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154.白熊と旅館

 ※事実とは少し違うモノが登場します、あくまで作者主観で名前をつけているので、現実のモノと同じ品ではないかも知れません。




 す……凄い!!


 僕のおじいちゃんはやっぱり物凄く強かった!!


 今まで『闇の手』を五本以上相手出来る人はいなかった。


 しかし、おじいちゃんはなんと! 六本も相手出来ている!


 おじいちゃんが疲れたようだったので、『エリクサー』と『ソーマ』の合わせ技、名付けて『エクスヒーリング』を使ってあげた。


 うん! おじいちゃんも凄く喜んでくれた!


 なので、二回目の稽古を行った。


 試しに七本にしてみたけど、ちょっと七本はやりすぎなのかも知れない。




 稽古が終わり、疲れたおじいちゃんのために、島の温泉に連れてきた。


 おじいちゃんの目に光がないのがとても心配だ……。


 回復もしてあげたんだけどな……多分まだ呪いが治ったばかりで、元気が出ないのかも知れない。


 お父さんと二人でおじいちゃんを連れ温泉に入った。


 温泉に入っていると、目が死んでいたおじいちゃんが復活してくれた。


「はっ!? ここは!?」


「お義父様、ここはクロウの温泉です」


「ん? クロウ!? 温泉!?」


 おじいちゃんがアワアワしている。


 白熊さんがアワアワしてるのちょっと可愛いかも知れない。


「はっ! 儂は……確か……や……」


「お義父様、あの稽古はもう忘れてください、ああいう稽古もあったくらいでいいですから」


「そ……そうだな……」


「おじいちゃん凄いですよ! 闇の手を六本も相手出来るだなんて、僕、初めてでとても楽しかったです!」


「そ……そうか……」


「またお願いしますね!」


「わ……分かった」


 あれ? おじいちゃん顔色が悪いな……もうのぼせてしまったんだろうか?


 お父さんとおじいちゃんが小さく内緒話をすると、おじいちゃんが元気を取り戻した。


 きっと子供には分からない大人の会話があったに違いない、僕ももうすぐ大人になれる。


 大人になったら、しっかり甲斐性(かいしょう)ある大人になれるよう、頑張るつもりだ。



「そうか、ここはクロウティアが営んでいる温泉という場所か、成程のう、良い湯じゃわい」


「はい! 自慢の風呂です!」


「うむ、外の景色を眺めながら温かい湯に入るなんて面白い発想じゃ」


 東大陸にもあるらしいけど、中央大陸では唯一ここだけのはずだ。


 ここ、島だから中央大陸とも違うんだけどね……。



 風呂から上がり、女将さんが用意してくれた食事を取った。


「むむっ!? この生魚はなんと美味いんじゃ! 今まで食べた魚料理が全て遊びに見える程だわい!」


「お義父様、こちらの『レイシュ』もまた絶品ですよ」


「おー、どれどれ………ん!? なんだこのほのかに甘くてスッキリとした飲み心地の良い酒は! 今まで飲んでいたワインとは、また違う味でとても美味しいのだ!」


 実はこの『レイシュ』というお酒はセシリアさんの発案だった。


 米で作る酒で『ジュンマイシュ』という酒があるそうだ。


 その酒はとても飲み心地が良いらしく、東大陸の上級国民が好んで飲むとアヤノさんから聞いた。


 そんな『ジュンマイシュ』だが、実はアカバネ島で作った米で酒作りを始めたそうだ。


 そして誕生したのが――『アカバネジュンマイシュ』という酒だ。


 アヤノさん曰く、今まで飲んだどんな『ジュンマイシュ』よりも、ずっと美味しいそうだ。


 そんな『アカバネジュンマイシュ』を前回旅館で泊まったセシリアさんから「冷やすとまた違って美味しいわよ」と言われて発見したそうだ。


 今まで『ジュンマイシュ』を冷やす発想がなかったそうだ。


 それに冷やすにも『魔道具』が必要で、アカバネ島のように、僕の『魔道具』だけでなく通常の『魔道具』も豊かだからこそ出来る事だという。


 因みに、僕も飲ませて貰おうとしたら、お母さんとセシリアさんに物凄く怒られた。


 ――「大人になるまでは酒は飲んではいけません」らしい。



 そして、出されるどの料理も食べる度に、おじいちゃんの絶賛が止まらず、全て平らげていた。


 『レイシュ』がとても気に入ったようで、お父さんと二人で美味しく飲み合っていた。




 暫くして、旅館にセレナお姉ちゃんとディアナが訪ねて来た。


 最近、島で流行りの『ユカタ』という着物だ。


 これはリサが全力で作ろうと奮闘して出来たモノだった。


 元々、この島に旅館が出来てから、女性の間で着物が大きく流行っていたのだけど、


 それを見たリサが、浴衣の方がずっと過ごしやすくていいと、ナターシャお姉ちゃんと協力して作った。


 この世界の着物でも十分簡単に着れるらしいけど、着物よりずっと楽に過ごせると島中に流行り出した。


 どうやらそう遠くない未来にアカバネ商会の全従業員の制服が浴衣になるんじゃないかって噂まであるくらいだ。



「ん!? セレナディアか!」


「お祖父様、こんばんは~」


「おお~、元々可愛いと思っていたが、その服装も相まってまた可愛いのう」


 うん! セレナお姉ちゃん何でも似合うからね!


 綺麗な黒髪も相まって、浴衣に合うからとても美しかった。


「お祖父様、ありがとうございます」


 お姉ちゃんが上品に挨拶をした。


 ちゃんと貴族らしい振る舞いも出来て、自慢のお姉ちゃんだ!


 セレナお姉ちゃんが眩しすぎて、あまり目に入りづらいがディアナもとても綺麗だった。


 すらっとした体形に茶髪と明るい黒灰色の尻尾と耳が青い浴衣にとても似合っている。



 そんな二人のお酌で、おじいちゃんとお父さんはますます美味しい酒に飲まれるのであった。

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