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157.白熊の回想

 ◆ジョゼフ・ブレイン◆


 儂には七人の子供がいる。


 そのうち六人は男の子だった。


 そして、最後の末っ子に生まれたのが長女フローラだった。



 フローラは生まれながら、周りに男兄妹ばかりで、子供の頃から強気の子に育った。


 儂の奥さんであるエマに似て、それはそれは綺麗な女の子だった。



 そして転機が訪れたのはフローラが五歳の時だった。


 儂の家は力こそは正義としておるが、力よりも人の命を大事にしていた。


 その想いが届いたのだろうか。


 フローラの職能開花は――、なんと『神官』であった。


 そもそも数少ない回復魔法の使い手である。


 一番下級職能ですら奇跡と言われる中、我が子が回復魔法使いの中級職能を開花するとは夢にも思っていなかった。


 だが――、それは言い換えればあの教会の餌食になりえる事だ。



 教会とは名ばかりで寄付金ばかり取っていき、碌に病人も見やしない。


 ――「奇跡は誰にでも与えられるモノではありません」。


 それが彼らの言い分だが……儂が違うと思っておる。


 奇跡は誰にでも与えられるモノであると――そう思っておる。




 娘が十歳になった。


 今日まで、娘には極力、回復魔法を控えて貰った。


 十歳の誕生日に職能を公表するのが我が国の習わしではあるが、他人(ひと)の職能を調べる方法なんぞないので『ノービス』と公表した。



 しかし、その誕生日の日、儂は想像もしていなかった事が起きた。


 儂が最大ライバルと自負しておるが、その自由奔放な性格から王国内のどの貴族からも見向きされないあいつが誕生日会に現れた。


 勿論、儂の娘の誕生日を祝うというのだが……、あいつめ、自分の息子(・・)を連れて来やがった。



 王国の誰もが不自然に気にしない――ヴィンセントのやつ。


 儂と同じ上級(・・)職能の持ち主だ。


 いつも自由奔放に出歩いている癖に、こういう所だけは好んで現れるのだ。


 年は一回り下ではあるが、その軽い性格から儂の数少ない友人の一人だ。




 ◇




「おお~! ジョゼフ殿! 相変わらず、むさくるっしい面構えですな~ガハハハッ!」


 こやつめ! 今日も失礼なやつだのう!


「ヴィンセント! おぬしはまた()をほったらかして、歩き回っとるのか!」


「ガハハハッ! いいではありませんか! そういうジョゼフ殿こそ、この前騎士五十人をボッコボコにしたって王都で噂になっていましたぞ?」


「ん? ああー、あれか。あれは儂に勝てたら娘を紹介してやるって言ったら、挑戦してきたやつらじゃ」


 王都に行く度に、儂の可愛い娘を嫁にとうるさかったので、儂に勝てば紹介してやると言ったら五十人くらい相手になったのだ。


「全員骨折させたとか、流石私が認める白熊ジョゼフ殿です!」


「誰が白熊じゃ!」


 全く! こやつはいつもこうもノリの軽いやつでの、失礼極まりないわい。



 そんな儂達の会話をヴィンセントの後ろから見ている子供がおった。


「む? ヴィン、後ろの子は?」


「おお、これは紹介が遅れて申し訳ありません。ほらこちらがジョゼフ殿だ。挨拶すると良い」


 男の子は目をキラキラさせて儂の前に立った。


「は、は、は、はじめましってぇ、あっ、あ……」


 男の子が泣きそうになったわい。


「こらこら~いくら一番の目標のお方を目の前にしても、挨拶くらいちゃんと出来ないといかんぞ?」


「うぅ……」


 うむ、ヴィンとそっくりな子だな。


 サラサラしら黒髪にヴィンの家の象徴である綺麗な碧眼だわい。


「は、はじめまして……、僕は――――アグウス・エクシアと申します」


 ほぉ……ヴィンの倅か。


「ヴィンの倅かの?」


「ええ、私の自慢の息子です」


 ふむ、確かにヴィンが自慢したがる気持ちはよく分かる。


 こやつ……まだ幼いのに中々の力を秘めておる。


 長年色んな騎士を見てきたが……ここまでの逸材(・・)は見た事がない。


 そんな事を思っていると――。




「初めまして、フローラ・ブレイン(・・・・)と申します」


 隣からひょっこりと娘が現れた。


 本日の主役だから、色んな人に挨拶しておったのだが……。


「おお! 貴方様がフローラ嬢ですか、兼ねて美しいと噂を聞いております。私はエクシア家当主(・・)ヴィンセントと申します」


「ヴィンセント様、本日はわたくしの誕生日会へお越しくださりありがとうございます」


 むむっ、ヴィンのやつめ、うちの娘の美貌にニヤニヤしておる。


「ッ!? は、初めまして――、ぼ――」


「アグウスさん……でしたね?」


 ぬっ!?


「その……宜しくお願い致します」


 !?


「!? こちらこそよろしくお願いします」


 なななななななんだって!?!!?!?



 二人が儂から離れていく――。


 こら! ヴィン! 何故儂を掴むのじゃ! 二人が行ってしまうじゃないか!!


 なっ!? まさか……、ヴィン! 貴様の作戦だな! そうなんだな!?


 うちの……うちの愛娘がああああ!!



 儂は愛娘が今まで見せた事もなかった笑顔を遠くから眺める事しか出来なかったのじゃ……。

白熊さん終わりです!次から本編?始まります!是非楽しみにしてください!!

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