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169.十三度目の祭り④

 ※現実とは多少違う名称が登場します。が、両方足した感じと思って頂けたらと※




 は――――恥ずかしぃいいいいい!


 あまりの緊張で、息をするのも忘れるくらい!


 そんな緊張状態の僕を落ち着かせようと、リサが「ほら、くろにぃ、深呼吸するよ~」と一緒に深呼吸をしてくれた。


 すーーはーーすーーはーー。


 ふう……これで少しは落ち着いた。



 そして、僕達の前番のお兄ちゃん達が出発した。


 数分後、お兄ちゃん達は笑顔で戻って来た。


 二人共凄くカッコよいから絵になるね!



 参加者最後のグループは、僕とリサのペアだ。


 真っ白いドレスのリサがとても綺麗で、僕なんかと一緒に歩いては勿体ないと思ってしまった。



「もう私達の出番だね」


「う、うん」


「ふふっ、くろにぃでも緊張するんだね?」


「そ、それは緊張するよ! こんな大勢の人に見られた事なんてなかったし……、それにリサのような美人(・・)さんと一緒だと、尚更緊張するよ……」


 ……


 …………


 ???


「はぁ……、くろにぃ――――」


「うん?」


 リサが何か呟いたけど、声が小さくて聞き取れなかった。


「ごめ――――」


 僕の言葉に合わせて、リサは左手を突き出した。


「くろにぃ? 昔みたいに――――」


 リサが俯いたまま、そう話した。


 うん、昔みたいに――――



 僕達は綺麗な礼服とドレス姿で、ステージを一周回り、戻ってきた。



 ――――手を繋いだまま。




 ◇




 それからの二回目出番からは、高級服や平民用の一般服に着替えたり、セレナお姉ちゃんやディアナ、ナターシャお姉ちゃんとも一緒にステージを歩いた。


 意外に一番歓声が上がったのは、お父さんとお母さんが平民用結婚衣装を披露した時だった。


 二人共、大貴族として凄く有名だからこそ、こういう権力や貧富の差を感じさせない所が素晴らしい両親だと思えた。



 次に凄かったのは、意外にもナターシャお姉ちゃんとディオだった。


 二人は元々仇同士だったけど、ここ最近ではディオがナターシャお姉ちゃんの熱烈な大ファンになり、政治もしっかり行う良い為政者になっているという。



 更に、意外と人気があったペアがいて、それはライ兄ちゃんとアグネスお姉ちゃんペアと、デイ兄ちゃんとミリヤお姉ちゃんペアだった。


 以前から島で『スレイヤ』の武勇伝を良く聞いており、既に友人として仲良いと聞いてはいたけどね。


 今回の『アカコレ』は、最初の一回目だけは決まったペアだけど、二回目からは割と好きなように組んで出て行った。


 平民用一般服の出番の時、ライ兄ちゃんとデイ兄ちゃんが二人を真っ先に誘っていた。


 お兄ちゃん達が知り合いと仲良くなっているのは、弟として本当に嬉しく思う。


 二人共学園では婚姻関係で色々大変だったからね……。


 皆の素直な笑顔がとても素敵で印象的だった。




 ◇




 『アカコレ』は大盛り上がりを見せ、大成功に終わった。


 恐らく、明日から僕達が披露した服は、火が付いたように売れるのではないだろうか。


 『アカコレ』が終わり、一時間程の休憩があって、最後の大イベント『ライブ』が始まった。



 ナターシャお姉ちゃんの出番の前に、前座として『オペル』がステージに上がった。


 『オペル』は現在五十四人で構成されている。


 まだ(・・)アカバネ商会で支援は殆ど行っていない。


 僕としては、支援してあげたいのだけど、ナターシャお姉ちゃんから、それでは以前に受かった六人に顔向けが出来ないからと、今の形になった。


 でもナターシャお姉ちゃんから、今回から物凄い事になるかも知れないと言われていた。



 ステージに立った五十四人。


