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159.初めての手紙

 今日も学園に来た。


 他でもなく、イカリくんに会うために。


 イカリくんは今日も裏庭でサボっていた。



 何でも三年生になると、殆ど自由になるらしくて、教本読むだけで気が楽だと言っていた。


 そんなイカリくんと色んな事を喋るのも、既に十日程経っていた。


 イカリくんも僕の事を友達と言ってくれて……僕は生まれて初めて同年代の友達が出来た。


 そんな毎日が楽しかった。



 そして今日、イカリくんからとあるモノを渡された。


「クロウくん、僕はあまり喋りが上手じゃないからね……実はこういう手紙(・・)が凄く好きなの」


 綺麗な白い封筒を貰った。


 手紙のようだね。


「ありがとう!! 僕、今まで手紙貰った事ないから凄く嬉しいよ!!」


「ふふっ、クロウくんがその気になれば、いろんな女の子から貰えると思うよ?」


「えええええ!? イカリくんまた僕をからかって……そんなはずないじゃないか」


 でも最初に貰う手紙がイカリくんで凄く嬉しい!


「今日帰ったら読ませて貰うね!」


「うん」




「クロウ! こんなとこにいたのね」


 あれ? 声がした方を振り向くとセレナお姉ちゃんがいた。


「セレナお姉ちゃん!」


「最近嬉しそうに出掛けるなと思ったら――、お友達?」


「うん! お姉ちゃん紹介するよ! こちらイカリくん! そしてこちらが僕のお姉ちゃん」


「初めまして! 挨拶出来て光栄です」


「初めまして、いつもうちのクロウティアをありがとうございます、イカリフィア先輩」


 あれ!? お姉ちゃんがイカリくんを知っている?


「あれ? 僕と会った事、ありましたっけ……?」


「いいえ、今日初めてです。生徒会長として全生徒さんの顔と名前は覚えております」


 えええええ!? セレナお姉ちゃん凄い!


 全生徒の顔と名前覚えるなんて――。


「あはは……そうでしたか、流石ですね」


「いいえ、それ程でもありません」


 あれ? お姉ちゃん……なんかよそよそしい?


「クロウくん、僕はもう上がるね」


「うん、またね~イカリくん」



 イカリくんも学園に戻ったので、僕とお姉ちゃんも『ロード』クラスの棟へ戻って行った。


 お姉ちゃんから「友達出来て良かったね」と頭を撫でて貰った。


 うん! 僕の初めての友達だからね、とても嬉しかった。


 そして、その日の夜、イカリくんから貰った手紙を読んだ。




「拝啓

 クロウティアくんへ


 初めての手紙で驚いた事でしょう。

 僕はなかなか口が上手ではないので、こうして文字で伝えたいなと思いました。


 先日初めて会った時に、これ程美しい人がいるんだなと思いました。

 ふふっ、きっとこれを聞くとクロウくんはまた怒るかも知れませんね。

 僕も幼い頃からよく女の子と間違われて来ましたから、クロウくんを見たときはとても嬉しかった。

 自分と似た苦境の人なんだなと思いました。


 そんな僕なんかと仲良くしてくれてありがとう。

 僕もクロウくんが初めての友達で、クロウくんも僕なんかを初めての友達と言ってくれてとても嬉しかったです。


 僕は剣術や魔法が使える訳ではないので、クロウくんを助ける事は出来ないかも知れないけど、僕には『魔道具』を作る力があります。

 なので、何か困った事があればいつでも言ってください、僕の出来る事なら何でもしたいので。


 最後の学年に、学園で君と出会えたのが、この学園を通って一番嬉しい事になりました。


 だから――本当にありがとう。



 イカリフィア・ハイランドより 」




 イカリくんの声が聞こえたような気がした。


 ふふっ、いつも口下手だけど楽しそうな優しい口調が聴こえるようだった。


 うん、手紙貰えるってこんなに嬉しい事なんだね。


 僕もお父さんやお母さん、お姉ちゃんに手紙書いてみようかな?





 これがイカリくんから貰った、初めての手紙だった。

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