167.十三度目の祭り②
※場面の入れ替わりが激しいです。
※ずっと三人称視点です。
※本文中『天使の輪』契約のシーンがありますが、内容がややこしいので最後まとめますが、基本的には162話で説明したものと同じです。
「ふう、まさか……中まで誰もいないなんて……何だか誰かに見られてる気はするんだけど……」
アカバネ商会の王都支店内に入った爆破犯が呟いた。
「でも……あと少しだ。あと少しで……この最低な商会に……復讐出来るんだ!」
彼は鞄を握っていた手に力を込めた。
そして目的地まであと数歩――。
復讐心に駆られた爆破犯が目的地である――総帥室を目の前にした時だった。
「闇の手」
静かな声が廊下に響いた。
爆破犯は驚き、声がした方向に振り向いた。
爆破犯が振り向いた時には、既にその手に持っていた鞄に、なにか黒い影の触手のようなモノが付いていた。
「影封印」
その声と共に、黒い触手が爆破犯が持っていた鞄と一緒に消えた。
「なっ!? どうして!! どうして……君がここに……」
驚いた爆破犯が、後ろから現れた少年にそう話した。
綺麗な黒髪と美しい碧眼に整った顔立ち、十人いれば十人が振り向く程美しい少年、クロウティアだった。
「それはね、君が目指したその部屋の持ち主が――――、僕だからだよ」
クロウティアの声に、爆破犯はフードを脱いだ。
そこから現れたのは、綺麗な赤い髪と深紅の眼をした少年だった。
「君が――アカバネ商会の――総帥??」
「うん。そうだよ。イカリくん」
◇
「では、三つ目の発表です! 先程説明した貧困層への仕事の斡旋ですが、実は貧困層という括りだけでなく、身体的に精神的に問題を抱えている方にも、これから仕事の斡旋を致します! その名もアカバネ商会の『補助従業員』です! 既に多くの方が参加してくださっております。皆様も暖かく見守ってくださると幸でございます」
フローラの深いお辞儀に、またも多くの拍手が起きた。
「これにて、今回の奉仕活動の発表は終わりでございます」
フローラが一つ呼吸を整えた。
「では! 次は四つ目の発表です。アカバネ商会はこの度……お客様だけでなく、同じ商売をする仲間達を募集する事になりました! その名も、アカバネ商会『天使の輪』でございます! ではこれから『天使の輪』について説明致します。
現在アカバネ商会の店舗は、大陸南側の全域にございます。しかし、それぞれの町には我々商会以外の店舗も沢山おります。そこで商売をしている全ての商店様向けに『天使の輪』契約をご提示致します!」
そして、『天使の輪』契約についてフローラの説明が続いた。
◇
「ッ!? 君が総帥って……信じられる訳ないだろう!」
イカリフィアは激しく怒っていた。
それもそのはずだ。
自分が今まで一番の親友と思っていた男が――――
自分の仇であると言う事だからであった。
「本当の事だよ? 僕はこのアカバネ商会の設立者であり、唯一のオーナーだよ」
「くっ……」
「君が今日……僕を狙っていたのは、偶々会いに行ったあの教室で知ったよ。だからここに来るまで誰にも会っていないでしょう? いくら祭り中とは言え、支店内にそう簡単に入れると思える?」
それを聞いたイカリフィアは悔しそうに納得した。
「どうする? イカリくん。僕を……アカバネ商会のオーナーである僕を殺すかい?」
「どうして……僕に初めて出来た親友が……僕の仇だなんて……」
イカリフィアは泣き崩れた。
◇
発表会が終わり、フローラがステージから降りるも、全ての会場からフローラコールが起きていた。
絶世の美女の一人であるフローラに、会場は最高潮に盛り上がりを見せた。
※『天使の輪』契約について。
①アカバネ商会と専属契約を行い、店舗入り口に『プラチナエンジェルの天使の輪の印』を付ける
②仕入れはアカバネ商会のみと行い、売値も全てアカバネ商会で決める
但し、アカバネ商会は決して損になる値段設定にはしない
③売り残り品に関してはアカバネ商会で全て引き取る
但し、仕入れ値段と同額となる
④全ての契約店舗にも『プラチナカード』用魔道具を設置し、『プラチナカード』の点数が貯まるようにする
ここまでは商店の契約である。
ここから生産系の事業主の専属売買契約。
⑤『天使の輪』専属売買契約者からの買い値は、アカバネ商会の基本的な買取相場三割減を使わず、独自の値段設定になる
詳しくは、相場九割買取だが、最低限値段設定があり、その値段を下回る事はないようにするので、場合によっては相場より高い値段で売れる事もある
以上が今回の『天使の輪』契約である。
但し、一度でもこのルールを違反したり、悪用した場合は二度と契約出来なくなる。