15.港街セベジア
昨日、森を抜けた先に見えた街の場所を認識して屋敷に帰ってきた。
訓練所を出て、リビングに行った時、お母さんから真剣な顔で「先程凄い揺れたんだけど……クロウちゃん?」と言われ……。
魔法を思いっきり使ったら、ああなりましたってお母さんに話した。
「わ……分かったわ、クロウちゃん、悪いけどあのクラスの魔法はしばらく控えて頂戴、屋敷が揺れてみんな吃驚してるの」
はい……僕もまさかあんなに揺れるとは思っていなかったのでもう使いません、というか魔法防御壁用魔石の魔力切れだからどのみち練習出来ないし、その事もお母さんに伝えたら目が点になってた。
執事のサディスさんにあの魔法の威力の事を聞いたら、「あの魔法防御壁越しの揺れから魔石の魔力切れと考えますと、王国内では恐らく最高威力だと思います」との事、あの魔法はしばらく封印します。
それと西側の森を越えた街の事を聞いた。
「エドイルラ街の西側ですか? 西側には大きい森が広がっています、その森を越えるには馬車で二日程かかります、その森を越えると海沿いがあり、道の先にエクシア領の貿易の要の港街セベジアがございます」
サディスさんからありがたい情報を得たので、早速魔法の練習と偽り、訓練所から港街セベジアに来た。
正面からは通れ無さそうなので転移でそのまま街の中へ入った。
交易街というだけあって、とても賑わう街だった。
たくさんの商売人達がお金を稼ごうと目を光らせ市場を巡っている。
◇
街内を歩いていると
「アルド! 塩買ってきておくれ」
「ちぇ……分かったよ」
八歳くらいの男の子がお母さんからお金を受け取り足早に市場に走って行こうとして僕と目が合った。
「ケッ! 何で貴族様がこんな場所に来るんだ? 笑いにでも来たのかよ!」
凄く睨んできた。
「こらっ! アルド! 貴族様に何て言い方なの! 早く謝りなさい!」
急いで走ってきた男の子の母親が頭を下げてきた。
「貴族様ごめんなさい、うちの子は出来が悪いのでどうかお許しを……」
「いえいえ、全く気にしていませんよ? しかしどうして僕が貴族だと?」
「はい? それは……着てらっしゃる服に貴族の紋章が……」
ふと自分の服の胸元に王国の紋章が見えた、そう言えばこんなもん付いてたわね……。
「それで貴族様……えっと……」
以前サディスさんから貴族が平民を無礼打ちをすることもあると聞いたことがあった。
「本当に気にしていませんので大丈夫ですよ」
「ありがとうございますお坊ちゃま!」
「ふん!」
「こら! アルド! いい加減にしなさい!」
「だってよ! 貴族様のせいでお父さんが!」
「それはこちらの貴族様のせいではないから! ちゃんと謝りなさい!」
どうやらこの家庭のお父さんに何かあって、貴族が関わったのかな?
「貴族様があんな無茶苦茶な命令をするからお父さんがケガしたんだ!」
「馬鹿! アルド! いい加減にしなさい! 貴族様どうか今回の事は見逃してください、これでも一人息子なんです、どうか無礼打ちだけは……」
母親が息子をぶっ飛ばした。
わぁ――人ってあんな飛ぶんだね……。
そして僕の前に涙ながら土下座してきた。
「ま……まぁ、ちなみにケガをしたとのことですが、どうしてケガを?」
「い…いえ、貴族様のお気になさる程の事じゃありませんから…」
「ん~、……では一つ僕と取引をしませんか?」
「取引ですか?」
ポカーンとした顔で見上げる母親に僕はとある事を持ちかけた。
多分悪い顔で笑っていたかも知れない。
◇
◆港街セベジアのとある母親◆
馬鹿息子が道で見かけた貴族のお坊ちゃんに絡んでしまった。
先日貴族様の無茶苦茶な依頼で漁師である旦那が漁で大怪我をして帰ってきた。
この時期にのみ捕れる光るエビは高級品としてこの港街の大きな収入源だったりする。
その光るエビは夜しか捕れないのだけど、夜の漁は難しいので決まった数の船で捕るのが習わしだ。
しかしそんなことなど知らんと貴族様が大量の船を投入してしまった。
そしてその日船同士の激突が多数起きた。
そのうち一隻がうちの旦那だった。
その後、帰って来た…いや、連れて来られた旦那は傷だらけだった。
そんな旦那を見た息子は貴族様を恨むようになった。
怪我の具合が深刻で、ここら辺で治せるのは領主エクシア家の奥様のフローラ様だけだという…
しかしあんな高貴な方にお願い出来る伝手もなく、旦那が回復するまで数年掛かると言われてしまった。
そんな事であの馬鹿息子が誰かも知らない貴族のお坊ちゃんに絡んでしまったのだった。
何とか息子をぶっ飛ばして黙らせ、お坊ちゃんにお詫びをしていたらお坊ちゃんからある取引を出された。
私たちにはありがたい申し出で、頷き、お坊ちゃんを家に連れてきた。
そして、そこから奇跡が起きた。
お坊ちゃんは直ぐ旦那のところに行き、「ハイヒール」と唱えると旦那の怪我が見るみる治り、顔色も良くなった。
あんな大怪我が一瞬で治るなんて、私は奇跡としか見えなかった。
そしてお坊ちゃんは治したお礼に何故あんな怪我をしたのかを聞いて来た。
もちろん正直に事を話したら、とても怒った顔をなさった。
その後、もう一つのお礼にうちの子の着なくなった服を売って欲しいと言われ、売るなんてとんでもないと、今ある全ての服をお渡ししようとしたらそんなにいらないからと古着三着程貰ってその場を去られた。
貴族が嫌いだった息子も旦那の回復を見てお坊ちゃんに謝り、「すげぇー! すげぇー!」って調子良いこと言う。
私は以前、領主様の奥様を一度だけ見た事があるのだけど、それはそれはとてもお綺麗なお方で今でも目に焼き付いている。
同じ女性を通り越して、あまりの美しさに芸術品のように綺麗な方だった。
このお坊ちゃんと奥様が何処か似ているのは気のせいなのだろうか…
お坊ちゃんより最後のお礼に自分の事は誰にも言わない事としたので、息子と私は今日のこの出来事を一生秘密にするのであった。
今日は私が初めて奇跡を見た日だった。
名前 クロウティア・エクシア
年齢 5歳(男)
種族 人族
職能 アザトース
レベル 1
HP 50×10=500
MP 800×50=40000
力 10×10=100
素早さ 10×10=100
器用さ 10×10=100
耐性 10×50=500
魔力 10×300+5000=8000
精神 10×300=3000
[レジェンドスキル] #&$% 、#!$&
[魔法系統スキル] 中級回復魔法,火属性魔法,水属性魔法,風属性魔法,土属性魔法,空間魔法,転移魔法,氷属性魔法,雷属性魔法,霧属性魔法,光属性魔法,闇属性魔法
[スキル] 痛覚無効,睡眠無効,言語能力,魔法超強化,多重魔法発動,魔法調整,魔法無限固定,魔力高速回復,魔力超上昇,魔法高速演算
[技] MPドレイン
お母さんの必殺アッパーにより、息子が空を飛んだ。