160.経済会議(前)
※作者の浅はかな知識で書いているので、もし大きく違う点がございましたらコメントに残して頂けたら幸いです。久々に勉強というのをしたので目がチカチカしております……。
本日はダグラスさんから会議に誘われたので、朝早くにイカリくんに挨拶だけして、島の屋敷に戻ってきた。
僕の屋敷はあれから色々改造されている。
職人隊のリーダーであるブリギッドさんから、僕の屋敷を機能性屋敷に改造したいと申し出があったので、承諾したら色んな機能が追加された。
職人隊ブリギッドさんと魔道具隊マリエルさんが意気投合して色々便利にしてくれた。
その中の一つに多機能ホールがある。
ホールの床を開けると、その中には壁が埋もれており、魔石が必要だが簡単に壁でホールを好きな広さに変えられるモノだった。
壁も扉ありなしが決められて、扉の位置まで自由に選べられるようになっている。
うちの屋敷の多機能ホールは、普段は会議室のように区切っており、大きなイベントがあるときは広いホールになる仕組みだ。
最近ではここが『アカバネ商会』の本部になっている。
今日は、ここでダグラスさんとディゼルさん、その他の支店長さん達とナターシャお姉ちゃんとの会議だった。
「では会議を始めます」
いつもの会議進行役ディゼルさんから始まった。
「ナターシャ案の『アカコレ』ですが、多くの服屋に声をかけました。合計三十店舗になりますが渋々承諾してくださいましたので、ナターシャの発表に合わせて売り出す予定でございます」
服の件は何とか進められているようだ。
僕が頷いていると、ダグラスさんが手を挙げた。
「そこでオーナーに一つ相談がございます」
皆さん僕を見つめた。
「どうぞ?」
「はい、オーナーは今の王国及び隣国の共和国の現状をご存じでしょうか?」
「えっと……現状……ですか?」
「はい、今の王国と共和国の経済についてでございます」
経済か――、一度も考えた事なかったかな?
「ごめんなさい、全く分かりません」
そんな僕の言葉に、この場の全員微笑んだ。
「流石のオーナーでも、こういった事は勉強不足みたいですね」
うぅ……だって……『アカバネ』商会を広めたのってリサを探すためだけだったから……。
「ごめんなさい……、既に皆さんには伝えていましたが、僕がこの商会を作ったのは全て前世の妹を探すためでしたから……その後、放置するつもりはありませんが、確かに勉強不足な所があるかも知れません」
それを聞いたダグラスさんが安堵したように小さくため息を吐いていた。
「ええ、それは以前アリサさんとセシリアさんをお迎えした時に聞いておりましたから、まずこれだけは話しておきましょう。俺達全員クロウ様の部下であり仲間であり……家族だと思っております。ですので商会の事は全てお任せください。これから現状の説明をしますのでその決定だけをクロウ様が行ってくだされば良いのです」
他の方々も大きく頷いた。
皆さん……こんな僕に付いて来てくれてありがとう。
僕も自分で出来る事をしっかり行いたい。
ダグラスさんの言葉に僕は真剣な表情になり、ダグラスさんの次の言葉を待った。
「では、現状の説明の前にある言葉の説明致します」
それでダグラスさんから受けた説明は、
お金と物の関係の話だった。
①物が高くなる事によって、お金の価値が下がる事。
それを『物価上昇』というそうだ。
②物が安くなる事によって、お金の価値が上がる事。
それを『物価低下』というそうだ。
その物価上昇と低下がどうして起こるのか……。
売り手が物の値段を決める際、高く売れば売る程に『物価上昇』になっていく。
しかし、それはあくまで売れたらの話で、売れなければそもそも物価が変わらない。
そして、この『物価上昇』を最も象徴する事があるそうだ。
それが『好景気』にある。
つまり、買い手が物を沢山買うので、物が一か所に止まらず、売れ行き、お金が回り続ける事で好景気となるそうだ。
では果たして『物価上昇』が良いのか?
それは見る側によって変わる。
物を作る側は、物が高くてもどんどん売れるので作り手は良くなるが、逆に買い手はどんどん値段が上がるので、以前買った金額で同じ物を買えなくなる、それが続けば買いたくても買えなくなるからだ。
「ではここまで物価の説明でした、その上でオーナーは今の王国共和国の経済がどうなっていると思いますか?」
ん~、うちで売った物は飛ぶように売れるし、買取も年々上がっていると報告書で数字も見ていた。
「物価上昇傾向……だと思います」
「はい、アカバネ商会の出現により王国共和国内で良くも悪くも色んな変化がありました、そして我が商会を見ていると物価上昇傾向に見えます」
うちはまさに好景気だからね。
「ですが、実は現在経済は……『物価低下』でございます」
えええええ!?
物価低下って事は、お金の価値が高くなる。
それは、お金を持っている人には良い事でもある……が、ない人はどうしようもなくなるよね?
それに売る方にとっても良くない事だよね?
「どうして……ですか?」
「全て――――アカバネ商会のせいでございます」
えええええ!?
どうして!?