう】


「え!? 僕かリヴァ様を!? 全くそんなつもりはありませんよ!」


【ほうか、では何故あんな大魔法を使ったのじゃ?】


「はい! 木を引っこ抜くためです!」


【…………は?】


「えっと……木を……抜くため……に?」


【そんな馬鹿な話があるか!! 木を抜くのに何であんな大魔法を使うんじゃ!!!】


 リヴァ様が凄く興奮していた。


「ここに新しい『テーマパーク』を作ろうとして、広範囲で木を抜いたんです! 風属性魔法を広範囲で使おうとしたら、あんな感じになったんです!」


【…………】


「リヴァ様」


【ん? おぬしは確かアリサじゃったな】


「はい、こちらのくろにぃはちょっと常識がズレておりまして、偶にこういう事言い出すんです」


 それを聞いたリヴァ様とお姉ちゃん達、みんなが僕を見つめた。


 えええええ!?


 ちょっと強く(・・)使っただけなのに!?


【そうか……おぬしの言葉に嘘はないようじゃ、寧ろ、こやつはいつもこうなのか?】


 リヴァ様の質問に全員大きく頷いた。


 そんな…………。


【はぁ……そんなくだらない理由で、我が起こされようとはのう……】


「うっ、ご、ごめんなさい……」


【まあ、良い、そろそろ起きようとしていたからのう、何やら最近、上が騒がしくなっていたしのう】


 リヴァ様はクリア町と大橋を見つめた。


【そうか、大橋とやらが完成していたのかえ】


「はい! 一年前に完成したばかりなんです!」


【そうか、ではホフマンを呼べ、以前交わした約束を果たして貰おう】


 え? ホフマンって誰? 約束?


「えっと……リヴァ様? ホフマンさんって誰ですか?」


【ん? おぬしらの領主じゃろう】


「え?? ここの領主はギムレットさんですよ?」


【何!? ホフマン・バレイント(・・・・・)は何処に行ったのだ?】


 ホフマン・バレイント?


 そういう人、バレイント領にいたっけ?



「リヴァ様、僭越ながら、恐らく、そのホフマン様は既に亡くなられていると思われます」



 セレナお姉ちゃんがそう話した。


【なに? あやつ、くたばったのかの?】


「恐らく、そのホフマン様は最初(・・)の契約者様でしょう、既に契約から百年以上経っております」


【おお、そう言えば、人族は短命だったのう、そうか……人族ではもうそんなに時が過ぎておったか】


 リヴァ様は何処か懐かしむ目をしていた。


【ふむ、では誰が我の契約を遂行してくれるのじゃ?】


「えっと、リヴァ様! その契約の内容を教えて頂いでも良いですか?」


【うむ、契約内容とは――――――――】




 ◇




 ◆ギムレット・バレイント◆


 ああ、何だかさっきから悪寒がする。


 風邪なのだろうか?


 腹を冷やして寝てはいないが……。


 そもそもうちの布団、最高級品になったせいで、眠りも快適過ぎるからね。


 だが、僕の悪い勘はいつも当たるのだ。


 この悪寒…………。


 もしや、またクロウ様の嫌がらせが来るのではないか?


 またご飯が喉を通らなくなるのではないか?


 くっ……あのクロウ様に目を付けられたが最後……。


 もう僕の人生はこのままお終いなのだろうか……。


 はあ、今日も贅沢なご飯を食べないといけないのか……。


 いつも領民を愛し、素朴な生活を守ってきた先祖様……こんな贅沢三昧な生活を送っている僕を叱ってください……。


 嬉しそうな妻の顔を見ていると、贅沢な生活をして良かったと思う半面……今までの先祖様に顔向け出来ない半面があり、とても複雑だった。



 ――――そして、遂にその報せはやってきた。




「ギムレットさ~~ん!」




 外にクロウ様の声が響いた。


 いや、その前に屋敷の者達の悲鳴が聞こえた。


 ああ、あの悪寒は……やはり貴方様でしたか。

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