 彼ら全員の右頬(・・)には『声を大きく()する魔法が()掛かった棒()』の進化型、通称『付着型拡音魔道具(インカムマイク)』が装着されていた。


 『声を大きく()する魔法が()掛かった棒()』は名称が長すぎるので、拡音魔道具(マイク)と呼ぶようになっていた。






 ――――そして始まった。


 皆、一糸乱れない動きでステージ上に広がった。


 そして踊りと共に……、全員が歌い出した。


 意外と全員が同じ音程で歌うのではなく、ちゃんと男性は男性で低音域、中音域、高音域と分かれており、女性もまた低音域、中音域、高音域に分かれていた。


 踊りもアクロバティックな踊りをしたり、歌の歌詞に合わせるように踊っていた。




「くろにぃ! 凄いね!」


「うん! 『オペル』さん達が頑張って考え続けて、数年でやっとまとまったって言ってたよ!」


「そうなのね! こんなに凄い踊りと歌なんだもの、ちょっとやそっとじゃ出来ないと思う」


 僕とリサ、ディアナはその踊りに夢中になっていた。




 途中、ほんの少しだけミスをしたメンバーもいたけど、すぐに隣のメンバーがカバーに入り、ミスですら演技なのではないかと錯覚するくらいに、完成度の高い演目だった。


 あれだけ素早くカバー出来るのだから、彼らの数年間頑張った絆も感じられた。






 こうして、世界にまた一つ、新しい演目が増えた。


 その名は数年間、ひたすらに頑張って、演目を作り上げた彼らの名前から『オペラ(ミュージカル)』と名付けられるのであった。


 長い大陸の歴史に『ライブ』と双璧を成す『オペラ(ミュージカル)』が初めて登場した瞬間だった。




 ◇




 最後の締めは――――やはりナターシャお姉ちゃん!


 と思っていたのに!!!


 『オペル』の演目が終わり、多くの人々が期待する中、現れたのは……。


 なんと、セレナお姉ちゃんとセシリアさんだった。


 そう言えば、お姉ちゃんとセシリアさんが見えないなと思っていた。



 それから始まったのは、お互いに左右で剣の舞と教会の豊作を祈る踊りをお互いに披露してくれた。


 セレナお姉ちゃんの美しい剣の舞に、僕は息をするのも忘れ、目を奪われ続けた。


 セレナお姉ちゃんの剣の舞だけでなく、セシリアさんの踊りも美しく、時折、踊りながら回復魔法を使い、ステージ上で演出を作ってくれていた。


 ステージ上はキラキラ光る魔法の残滓(ざんさい)が漂っており、その中で踊るセレナお姉ちゃんとセシリアさんの神々しさを更に増していた。



「美しい――――」



 気が付けば、僕は無意識にその言葉を口にしていた。






 二人の演目が終わり、物凄い歓声の中、勢いそのままにナターシャお姉ちゃんの『ライブ』が始まった。


 ここ数年間培ったナターシャお姉ちゃんの『ライブ』は見る者全てを魅了した。



 発表会。


 『アカコレ』。


 『オペラ(ミュージカル)』。


 剣の舞と豊作の踊り。



 それらを全て上回る圧倒的な『ライブ』だった。


 最近では、お客様と一体型に主軸を置き、ナターシャお姉ちゃんとテンツァー(踊る者)の皆さんで手の振り方とか色々指示してくれていた。


 曲毎に異なる手の振り方も、とても分かりやすくて、会場の全ての人々は一体となり、盛り上がった。



 アンコールが二回終わり、全ての演目が終わったあと、ナターシャお姉ちゃんとテンツァー(踊る者)、オペルの皆さんがステージ上に上がり、皆手を繋ぎ並んで挨拶をしてくれた。


 会場には感極まって涙を流しながら拍手を送る人も多くいた。



 最後の最後に、ナターシャお姉ちゃんから「記念に皆で一緒に飛ぶよ!」と話し、「1、2、3、はい!」の号令でしゃがんでいた皆が一斉に飛び上がった。

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